魔人の罠
黒みがかった半透明の球体が数メートル頭上で浮いていた。
バチバチと静電気のようなものがそれの周りを覆っている、明らかに呪いだ。
スニアンはその球体の中で仰向けになり気を失っていた。
「スニアン!」駆け寄ろうとした私の腕を皇子が掴んだ。
「よせ!何のためにお前を庇ったと思ってる」
「え、庇うって?」
不快な嘲笑をあげてそれが言った。
「あーぁ、狙ったのはクソ聖女だったのに。まあ良いわ、教皇でも十分。それに私の超好み♪侍らして可愛がるのも一興よね」
ツインテールの下品な女が球体を引き寄せ「バシュン!」と音を立てたかと思うと小さな小瓶に変化させた。
小瓶には鎖が括られて首飾り状になる、それを女は嬉しそうに首に下げた。
「うふ、小さくても麗しいこと♪」
貧相な胸元にスニアンが揺れている、リモネルは憤慨し戦慄いた。
許せない!汚い手と体でスニアンを愚弄するな!
咄嗟に槍を創造して女を攻撃したがヒラリ交わされた、会場には客が大勢いて集中できない。
数百本くらい投擲してやりたかったが余計な被害が出てしまう。
「あらやだ怖い、まるで鬼女ねアハハハハ」
「遊ぶな、さっさと退くぞ。警戒されては手出しできん」
「チッつまんない、じゃあね。皆様、哀れな花嫁を慰める宴会をご堪能あれ」
貴族風親子は、真っ黒な装束の姿になると蝙蝠羽を広げ会場から飛び出した。
リモネルは成す術なくその場に崩れ落ちた。
「あれは魔人だ」と人々が騒ぐ、悲鳴をあげ幾人か倒れたようだ。
誰かに声を掛けられたが耳に入らない、促されるまま会場から連れ出された。
***
王宮のサロンに一時避難した皇子とリモネル達。
商人親子も衛兵に倣い、リモネルを護るように囲んでいる。
「参ったな」
茫然自失のリモネルをナゼルフェン皇子は少々持て余す。
「皇子殿下、間諜に追わせております。事態把握までリモネル皇后様を帝国にて警護しましょう。」
「ああ、そうだな。帝国で保護するのが一番安全だ。」
畏まりましたと黒豹執事は手配に動きだす。
「あの、わたし共も同行して良いでしょうか?もちろん足手まといになるようなら退きます」
ナゼルフェンは商人親子を見据えしばし思案した。
「見知ったものが近くにおればリモネルも安心するだろう、同行を認める」
カウイルは皇子の気遣いに、跪いて感謝の意を表した。
やや落ち着きを戻したリモネルが帝国まで転移すると言い出した。
皇子はためらったがそれが一番早く安全だと了承する。
「先に行ってますね、ごめんなさいウカイルさん」
「なにをおっしゃいます!御身のことを優先して行動なさいませ!」
リモネルは儚げに微笑むと陣を展開した。
一緒に転移する面子は皇子と執事、帝国の宰相と2人の側近たち。
限界ギリギリの人数を選んでリモネルは魔法を発動させた。




