第六フロアは未確定について 〜 幕間 〜
【雨宮宅】
残り18時間の余命。
それでも久根は絶望を感じてはいなかった。
揺らいでいた勝利の天秤が明確に傾いたからだ。
8名の第6フロア到達者のは、彼女だけでなく、この《エンペラーオンライン》に関わった者全てが断言できるほどに最上位の実力を有していた。
そして仲間の窮地に駆けつけ、神の如き速さで最後の障壁を破壊した 彼女の存在は疲弊しきっていたプレイヤー達に活力を与えたのも大きい。
「忍さん!?」
崩壊に巻き込まれたと思われていた彼女の参戦。
並列して別のパソコンで配信動画を見ていると、コメント欄も大盛り上がり。
久根がコメント欄の文字を見てみると。
[雪鬼姫キターーーッ] [シノブたん登場神杉]
[え、ぇぇぇぇぇ!!!]
[でも、なんでた?]
[【神速】で間に合った?]
[いや無理じゃね?]
[明らかに崩壊に巻き込まれてたろ]
[俺見てたんだけどさ]
[???] [???] [???] [???]
[ーーー【飛雷神】使ったんじゃね?]
[[[[[[それだぁぁぁぁ!!!]]]]]]
ネット民の考察は正しく、シノブは確実に崩壊に巻き込まれていた。だが【飛雷神】によって間に合った。この2つの事実が両立する答えをシノブは手にしていた。
「忍さんの持ってるのって」
握られているのは、久根でも見覚えのない刀。
久根もパソコンでコメントを打ってみる。
[あの刀なにかしら?] [誰か賢者求む]
「実は持ってた?知らんけど」
[何か【スキル】付随だよな?]
「禿同」 「シノブちゃんなら速度系?」
[禿同] 「これで勝つる!!」
(視聴者も分かってないってことは、どこかで手に入れた?少なくとも私達と離れてた時、個別でクエストを受けていたってことよね?)
〈なんでここにその刀が〉
「フードの人、動揺してる?」
〈だってその刀は崩壊世界に・・・なるほど。こんな回収方法が〉
(相手も予想外の事態。つまりあの刀は脅威になりうるんだ)
[いま生き残ってる《十傑》総動員?] [出欠取ります]
[《魔王》] [いる] [《影狼》] [不明]
[《賢者》] [いる] [《愚者》] [いる]
[《神姫》] [いた] [《魔弾》] [いる]
[《拳聖》] [アウト] [《聖女》] [アウト]
[《星霊》] [いる] [《剣聖》] [いる]
[《天魔》] [不明] [《堕天》] [いる]
[というかさ?] [うん]
[多くね?] [《十傑》じゃなくて《十ニ傑》やん]
[誰か見てね?] [誰?] [誰?] [誰?]
[誰?] [誰?] [誰?] [誰?]
「???」
画面には誰かを探すようなコメントで溢れかえっていく。
何のことか?と首を傾げようとしたその時、
[[[[[お前だよ、久根嵐子]]]]]
「ーーーーッ!?」
体を駆け巡る危険信号。
だな気づいた時にはもう襲い。パソコンに備え付けられているカメラが起動し、久根の顔を画面へと映し出す。
そしてその顔は瞬く間に世界に拡散されていく。
生き残っているにも関わらず、闘いに背を向けた臆病者としてのレッテル貼り。
彼女を擁護できるのは同じ境遇のプレイヤー同士のみ。だが、そのプレイヤーももはや『☠GAMEOVER☠』状態が大多数な上、顔も認知されていない者ばかり。
「やはりこうなっていたか」
「え?」
背後から聞こえた男性の声に振り返ると、そこには全く面識のない男性がいた。
顔は知らない。
そのはずなのに、久根の頭には1人の候補が浮かんでいた。
「もしかして、ゲン?」
「こちらでは初めましてだな」
ニコリと笑う初老の男性は画面に向き直ると、鋭い眼光で告げる。
「さて、お前らは闘いもしないのに説教できる立場か?これ以上何かあるならここからは2人で受けよう」
「どうしてここに?」
「ソラの【EXA:不在の免罪符】の能力で生かしてくれたんだ。アラクネが何かあったときに助けてくれって、2人に言われてな」
「2人?」
「レインとソラだ。仲間が殺された瞬間を見て何も思わない奴などいない。それにこういった事態を読んで此処に派遣している時点で相当大事にされている。あとはあいつらに任せるしかないさ」
別の配信サイトを開き直し、仲間の最後の闘いを見届ける。
【特殊武器:輝夜】を託し、実質的なゲーム不参加表明。
実力的には第2位に位置している彼であっても、ここから先は数字では測れない領域になる。
(《熾天使》との共闘、雫さんの【聖剣】変化、ソラの【特殊武器:輝夜】の使用、音刃さんや天童くん、カチュアさんの適応力、そして涼真くんの【神刀】所持に忍さんの参戦)
「それにシノブの持つ刀。これで3本しかない【神刀】が揃ったな」
「あれが最後の?」
「【神刀:天照】。本当は儂が欲しかったが取得条件が不明だったのでな」
燃え上がる炎の波紋。
黄金色に輝く刀身。
納刀されている状態で画面越しに伝わる威圧感。
「見てろ。ここからは誰が死んでもおかしくないぞ」




