リモネルが愛した人
かつて私が良く知る冷たい視線をスニアンが向ける。
「リモ、君はマールのなんだ?どこを愛してると言える?」
詰め寄るスニアンに私は後ずさる、気が付けば壁際へ追いやられていた。
「わ、私は彼の友人で・・・」
「違う、君は創造者だ。マールはゴーレム、砂人形だ」
「嫌!そんな風に言わないで!ずっと私を護ってくれた大切な友人よ!」
では、どこが好きだ――と問われた。
「彼は優しいわ、私だけの為に遠い海まで駆けて行って魚を獲ってきたわ」
「それで?」
どう説明して良いかわからず悔しさで涙が滲む。
「バナナに穴を開けた鳥でさえ、彼は優しく保護したわ。鳥の巣をつくったり・・・いつも肩に鳥を乗せて巡回してくれて・・・」
とうとう泣き崩れ嗚咽を漏らしてしまう。
「マール・・・マール、そうよ私は彼の心が好きよ。人間じゃないとかどうでもいいの。追い出されてから砂漠で辛い日も寂しい日も傍で護ってくれたの。」
スニアンは一緒に崩れ落ち、なぜだかとても嬉しそうで悲しそうで、複雑な笑みを浮かべていた。
「うん、彼の心を愛してくれてありがとう」
「・・・うぅマールと話がしたい・・・以前みたいに」
何故スニアンが礼を言うのかわからない、どうしたいのだろう。
「マールおいで」スニアンが呼ぶ。
すると食堂の扉を開けて「ぷも」っと言って私の前に来た。
「マール!お話できるの!?戻ってきたのねマール!」
リモネルは勢いをつけてマールの胸に飛び込んだ。
「大好き!大好きよ!マールずっと一緒にいて」
マールは「むぷ」と言って抱き返した。
畑を周ってきたせいか、土とお日様の匂いがマールから感じる。
しばし抱擁して惚けてしまう。
数分後「ハッ」と我に返り、取り乱した己の行動の恥ずかしさに冷静になる。
「騒いでごめんなさい」慌ててスニアンを振り向き謝罪した。
「え?スニアンどうかした」
背後にいたスニアンは顔を真っ赤にして立ち尽くしていた。
「・・・勘弁してくれ。私の御主人様で友人のリモ、愛しい人」
***
「スニアン?」
「わ、私がマールなんだ・・・、マールの自我は、中身は私なんだ」
耳まで赤く染めてスニアンがそっぽを向いた。
―――ええっ!
「どういう・・・こと?」
「一から説明するよ、キミが王宮から追い出された事は、すぐ知らせが届いた」
スニアンはその後、大慌てで私を探した事。
町中駆けまわり、見つからず絶望した事。
足取りを掴んで一人で砂漠へ向かい、リモネルの無謀な生き方を阻止しようとした事。
「私はずっと見てたんだ、君が寂しがってゴーレムを3体作って友人にした所も」
「はぇ?」
「でも、連れ帰っても君は拒絶するとわかってしまった。だから・・・」
マールに魔力干渉して心を繋ぎ操作した、共に生活していたとスニアンが白状した。
「すまなかった、どんな状態でも良いからキミの傍にいたかったんだよ」
スニアンがマールと良く似た仕草で私を手招きした。
「愛してるよ、マールとしてスニアンとして」
そっと近づくとスニアンは抱きしめてきた「お願いだ受け入れてくださいリモ」と懇願する。
―――
そうか、元聖女と大司教として再開した日のあの違和感。
妙に親しみがあったのは無意識にマールと重ねていたのね。
「・・・マールのバカ、急に離れるから悲しかったわ」
「うん、ごめん。」
マールが抜け殻になった日は、大司教として砂漠へ向かった日だったのだ。
移動中の加護に集中したため、マールとの交信が出来なくなったのだそうだ。
その後、マールと再び繋がろうとしたが失敗したという。
「マールと呼ぶべき?」
「リモの好きにしていいいよ」
私の愛しい人と言って、マールことスニアンはリモネルの額に口づけた。




