贅沢を知った猫
集会所でギルド申請用の書類を作成と見直し、まとめに追われている時である。
無遠慮に開かれたドアにぎょっとする。
「なんだい君たち、ノックくらいしたまえ」カインが注意して立ち塞がった。
「そこをどきなさいよ!偽聖女に話があるのよ!」
金切声を上げた婦人と男達が無理矢理乱入してきた。
「私は聖女ではないと何度も言ってます」嘆息しつつ答えた。
「うるさい!騙されないわよ偽善者が!」
「そうだ、俺達はいつまで無報酬で働かなければならない!」
「給金を払え!いますぐに!」
何を言いだすかと思えば・・・・。
「ここは私の庭で家です、自給自足で命を繋ぎ生活する場所。たしかに私はあなた方を保護しましたが何が不満です?」
「ギルドを作ってサトウキビを売るそうじゃないの!」
「まだ準備の段階です、許可すらとれてません。販売すら出来ていない、つまり収入がありません」
「だ、だからって賃金くらい」
尻窄み勢いがなくなった所で問う。
「私はあなた方に強制労働をさせたと?雇った覚えもありません。畑は私が開拓しました。手入れや見回りと修繕は私の友人達ゴーレムがやっています」
「俺たちは収穫を手伝った!報酬を出せ!」
「あら、ボランティアではなくて?」
「違う!俺達は」
ならば、日々の食糧や家は誰が提供し誰が与えたのですか?と聞いた。
家賃すら要求せず、食費も衣服も誰が与え続けたのかしら?と。
全員押し黙った。
彼らはここへ来て以来1年近く善意で生かされたことを「騙された」と言い放った。
リモネルが保護した行為は「強制収容」と取られていた。
「偽善、そうですね。あの日、魔物森で助けたのは間違いでした。申し訳ありませんでした」
私は虚ろな目で彼らを見た。
そして。
私は掌からバラバラと宝石を生み零した。それはこんもり山となり怪しく煌めいた。
「こちらを報酬としましょう、お受け取り下さい。そして、出て行ってください。護衛はつけません御達者で」
彼らは服に宝石を詰め込み逃げるように出て行った。
「なんて連中だ、恩知らずにもほどがあるぞ!」
ザインが憤ってテーブルを叩いた。
「人って都合よく忘れる生き物だよね、生活が潤い過ぎると欲がでるのさ」
カインがふふふっと意味ありげに笑った。
贅沢を知った猫は安い餌を食べなくなるのさ。とカインは呟く。
「やっぱり私は聖女になれないわ」とクスリと笑う。
***
平等にするために私は去りたい希望者へ宝石の支給を申し出た。
やはり何割かの住人が名乗り出る、独身で若い人たちが多かった、家族も何組かいた。
私を軽蔑する者、懺悔する者、無関心の者・・・色々いた。
少し悲しくて、安堵もしていた。
心のどこかで彼らを負担に思ってたから。
ジャジさんが「だいじょうぶですか?」と労わってくれた。
「はい、平気です」とほほ笑んだ。
どうか私のことなど忘れて。
リモネルは審判の門を固く閉じた。
良くも悪くも人間は欲が原動力
(´·ω·`)




