旅仕度
商人家族と私は特産となりえる作物の選定を急いだ。
主なものはサトウキビとパイナップル、バナナなど。
ジャジさんは移民の人たちが手に職を持つものを募ってくれた。
彼らと交流をとっていなかった私は、なにも把握してない。
まだ栽培していない綿花や麻が欲しいと職人たちから要望が出た。
あとは竹、木材、鉱物など
ゴッツとマールが育てたサトウキビ畑は見事なものだ。
時々住人たちも手伝うようだ。
砂糖は貴重なので、世界に通じる農産物だとウカイルさんは言う。
「このパイナップルとバナナも主力品になりますぞ!」とウカイルさんは太鼓判を押した。
どこか胡散臭いとリモネルは苦笑いする。
そもそも領主でも王でもない意識なので、難民を保護するボランティア女?程度でいた。
わたしは恥ずかしくなった。
「みなさん、頑張ってくれてありがとう。」深く頭を下げた。
「おやめください聖女様、あなたがいなければ今頃は獣の腹の中でした」
「そうです、見返りも税も取らず我らを無償で住まわせてくれたのはアナタだ。」
「は、流通すんなら礼金くらいでんだろ?」「そうさ、生活がかかってんだから」
一部不服そうな言動もあったが。
「聖女様は本来王族より身分が上なんです、あの国はおかし過ぎたのです、世界水準でいえば一国の王であると名乗って差支えないんですよ?」
ウカイルさんはそう憤慨して言ってくれるけど、オランジェルが女王になったら滅ぶと思うわ。
すでに崩壊してるようだけど。
みなさんは賛同してくれたけど女王になるつもりは全くない。
ここは私の庭で家なの、責任とれないわ。
「みなさん聞いて、迎え入れたあの日も言ったけれど改めて宣言します。私はこの地を潤し開拓をしたわ、でも国にするつもりは毛頭ありません。あなた方は隣人として迎えました。なので保障もなにも出来ません。故に税も取りません。それを覚悟の上で住んでください。ですが、私に出来る事ならば協力を惜しみません、必要なものは無償で提供します。」
不満に思うのなら、この地を去ろうと引き止めないと最後に言った。
ごめんなさい、私は聖女になりたくないの。
身勝手だけど、もしも「この地の王になる」と誰か君臨しようと言うのなら私はここを見捨てる。
私が去った後のこの地はきっと悪魔の鍋に戻るだろう。
私の宣言に戸惑ったようだが、どうしようと彼らの自由だと思う。
***
集会所に入りギルド発足の会議に集まった。
責められる覚悟でいた私に。
「申しわけない!私はあなたを・・・利用しようとしていた!」ウカイルさんが土下座した。
「・・・そう、案外野心家だったのね」
ちょっとびっくりしたけど、さすが元やり手商人だ、侮っていたわ。
「ウカイルさん、あなたは帝国のようなしっかりした国へ行くべきだわ」
「すみません、しかしギルド発足には協力いたします、それが償いです」
許しを請う父親の姿に兄弟2人は何を思っただろう。
「わたしはずっとここに居座りますぞ、ほっほっほ」とジャジさんが好々爺の顔で笑った。
それを聞いた兄弟は覚悟を決めた顔をした。
そらからいくつか提案を出し合い、今後の事を練って行った。
「支部発足の申請が通れば審査と視察が来ると思います、条件が合わなければ認可はされませんので。街道と施設整備は完璧にいたしましょう。」
ウカイルさんの言葉に私は「任せて」と短く返事して会議を締めた。
***
「父さん、聖女さんを甘く見てたね」カイルの目に僅かに侮蔑が見えた。
「・・・情けないな、すまん」
意思強く宣言した彼女は凛として迷いがなかった、覚悟がなかった俺たち移民は呆けるしかなかった。
「まあ仕方ないさ、俺達移民はみんな最初から彼女一人に甘えてたんだ。《聖女様はなんでも叶えてくれる、見捨てるわけがない、だって聖女なんだから》ってさ。」
「なし崩しに建国させてしまえって目論見は誰にでもあったろうな」
ザインが苦い顔で呟く、聖女に侍る聖騎士にあわよくばと浅ましくどこかで思っていたかもしれない。
「父さん、この集落を独立国家になんて野望は持たないでよ?全力で潰すからね」
カイルが黒い笑顔で脅した。
父親は縮こまって猛省した。




