蜜に群がるのは虫だけじゃない2
リモネルはあれから思う所があり独自に加工品を試作した。
「やっぱ天日干しが一番ね、時間かかる分美味しいわ」
2種類の加工品を前に味見という名のつまみ食いをしている。
甘い香りがサロンに広がる、「う、砂糖漬けは甘すぎ」慌てて紅茶で口中をリセット。
「何してんの?」ザインがズカズカ入ってきた。
「ノックして頂戴」
へいへい、と軽口を叩き黄色いそれを口に放った。
「ん、うまい」
「えー?甘すぎないかしら」
ザインはかなりの甘党のようで糖衣したものをシャリシャリと食べた。
「香りも良いよ、売るのか?」
「さあ?需要があるか不明だもの、市場調査しなきゃなんとも」
干したパインと砂糖漬けを睨み眉間に皺を寄せた。
付加価値を付けるって難しいわ。
「塩漬けってどう思う?」
「うげ!やめろよ気持ち悪い」
加工するなら塩が安価なんだけどなー。
しばらくは自宅用で楽しめば良いかしら?
「なにを楽しむんだい?」
「きゃあ!!!」
急に背後から抱きしめられ悲鳴を上げるリモネル。
「ス、スニアン!?・・・ビックリさせないで!」
「ごめん、愛しキミ。やっと公務が落ち着いてね」
ザインが目の前でいちゃつくスニアンに「うわあ」と引いた。
婚姻前の男女がサロンで二人きりは良くないとスニアンが苦言する。
「ヤキモチかよ。加工品について話しただけだぜ?」
ザインは肩を竦め退散した。
「ふう、もうちょっと寛容になってスニアン、仕事仲間が減ってしまうわ」
「・・・無理」
教皇様は余裕がない、魔道具で通話と姿は見ていてもやはり寂しいという。
宮殿に来るたびに求婚しているのだが良い返事が貰えない。
***
サロンのテーブルの文箱が手紙で満杯になっている。
それを見たスニアンは心配顔でリモネルを見つめた。
「最近多いのよ、同業者からね」
ギルド発足してから徐々に増えた書簡たち。
門前払いされた輩が門番のゴーレムへ渡しているのだ。
「門を通れない時点で察すべきじゃないか?」スニアンが苦笑する。
「悪だくみしてる自覚がないのかもしれないわ」
一通の封書を手に取り広げる。
奪い取って内容を読んだスニアンの顔が険しくなる。
「なるほど、遠巻きに脅してるね、差出人は・・・ナルゲイス国の貴族か」
「ほとんど言い掛かりだから無視してるわ」
貯まる書簡のほとんどはナルゲイス国の辺境伯からだった。
ナルゲイスはグロワールから南東へ行った南国で農作物が似通っている。
帝国との取引が始まったパイナップルが気に入らないようだ。
全ての手紙を要約すると「うちの特産物をパクった、金を払え」である。
うちのパインとナルゲイスのパインでは種類が全く違うのだけど。
「ナルゲイスのパインは自国原種の小ぶりの実なの、私達のは西大陸の野生種を改良したものよ」
「なるほど、自国ブランドを横取りしたと難癖つけてるのか」
不幸なことにサトウキビも被っている、厄介なことだ。
「教皇様、パイン特許権を売ってくださいな」
「どういうことだい?」
「元メニアシトラの研究員が改良して販売してた種なの、特許料を払うなら貴方のグルトルテの方になるわ」
「待ってくれよ、種は代金を払って栽培したんだ問題ない」
いずれにせよ、鑑定してしまえば別種だと認められるのだから、ナルゲイスの訴えは通らない。
数週間後、ギルド間の競合争いに発展した為、帝国ギルド本部から召集がかかった。




