旅の支度 中日
私の宣言から不安な声は少なからず出ていたようで、集会所に通う私に訝しい視線が注がれた。
「まあ仕方ないわね、嫌われる覚悟で言ったもの」
色んな意見があったようだが、ジャジさんが執成したり宥めたりをしてくれたようで徐々に平穏を取り戻した。
「ジャジさんスゴイわ、宣教師みたいよ」
「ほっほ、年の功です、年を取ると奸智に長けるのですよ」
ジャジさんがしきりに腰を摩る、畑仕事の帰りのようだ。
私は腰に手を当てて治癒をかける。
「おお!?長年の痛みが消えましたよ!」
椅子からガタリと立ち上がり「エイヤ!」と屈伸して見せた、前屈は掌が床に着いた。
それを見ていた商人親子が瞠目してかたまった。
「やーね大袈裟な・・・」
「ほんとですよ!刺すような痛みが消えたんです!」
ジャジさんはもともと果樹園と葡萄酒作りが生業だそうで背中に大きな負担があったのだと言う。
「やっぱり聖女になりませんか?」ウカイルさんが詰め寄る。
「なりません」
集落の人が望むなら誰でも治療しますよ?無償でね!
ジャジさんの一件で集会所の隣に診療所を造る羽目になったのは言うまでもない。
大勢の患者が列を成した、診療所が落ち着いたのは1週間後だった。
ある日、午後の診察が終わり紅茶を飲んでいると―ー
小さなお客様がチラチラと戸口で見ていた。
「なあに?どこか痛いのかな?」
「・・・あのね、リモさま、おばあちゃんを治してくれてありがと」
握りしめすぎてクタリとした野花を差し出してきた。
「まーありがと、優しいのね」
返礼ですと言って紙に包んだクッキーを渡した。
「リモさま!ありがと!・・・でもお花しおれちゃった」ションボリ俯いた少女。
「大丈夫よ、ほらっ」
コップに花を活けてそっと撫でた、項垂れた花がピンと立つ。
「わぁあ!お花が生き返った!すごい!なんか光ってるーー!」
リモさまはやっぱり聖女だーーー!といって少女がキャアキャアはしゃいで走って行った。
「やば・・・やらかした」
喜ばせただけだったのに・・・花の周りがキラキラ光ったままとれない。
だって砂漠に花って貴重なんだもの・・・嬉しかったからつい。
「ああああーー私のバーカバカバカバカ」
迎えに来たサンディが「むぷう?」と首を傾げている。
その後光った花は1か月ほど生きた。




