ギルマスは語る2(聖女の罪)
「急に優しい顔をするので驚きました、それと敬語も」
クスクス笑う私にバツが悪そうなギルマスだ。
「威嚇して申しわけない、私を訪ねる輩は謀に長けた者が多いのですよ」
初対面から値踏みされていたわけなのね。
「敬語は止してください、疲れます。それに貴方は皇帝陛下に近しい身分なのでは?」
ギルマスが瞠目した。
「さきほど(帝国の間諜)とおっしゃいました、まるで自分の直属のように。ギルドマスターも諜報員はいるでしょうけど(ギルドの間諜)もしくは(帝国が放った間諜)というべきでしょう?」
「ハハッなるほど食えない方だ、よろしい他にも聞きたいことがある、皇族としてね」
ギルマスは商人家族を隣室で待機するよう人払いをした。
ウカイル氏は居座ろうとしたが追い出された、好奇心旺盛で困った人だ。
ギルマスの名は「ナゼルフェン・バシレ・ガルゼア」皇太子だ。
「楽にしてくれ」とは言われたが啖呵を切った相手がまさかの次期皇帝である怖すぎる!
豪奢な紅茶セットを前に手をつけられず固まった。
「不敬の数々を」
「いいさ、現皇帝は頑丈でね、当分椅子は回ってきそうもない。ギルマスの身分は公務執行が速やかに済む事が多く兼務している」
存外この職務は重宝しているんだよと皇太子は言う。
「なにより不正を自ら内務監査できるからね」とニヤリと嗤う。怖い。
「それで聞きたい事とは?」
「喉を潤したまえ、ガラガラじゃないか」
聞きながら飲めと言われたので啜る「美味しい!」と叫びそうになった。
不思議とリラックスができた、テアニン効果だろうか。
「これに見覚えはあるかい?」
ガラガラとガラス瓶を揺らし見せてくる。
「キャンディですか?」
「違うルビーとサファイアだ、とぼけるのか?」
世界中探してもこれほど見事に研磨する技巧術は現在ないと指摘された。
「・・・私が創造したものです、たぶん?」
「そなたは錬金ができるのだな、金は、金は作ってないだろうな!?」
眼光厳しく見据えられた。
「はい、金は作ってません。石コロが得意なので。あ、銅は出しちゃいました。外灯の素材に必要なので」
宝石を石コロと言う私に皇太子は呆れている「無害だな君は」と呟き項垂れた。
「金はなくて良かった、貨幣価値が変動してしまうからな」
「そんな大事ですか?」
当たり前だ!と叱責された。
「宝石は資産価値が不安定だ、需要がなければただの石になりえる。だが金は違う!物流の要、資金だ。急激な通貨膨張は深刻だ!」
下手すれば世界恐慌になりかねないと恐ろしいことを言った。
「そ、そんな」
「急に大金が入って物資を買い占め、高値で転売したら?」
「本当に欲しい人が困ります!」
「もし金の価値が野菜より安くなったらどうする?」
「えーと、物価が上がったわけじゃいし?でも、もし不作が続いたら買う側は・・・あ」
迂闊に金など作らなくて良かったと皇太子は溜息を吐いた。
「君を処罰せず済んで良かったぞ、聖女殺しなんて大罪は勘弁だ。今後宝石も作るんじゃないぞ」
「すみません、肝に銘じます。ところでそれはどこで?」恐縮しつつ問う。
「これは我が帝国騎士団が魔物森で発見した、遺体とともに」
「・・・っ」
驚いて目を瞠った、声が出ない―――ああ、どうしよう―――
私が宝石を渡したばかりに・・・
護衛なしで彼らが森を出られるわけがなかったのに―――
私が――――私のせいで―ー死なせてしまった―――
―――私が殺してしまった―――




