聖女暗殺1
不覚にも皇太子の前で卒倒してしまった。
商人家族には心配かけて自己嫌悪に陥った、しっかりしなければ・・・でも。
皇太子のご配慮で貴賓用の部屋に逗留させていただいた。
だが不眠になり、夜が酷く怖かった。
――――
『脳無は余計なことをするな』
『満月の儀くらい一人でやれ、役立たず』
ごめんなさい、ちゃんとやります
―ー先生見て、祈ったら綺麗な石ができたの
『そんなもの作るな!魔力もロクにないくせに!』
―ごめんなさい
『姉さん邪魔よ、茶会は私がいれば良いのよ!』
―ーオランジェルどうして私のドレスを破るの・・・
『出ていけ、穀潰し!』
――ごめんなさい、ごめんなさい
――
―
バサリッ!!!
「ひぃっ!?」飛び起きた私にメイドが悲鳴を上げた。
「ハァハァ・・・嫌だ、また同じ夢だわ・・・ああごめんなさい夢見が悪くて」
気味悪い物見るようにメイドが下がった。
***
「寝るのが怖いんです・・・」
医官に診察を受け安定剤を処方された、それでも悪夢は見てしまう。
どうにもならない。
「少しはお召しください」と事務的にメイドが言う。
冷めたスープはいつのかしら?
頬がコケて目つきも悪化し、隈がよけいに相貌を酷くしているのかも。
メイドはいつも「関わりたくない」という素気なさ。
「ふ、あの城にいた時と同じね」
砂漠へ帰りたい・・・ゴッツ、マール、サンディ・・・会いたいわ。
戸を叩く音がした。
いけませんとメイドがキーキー騒いでいる、誰が来たの?
「お加減はどうだい?」
「皇太子様・・・」
そのままで、と手で制しされた。
「やつれたね、看護は行き届いていないようだ」
冷めたスープと濁った水差しを一瞥し、メイドを睨んだ。
気まず気に俯くメイドを尻目に「すまなかった」と皇太子が頭下げた。
「帰りたいです、砂漠に帰らせて」
「・・・ここは嫌いかい?メイドの悪さは申し訳ない改善しよう」
「どうして帰らせてくれないの?」
「キミを悩ませてる砂漠へ?そんな事したら死んでしまうよ」
「いいえ、いいえ。あそこは私に大切な家なの!友人が待ってるの!」
ゴーレムは砂人形だ、目を覚まして。そう言い残し皇太子は出て行った。
「・・・みんなのところへ帰して・・・・」
寝具に伏せ、声を殺して泣いた、嗚咽を堪える度に頭痛がした、吐き気がする。
お願い・・・帰りたいだけなの。
魔封じの指輪が怪しく赤く光った。
***
皇太子は薄暗い医務局へ出向いた。
「これは皇太子様、このようなむさくるしい所へ」
「挨拶は良い、リモネル嬢はほんとうに心神喪失状態なのか?僅かに興奮気味ではあるが」
「診断はたしかでございます、処方箋も完璧でございます」
「しかし、魔封じはやり過ぎだろう?」
”体力が消耗した状態で魔法を使うのは危険と判断しました。„
医者はそう言って取り合わない。
「・・・なにか変化があったら呼べ」
「はい、必ず」
泣き疲れ漸く眠ったリモネル。
腫れあがった瞼が痛々しい、サンディが見たら大慌てで手当てしただろう。
時計の針が1時を周った頃。
不審者がリモネルの寝室へ入り込んだ。
手には小剣が光っている――
寝台に忍び寄り、グワッと振りかざす。
ザクリ!
肉を貫いた手応えに不審者は弧を描いた、止めとばかりにザクザクと何度も刺した。
やり遂げ満足したのか「ひひひっ」と低く嗤う。
そしてシーツを捲った――
「なんだコイツ!?」
白磁の人型が寝そべっていた、刺し穴らしいものはゆっくり修復していく。
「ちょっと、私の友人に怪我させてただじゃおかないわよ」
リモネルはパァ!っと光魔法で室内を真昼のように照らす。
「なんで!魔封じしたはずよ!?」小剣を持ったメイドが憤る。
「こんなガラクタ効くわけないでしょ」
私は指輪をメイドに投げつけた「きぃい!この魔女!」ブンブンとなりふり構わず小剣を振り回す。
「はぁー、シツコイ人って嫌いよ」
メイドの手を睨み巨大な氷で固めた、重さでメイドは転がってジタバタした。
「チクショー!殺すー!!」と煩いので手足と口も氷で塞いだ。
「リモネル嬢、窒息したら尋問できないぞ」
ノンビリ口調の皇太子が現れた。
「あら、私を利用しといてそれはないでしょ?」
「狙われたリモネル嬢に協力をしただけだ、間者は全員捕縛できたよ、お疲れ様」
私はヤツレメイクを拭きとり「オナカ空いたわ」と言った。
病人のフリも楽じゃない。




