隠遁生活は想像以上にツライ
帝国に着くなり離宮へ秘密裡に匿われた、保護される身としては少々の窮屈さは我慢しなければならない。
が、しかし――
リモネルは数日で飽きてきた、ボッチは好きだがじっと動かないのは好きじゃない。
「スニアンを探しに行きたい!畑仕事したーい!」
ウカイル親子はまだ到着しない、皇国から帝国へはかなり距離があった。
馬車移動では早くても1か月はかかる距離だ、いっそ迎えに行こうかと思ったが「何のための警護か!」と皇子に怒られた。
「ううう、せめてゴッツとサンディがいたら」
彼らはグロワール領を管理しなければならず、来られるわけもなかった。
通話だけでもと思ったが魔人達に知られてもまずいと自重している。
皇子によれば間諜から知らせはまだないらしい。
「そりゃそうよね、まだ3日目・・・」
魔人の目的がなんなのか早くしりたいが、やつらの根城が遠い場合は何日かかる事か。
「・・・スニアン、私を庇ったばかりに」
胸奥がじくじく痛い、なにもできない己が悔しくて腹立たしい。
抜け出そうかと何度も思ったが、皇子に迷惑がかかるだけだと踏みとどまる。
リモネルはグルグルと部屋を周ったり、唸ったりした。
なにかしてないと落ち着かない、悪い方向ばかりに考えて落ち込んでしまう。
(ああああああ!気が狂いそう!)
壁際に控えている2人の侍女が困り顔で微笑んでいる。
皇后としては少ない人数だが、秘密の客人扱いなので最低限の側使えしかいない。
事情知らぬ人は幽閉された罪人と思うかもしれない。
離宮のここは最上階と思われた、小さな窓から外を見る。
真下に見える中庭には池と井戸、それから畑らしいものがある。
時折、侍女らしい人影が現れるが凄く小さく見えた、この居室の高さに眩暈がする。
「どんだけ高いところなの!そりゃ侵入者がこられない配慮かもしれないけど!」
不審者が来たところでリモネルは転移できる、捕まる心配はほぼない。
「皇子ってちょっと過保護?」
冷めた紅茶を飲み干して、嘆息した。
本でも読もうかと備えつけの棚を物色していた時だ、「コンコン」と戸を叩く音がした。
侍女が先触れを持ってきた、カードには「第二皇子が訪問する」とだけ記されていた。
「第二皇子?どんな方なのかしら」
侍女が側室第二王妃の子息だと教えてくれた、それ以外の情報は貰えない。
「1階下のサロンへお越しになります、そちらでお茶のご用意を致します」
「ええ、わかったわ。ありがとう」
侍女のニナがヘアメイクをしてくれる、聖女だった頃をふと思い出す。
「ドレスはどれに致しましょう?」
皇子が用意したのだろうか、華やかな色合いに目を瞬く。
「この色はキツイ地味顔に合うかしら?」思わず言ってしまう。
挙式前もいろいろ着せられたがそれとは状況が違うので戸惑う。
「まあグルトルテ皇后様は控えめな方なのですね、どの色も似合いますわ」
侍女のニナが微笑んだ、花が咲いたような可愛い笑みの人。
お勧めだと言われ、オレンジの布地に白いレースをふんだんに縫い付けたドレスに袖を通す。
「やはりお似合いです!可憐なガーベラのようですよ!」
うひゃあ、むず痒い!とリモネルはオロオロした。




