わたし結婚するんですって
スニアンが言うには教皇の任に就いてすぐに挙式の準備は始めていたらしい。
婚約式もしてないのに飛ばし過ぎじゃない?
「あれから1年過ぎているんだ、飛ばしてなどいないよ」
「はあ・・・それでいつ挙げるの?」
「明日」
うぉい!!!
小1時間ほど説教をして「半年後」という譲歩で落ちついた。
私を護るための結婚、同時にグロワール住人を護るためでもある。
さすがに腹を括るしかないとリモネルは決意した。
しかし教皇との婚姻だ、目立ちたくない、目立ちたくないんだけど・・・
「お歴々を招待した披露宴と民衆たちを集めた大広場で御披露目をせねばならないよ」
や、やっぱり・・・
顔の筋肉を総動員して可憐ぶった表情を作って哀願した。
「身内だけじゃダメですか?」ウルウル
「教皇の正妃だから無理」キッパリ
ぐぬぅう!やっぱ素材に難ありの顔では効果がないようだ。
落胆するリモネルに「キミを自慢させて欲しいんだよ、ね?」
「どの辺に自慢の要素が?」
十分美しいよと彼は言うけど絶世の美男に言われても納得できないわよ!
手鏡を凝視し、欲目でみても女狐の己の顔に落胆するリモネルである。
「せめてタレ目なら・・・いや、狐から狸になるだけね」
鏡を前に百面相する婚約者を「可愛い人だ」と呟くスニアンは幸せを噛みしめている。
しかし「結婚しても砂漠に住みます」そう言うリモネルに落胆した。
そして転移魔道具(ど〇でも〇ア)を早急に作ることに励み、悪戦苦闘する日々を過ごしたのであった。
***
各国首脳を招待する挙式と披露宴は国力を誇示する絶好の機会である。
教皇の威光と伎倆を値踏みされるとも言えるのだが。
「こんなにドレス必要あります?」
「披露宴含めて3日間の舞踏会、お披露目用、会食の度に御召し換えします。」
妥当な数だと皇室お抱えテーラーとメイドが言う。
ズラリ並んだデザイン画にウンザリした。
「こちらの青と黒のグラデーションは教皇様のデザインです、刺繍は白金で月下美人を縫い上げます」
「砂漠に咲く強い意思、まさにリモネル様に相応しいですわ」
あ、そうですか・・・イブニングドレスですか、ハイハイ。
仮縫い何回するか想像しただけで眩暈が。
なんでしょうねぇ、褒め殺しする侍従たちとの距離感がわからない。
御世辞など聞きたくないし、信じてない。ぶっちゃけ「おだまり」と言ってしまいたい衝動がずっと続く。
「ツライ」
そう呟いたら全員平伏して謝罪合戦がはじまり余計に疲弊した。
人あしらいが下手な私は皇后など無理じゃないの?
皇后の居室には山と積まれた生地と装飾品で雪崩が起きそうだった。
一年かけてスニアンが用意した品々だ。
やたら大きいジュエリーボックスを開けたら繊細な銀細工の3点セットが出てきた。
「スニアンにそっくりだわ」
大粒アンバーの周りはダイヤが囲い花を模した彫金が見事で触るのが怖い、パタリと閉めて「見なかった」ことにした。
私如きにお金使いすぎ!その辺の草でいいわよ!
ペンペン草とかブタ草で!
青褪めるリモネルに「すべて私の資産で作ったから」とにっこり返された。
「そんなに狼狽えないで愛しいキミ、錬金のこと忘れた?」
「あ、そうでした」
急に脱力して崩れ落ちるリモネルをスニアンが優雅に抱きとめた、メイド達が黄色い悲鳴を上げる。
「オペラを観てるようだった」と噂雀が皇宮中にピーチク広めていく。
ああ、砂漠に帰りたい。
それから数カ月、各国の重鎮達の面相と経歴などを頭に叩き込む試練とダンスレッスンの日々を送った。
所作とマナーは城育ちのリモネルに問題はなかったがツライ事に違いはない。
こんな付け焼刃な正妃教育でだいじょうぶかしら?
「白粉の筋が出来て困ります、老け顔になりますよ」リモネルの眉間皺の癖をメイドが窘めた。
結婚ってなんでしょうなぁ




