悪戯な笑み
リモネルはスニアンとの交信の経緯を話した。
「そうか、満月の日に」
ナゼルフェンと西端への移動について話し合いを始めた。
転移には大量の魔力を消費する、当夜使うわけにはいかない。
それに魔族に移動を感知される危険が高い、秘密裡に事を運ぶ算段を交わした。
「お前の気配はバレ易い」
ナゼルフェンは苦言した、聖女の魔力は感知され易いのだそうだ。
「人間にはわからんが精霊や魔族は嗅ぎつけるのだ」
「わたし臭いんですか?」
フンフンと鼻を鳴らし頭を傾ぐ、間抜けな仕草に王太子はガッカリする。
「そうじゃない!まったくキミは・・・・」
「・・・冗談ですよ」
リモネルの緊張の無さにデコピンをした、スニアンを攫われた時の狼狽ぶりはどうした?
デコを摩りつつリモネルが言う。
「うーん、なんか危機感がいまいち・・・。とりあえずスニアンは死なないと思うんです」
「あ”?」
「怒らないで聞いてくださいよ、彼らの狙いって私ですよね。王太子も言ってたじゃないですか、スニアンが庇ったと。現状では魔族側はスニアンを囮に私が出向くのを待ってると思いません?」
ナゼルフェンも冷静になり思案する。
「ならばスニアンがお前に助けに来いというのは得策じゃないな」
「ですよね、罠じゃないかと勘ぐってしまいます」ニヤっと笑う。
昨夜のスニアンの声は本人に思えた、しかし庇ってまで捕らわれた彼が助けてとは?
「魔族が私のことを感知しやすいのならば、昨夜のアレは成りすましだと思います」
「なるほど・・・お前、わざと乗ったのか?」
リモネルが悪戯な笑みを浮かべる。
「最初は信じちゃったんですよ、でもシンクロして脳内に映像が流れた時すごく気持ち悪くて」
声はソックリだった、しかしあの念波には憎悪が混ざっていたのだ。
「スニアンほどの魔力と錬金術があれば結界などさっさと壊すと思います」
「ではなぜ戻らない?」思わせぶりに問う。
「偵察してるんだと思います、私を護る対策のために」
ナゼルフェンも同意見のようだ。
闇雲に動くのもまずい。
ならば敵の罠に踊らされる振りをすれば魔王城の場所がわかる。
「俺もただ待つのも癪だからな、スニアンも嫁に心配かける愚行を反省すべきだ」
「でしょー?あの人って待つ身の苦労をわかってないの!」
砂漠に籠り求婚を撥ね退けていた過去を棚にあげて、リモネルは憤慨する。
「えへへ、西を旅するのはじめてです。途中のニンイート公国って、食い倒れの国と言われるほど美味しい名物がたくさんあるんでしょ?楽しみ」
「おまえ、それが目的じゃないのか?」
リモネルは聞こえないふりをした。
旅行へ行きたいです。
でも我慢、金もないし。チャリンチャリン




