ニンイートの砦
―――満月まで3日
諸外国との各種調書と決算書類など、教皇の代行としてリモネルは目を通した。
どれも素晴らしく纏まっていて枢機卿の有能ぶりに舌を巻く。
「枢機卿、もうしばらくご迷惑かけます、留守をお願いしますね」
「勿体無いお言葉です、御武運を祈ってお待ちしております」
忙しない日程で政務をこなし、教皇庁の職員らに見送られリモネル達は西への旅へ出立した。
もちろん転移魔法を使うのでニンイート国境砦まで一瞬である。
「あら、意外と無骨な砦ね」
まさに要塞と言える頑強な佇まいに一行は感嘆する。
厳つい砲台が黒く光って隣国へ向けて威嚇している。その数、12基。
ニンイートは貴族が支配する国で武力はそれほど有していない。
やや弱めの軍事力を補填強化する意味があるのだろうかとリモネルは推察した。
水際を護る辺境伯は切れ者なのだろう。
「凄い主砲だな、これなら迂闊に攻められん」
ナゼルフェンがちょっと不穏な顔を覗かせた、とても黒い笑みを浮かべる。
「殿下、悪い顔しないでください」
「人聞きの悪い、帝国の皇太子として倣いたいと思っただけだぞ」
大陸の覇者は迂闊な事を発しないで欲しいとリモネルは思う。
***
先触れは出していたので砦門兵はすぐに応対してくれた。
「先ずは辺境伯子息のヤコタス様とご面談をお願いします」
兵の案内で要塞奥の執務室へ向かった。
「遠い所ご足労でんな、まぁ寛いでんか。すぐに入国許可証を発行するさかい」
独特の口調にリモネルは少々驚いた。
ほうじ茶なるものを振る舞われた、紅茶のようで違う風味である。
同じ茶葉なのに不思議だとリモネルは思った。
「そんで、10人分発行でよろしいでっか?」
「10人?そんなにいませんよ」
リモネルは怪訝な顔でヤコタスを見た。
「ふっふ、表向きは6名。影の方は4名でっしゃろ?」
「ほう、侮れませんな。さすが西の鬼武神と言われる辺境伯の御子息だ」
リモネルはただ一人驚愕するばかりだ、ナゼルフェンはいつの間にか斥候を放っていたらしい。
「良い飼い犬をお持ちでんな、あっちゅう間に砦内へ入られましたわ」
「見逃していただいてたようで、感謝します」
「流石に帝国と一戦は勘弁して欲しいさかい。様子見させてもらいましてん」
ナゼルフェンがリモネルに目配せした。
リモネルは意を読み、グルトルテの事情を大まかに話した。
「うん、なるほど。気の毒に、うちのニンイート公が式に出席しましたやろ。魔人が出たっちゅうのだけ聞いてましたんや、まさか誘拐されたとは・・・」
ヤコタスはリモネルに同情の目を向けた。
リモネルは恐れ入りますと頭を垂れた。
似非関西弁ですみません。
たぶん間違ってる




