ラム酒と酔いが醒める珍客
サトウキビ加工の副産物としてキビ蒸留酒が出来た。
廃蜜糖を利用したものなのでコスパもよろしい。
「なによりこの香り!癖になるわ」
果実酒にお菓子に用途は多岐になる、アルコール度上げれば消毒としても使える。
「アルゴさんの働きのお陰ね、特別報酬と昇格しなきゃ」
「そんな、俺はこの地に拾われた身です」恐れ多いと頭を振る。
「アルゴさん。正当な対価報酬は受け取って貰いたいわ
私は独裁者になりたいわけじゃないの、この地が豊かになればそれで構わないの。」
恐縮するアルゴだったが「工場長」を任命した。
何れは企業として独立して頂くつもり。
「私はノンビリ自給自足生活がしたいだけなの、カインがギルド長をしてくれると嬉しいんだけど」
「冗談!そんな堅苦しいの勘弁だ」
ぬぅ、カインが黒い笑みを浮かべてる。運営の丸投げを悟られたか・・・。
カインは収支報告を楽しそうに伝えてくる。
「本部からの初期支援金は完済したよ、来期から純利益はあがる」
「うん、施設の投資は必要かしら?」
「いいや、リモネルの錬金で修繕費はかからないだろ」
「わー錬金は低燃費でいいわ、クスクス」
その技術を他国から借り受けたらスゴイ額なんだけど、カインは呆れてしまう。
「リモネルは自身を過小評価し過ぎてるよ」
「便利屋とでも思ってて」
***
「みなさん、お疲れ様でした。給与をお渡しします。窓口へ並んでください」
老若男女の労働者がギルドへ集まった。
硬貨をじゃらじゃら鳴らし頬擦りしたり、貯蓄するんだと夢見る者が大はしゃぎしている。
活気があるって素晴らしいわ、でもちょっと頭痛がしちゃう。
人酔いしたモネルは、やっぱりボッチが好きなのだ。
そそくさとギルド長の執務室へ籠ったリモネル。
グッタリしたところへサンディがフルーツティで労う。
「ありがとう、・・・良く冷えててしみるーー!」
「むぷぷ」とサンディは返事すると部屋の隅で侍した。
「サンディ、寛いで。レース編みしたいでしょ?」
サンディは嬉しそうに裁縫箱を手にしてソファに座る。
小さく鼻歌を歌いながら編み始めた。
ゴーレム状態になると会話が難しいらしく「むぷ」しか発しない。
だが「可愛いから良し、可愛いは正義」とリモネルは思う。
お茶を飲み干し、コップ底の冷えた桃を食む。
爽やかさが体中を巡ってパァっと英気が満ちる「我ながら単純すぎ」と独り言ち。
落ち着いたところで住人達の要望書をガサガサと整理して目を通す。
「ふむ、私一人で対処できるのがほとんどね」
一枚一枚選別してファイルに閉じていく。
たまに変なのも混ざってて苦笑いした「恋人が欲しい」「妻の飯が不味い」ってギルドに頼むことか?
「これはまた・・・」
ひときわ目立つ分厚いそれに驚いた、要望というより命令書だ。
「ふむ、これは面談してみなければならないわね」
面倒になりそうだとリモネルは天井を仰ぎ見た。
通話魔道具を引き寄せ呼び出す「ザイン、調べて欲しいことがあるの」
***
それから数日後、問題の方々と面会が始まった。
ギルド会議室は香水と化粧の匂いでむせ返りそうだ。
同席した商人兄弟は鼻に皺を寄せている。
「お初にお目にかかります、私はモギューヨ伯爵の妻ラグレッテでございます」
後ろに侍るご婦人方もヤイヤイと自己紹介を始めた。
伯爵から準男爵の名が12名、あなた方は廃位された身分が通じると思ってるの?
リモネルは頭痛がしてきた。
「ギルド長リモネルです、早速ですが要望は却下します」
「要望?私が送ったのは要請です、直ちにギルド内に婦人会の部屋を用意なさいませ」
彼女達は、自称ラグレ服飾昇華婦人会という・・・らしい。長いわ。
「私、常々グロワールは女人の装いが質素すぎると心を痛めておりましたの」
「そうですわ、婦女子には着飾る喜びが必要ですのよ」
「砂漠に蟄居された方は疎いかもしれませんけど」
オーホホホホホと一斉に高らかに笑った。
耳鳴りがしたわ・・・。
議事録を書いていたカインが「うるせえ」と顔に出している。
「グロワールにも装身具店はありますよ、ドレスを仕立てればよろしいでしょう?」
「御冗談、粗末な生地の服など袖を通せません、私は品質改革からしたいのです。つまり衣料装飾部門を発足し衣装店を開き世界に流通させたいのです。この私達のハイセンスブランドを世に知らしめるのですわ!」
世界征服でもするかのような演説だった。(パチパチ)
「そういうのは私財でなさってください、部門発足は簡単に容認できません」
御婦人方は「んまぁんまぁ!」大騒ぎした、馬?厩舎に行ってよ。
「そもそも衣装店に不満があるのならグルトルテ皇国へ戻るか帝国へ行くことをお勧めします」
正論を吐いた私に、ラグレッテは侮辱に腹を立て震え睨んでくる。
「ザイン、この方たちは何故入領できたのかしら?」
明らかに私への敵意を持つ人達が審判の門を潜れたのが不思議だ。
「それだけど元貴族さん達はこれを使ったみたいだ」
黒焦げたような丸い玉をテーブルに置いた。
「これは破砕玉だ、鉱山で使うものだよ。どうしてこんな物が障壁周辺に転がってたんだろうな」
ザインの冷たい視線に婦人方はギクリとする。




