手袋を投げつけられた、よろしいタイマンだ!
椅子に座れないほど尻が腫れあがり、従者の前で失態を見せた皇子。
それを知るや第二王妃トリネリンは怒り狂いバキリと扇を折った。
王妃はギャンギャンと従者達に当たり散らした。
それでも静まらず離宮へ怒鳴り込む無礼を働いた。
「まあ、さすが親子ですね、先触れも出さず乱入するとは、お転婆ですわ」
「お黙りなさい!囚人の分際で!よくもわたくしの可愛いムシモーレを!」
(わーお、囚人ときましたか)
んん、なにか引っ掛かりを覚えたリモネルは思案する。
(ガキんちょはともかく、王妃まで勘違いするなんて意図を感じるわ)
あの方も一向に顔を出さないのもおかしい事、リモネルは扇の裏で昏い笑みを浮かべた。
チラリと王妃の従者達へ視線を投げれば一斉に顔を背けた。
やってくれますねぇ?
退屈凌ぎにはちょうど良い茶番です、乗ってあげますか。
いろいろあってストレスも溜まっておりますから発散しましょう。
「聞いてますの!?無礼な鬼女め!」
業を煮やした王妃がやらかしてくれました。
グルトルテ皇后のわたしに手袋を投げつけたのですよ《決闘を申し込む意》を表す行為です。
侍女長らしきが僅かに口角をあげてます、隠すくらいしなさいね?
「うふふっ喜んで、あなたの申し出を受けますわ!」
扇をパチリと畳み、王妃を睨めつけます。
あらやだ、逃げないで?
この程度の威圧で震えてどうしますか、あなた王妃でしょう?
「ひぃい!」悲鳴をあげて腰を抜かし衛兵に縋ろうとしてます。
「ダメですよ他人を巻き込んでは、決闘は1対1でございましょう?」
まあ決闘どころか戦争を申し込まれた状況ですけど。
あの方の意図を汲んで戦争はしませんよ。
《オホホホホッ》
心の笑いと共にリモネルは自身と王妃にだけ転移魔法を発動させた。
場所は魔物森・・・と行きたいのですが魔人がいるかもしれませんので。
仕方なく城の裏庭へ移動しました。
周囲に結界を張り邪魔は排除します。
「さあ、獲物をお好きに選んで?」ガシャガシャと戦斧、レイピア、大剣、槍などを出してあげました。
「な、なんて野蛮なの!」
「野蛮?決闘を申し込んだのは貴女でしょう?」
「ふ、婦女同士の決闘は効き茶や舞踊などです!私は香道を・・」
「はい?貴方はバカかしら。グルトルテ皇国に戦争を仕掛けたのよ、お遊びで済むわけないでしょう?」
王妃はようやく事の事態を把握して、蒼白になって土下座をしてきた。
「申し訳ありません!てっきり身分を偽った罪人かと!」
「ああ、愚息の戯言を鵜呑みにして喧嘩売ったのね?」
土下座で済むわけないでしょう・・・。
息子は花瓶を投げつけ、貴女は手袋を投げつけたのよ。
「そう、わかりました。戦うのが嫌なら貴女の首一つで恩赦をかけますよ」
「は・・・?どうして?どうして死ななきゃいけないの?」
この方、どういう覚悟で王妃になったのかしら?
リモネルは頭を抱えた。




