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穀潰しと言われた聖女は自給自足する   作者: ハバネロあんこ
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猛る火山と聖女の宣言

「スニアン大司教はずるいです」道中の馬車の中で苦言を呈した。


「おや?どうしてです」

「私がメニア民を救うよう誘導したでしょう?」


なんの事でしょう、と恍けている。

説得しないふりをして説法した癖に・・・。


リモネルはプクッと頬を膨らませ窓の外を眺めた。

いつ噴火するかわからない切迫した状況だが、流石に転移魔法は難しい。

全員を移動となると負荷がかかり過ぎる。


「私一人が先に向かったほうが良くないですか?」

「ん?・・・転移した先で王族が無体を働いたらどうします」

そんな事になったら私は世界を恨む魔王になってしまうと大司教が言った。


かりにも聖職者がなんて事を!!


「――返り討ちできますが?」

「私を置いてかないでください」またワンコのような顔で見つめる。終いには両手を掴み懇願する有様。


(なんなのこの人、扱いに困るわ)


はぁ、マール達に会いたい。






国境門に辿り着くや、避難民の屯する様に驚いた。

魔物森へ出るに出られない人々で犇めき合っている。


「聖女様だ!聖女様の御帰還だ!」目ざとい誰かが叫ぶとワァワァと民たちが騒ぎ始めた。

師団員たちが馬車に迫る民衆の排除に奔走する。


「過剰な期待はやめてくれないかしら?一応、噴火は阻止するけど」

慈悲を!お恵みを!と口々にする人々、ついでに何を望むのか浅ましい事だ。


「残念――私は優しくないわ」

「貴女なら大丈夫です、私も力添えいたしますから」

手を握ったままの大司教が恍惚な表情を向けてくる、リモネルは顔を引きつらせた。



マジでやめて・・・。


火山は東砦から北西に聳えている、一同はそのまま向かった。

途中で騎士団が合流しようと向かって来たが「足手纏い、邪魔」と威圧してご遠慮いただいた。


万が一噴火したら退避時に保護する羽目になるからだ。

「火の山に剣が通ずると思ってるのかしら?」

本音を言えば魔術師団も逃げて欲しいところ、加護魔法使えないんだから。


「ふむ、師団には帰って貰いましょう。彼らの加護まで見きれない」

心を読んだかのように大司教が言う。


師団は渋りつつ城へ戻って行く「熱風で焼け死ぬ覚悟がおあり?」と言ったら青褪めてた。

私と大司教は馬車を降り、火山近くへ転移した。


ゴオンゴオンと大地の恫喝に怯みそうになり、身震いをした。

「負けないわ」

麓はすでに焼けた鉄板のように熱くなり、木々は枯れ果てている。

火山灰を被った野生動物の屍が累々とあり顔を顰める。


毒ガスが溜まってるかもしれない。

リモネルは浄化魔法を周辺にかけた、急がなければ・・・。



大司教が加護魔法を最大にして私を抱きしめた。

「抱きしめる必要ないかと」

「いいえ、不測の事態があっては怖いので」にっこり断るスニアン。



やむなく抱き合い絨毯に乗り火口を目指す、熱風が掠めチリチリと頬が焼けそうだ。

スニアンは風雪魔法と加護を織り交ぜた、なんて器用な事。



「私は全属性持ちなんですよ、便利でしょ?お買い得ですよ」

「買うってなんですか?意味が解らないわ」


魔法自体を加工する無茶ぶりに、ひょっとしてと「錬金使いましたよね?」と詰問した。

スニアンは答えず、ただ微笑むだけだった。


時折焼けた岩が打ち付けそうになったり、火砕に襲われそうになった。

スニアンは羽虫でも払うようにそれを掃滅していく。


(私一人では死んでたかも)

思わず大司教の服をギュウと掴む、スニアンは嬉しそうに頭を撫でた。


「非常時になんですか、ニヤニヤしないで!」

「頼って貰えて嬉しいんです、ふふふっ」


軽口を叩くその刹那も死の火山灰は降る、おそらく想像よりずっと高温だ。

スニアンは飄々とそれらを除けて「もう少しです」とほほ笑む。



それから10分ほど噴出物の恐怖と戦い、漸く火口の真上に辿り着いた。




「さあ、爆発する前に済ませましょうか」私は予め用意した盟約書を広げ宣言した。

《盟約署名人リモネルは、ここに契約の解除を宣言する》


宣言と共に盟約書が音もなく霧散した。


破滅の呪詛は解呪された、徐々に大地の怒りは収まるだろう。

緊張と恐怖で疲労困憊したリモネルは、ぐたりと大司教に凭れ意識を手放した。



「さあ、帰ろうリモネル・・・らの・・・へ」




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