パインを吟味
帝国本部ギルド長執務室――
ナゼルフェンは相変わらず神経質な相貌で招待客たちを一瞥する。
双方の訴状と主張、そして鑑定書を厳しい眼差して見分する。
「ゲスイ国辺境伯殿、鑑定書に異議申し立てはあるかね?」
「ナルゲイスです!パ、パインは自国が発祥地であると自負しております」
我が国のブランド特産物であると喚き散らす。
「私の質問が理解出来なかったと見えるな?それとも貴殿は文字が読めぬのか」
途端にナルゲイス側は俯き反論できず怒りに震えた。
テーブルにはナルゲイス産パインとグロワール産パインが鎮座している。
「ノアル、これを切れ」
「畏まりました」
黒豹執事がナルゲイスのパインをザクザクと切り分けた、やや白っぽい実であまり果汁がない。
「次はそっちのデカいほうだ」
「はい」
グロワールのパインは5倍ほど大きい、ナイフを刺した途端に黄色く甘い香気が立ち上る。
「芳醇でございますなー」と鑑定師の面々が顔を綻ばせる。
食べたい、食べたいと顔が言っている。
「では、諸君。食べ比べたまえ、鑑定魔法だけでは納得しない愚図がおるのでな」
ナゼルフェンの号令で我さきと手を出した。
グロワールパインの迸る果汁に恍惚とする鑑定師達、食べた途端に瞠目したゲスイ人達。
「んん?対してナルゲイスのは随分と硬くて水分もないですな」
「これは、まったく違う植物ですよ」
鑑定師達が不味いと酷評をした。
グロワールの完全勝利!ウェーイ!
「それでは、ナルゲイスの訴えは棄却する、そもそも産地ブランド名を騙ったのならともかく。訴状自体が無効であるぞ」
ナルゲイス辺境伯の目が死んでいた。
「いやあ!良かったですなリモネル様!」
ウカイルは上機嫌でバシンバシンとリモネルの背を叩いた。
「はい、安心しましたわ」ホホホホと作り笑いで答えた。
「そうそう、皇太子様とウカイルさんにお土産があるんです」
瓶詰ジャムとドライパインのケーキを渡した。
真っ先に食いついたのはナゼルフェンだった、バリバリと封を開けケーキを貪る。
「で、殿下!?はしたないです」執事が慌てている。
「美味いな、商標登録してから帰れよ、どこぞのハイエナが食いつく前に」
皇太子ことギルド総長が冷笑をナルゲイス辺境伯へ向ける。
「ご配慮ありがとうございます、殿下」リモネルは勝ち誇った顔で礼を述べる。
ナルゲイス達はそそくさと逃げ帰った、二度と関わらないだろう。
「ギルド支部を作って正解でした、ウカイルさんのお陰です」
「いやあ、こちらも帝国の専売で笑いが止まりませんからワハハハ!」
カインが言っていた長所と短所を思い出したリモネルは「商魂」についてウカイルを質問責めにした。
ウカイルはしばらく大人しくしようと猛省したという。
「加工品は限度がありますね、搬送する日数を考慮すると目新しい物ができません」
乾物か味を濃くする以外は手段がない。
「ふむ、いくつか伝手を頼ってみます。時間をください」ウカイル氏が言う。
パイン論争が終息してから数日後。
《業務提携》の申請なるものがナルゲイスから届いた。
「厚顔無恥にもほどがあるわ」
無論、断りと抗議文を送ったのは言うまでもない。




