傾国の豚
メニアシトラ王国は疲弊していた。
農業国にあるまじき大失敗を起こしていたのだ。
「この収穫量に関わらずどういうことだ!収益が例年の半分以下ではないか!」
王の怒号が王宮会議室を静まらせた。
農林通産大臣が項垂れていた、その傍らで財務大臣等が青い顔で震えている。
「・・・収穫に関しましては報告書の通り、しかしながら肝心の農産物の質が著しく・・」
収穫は上々の数字であった、しかし見目好く育った農産物のほとんどが壮絶な不味さだった。
当然、国外流通量は激減「彼の国の食べ物は猫跨ぎ」というレッテルが貼られた。
長年に渡り良好に取引してきた国々からクレームが殺到した。
「貴国は豚餌を売りつけるのか」・・・と。
突き返された輸出物の輸送費と逸失利益の損害補償金が莫大になっていた。
唯一潤沢であったはずの農産業の収支が国を傾けたのである。
目の前には美味しそうな果実と新鮮な野菜が山と積まれながらも、「触るな危険」というオーラを発している。
食べたら失神するほど不味いそれ。
あるのに食べられない。
そんな拷問のような事態に民の不満は爆発していた。
空腹に耐えかね、食べた子供たちが続々気絶するという惨事が各地で起こった。
唯一美味しく食べられたのは前年備蓄していた麦だけ、今では麦一粒が金粒ほどに貴重なものになった。
蛋白源は川魚、イナゴ、蛙など・・・。
不味い穀物を家畜は食べようとせず、次々屠殺処分または餓死していった。
***
「魔物森で狩りをするか、他国へ移民するか」とある村の長が村民を集め会議していた。
「森には食い物はあるかもしれん、だが護衛もなしに無謀だぜ」
「国外移民だって同じことだ!護衛無しで移動できるもんか!」
口々に出るのは愚痴だけで、会議とはほど遠いものだった。
「なんでまた不味い作物しかとれんのだ?」
「それだよ、豊穣の力を国神様から賜る聖女は何してんだ?」
国民が税を納めるのは聖女の恩恵にあやかり生きるため、それが反故にされたのだ。
非難と不満はとうぜん王族と聖女に向けられた。
国王に直訴できない民達は教会へ救いを求めた「我らをお救い下さい」と。
教会周辺には飢えた民たちで溢れた、そんな中とある噂が飛び交った。
「本物の聖女が王宮から追放された、王族は無能だ」
下働きになったばかりの口緩い見習い僧侶が、「ついうっかり」漏らしたものだった。
教会側は満月の儀に祈りを捧げるリモネルを聖女認定していたが、
不参加のオランジェルは資格なしと烙印を押していた。
外聞が悪い事実を王がもみ消していたのだ。
見目の良い聖女
見目の悪い聖女
王が選んだのは見目のよい無能の聖女。
この醜聞はあっと言う間に国中に広まっていき、月一度の拝顔の儀に出てくる肥えた女は誰だ?と糾弾が始まる。
「あの女が食料を独り占めしている、だから太っているのだ」と噂する口さがない輩も出てきた。
《真の聖女を追放した無能な王族と穀潰しの偽聖女》と日和見な吟遊詩人が各地で歌いまわる。
民たちは奮い立ち上がった「国に見切りをつけて聖女様を探そう」と。
***
王子の執務室にて
「誰が穀潰しよ!私じゃなくてリモネルじゃないの、間違えは正して欲しいわ!」
ブキーブキーと擬音が付きそうな体のオランジェルは鼻息荒く騒ぎ立てた。
全方向どこから見ても球体の姿である。
(ほんとうの豚さんは体脂肪は正常値)
「よさないかオランジェル、大司教様の御前だぞ」
大司教と呼ばれた御仁が侮蔑の目でオランジェルを見つめていた。
「あ、あら、豚だ失礼を」ブキー
大司教は神の化身と謳われる美丈夫だ、年齢不詳と言われ本当の歳を誰も知らない。
100歳を超えているとも言われているが怪しいものだ。
神々しい美しさに目を奪われたオランジェルは浅ましくも(王子よりこっちと婚姻したいと考えた)
日に日に心身醜くなるオランジェルに愛想をつかし、王子は婚約内定のまま放置している。
「其方、なぜに一度も満月の儀に参加しないのですか?」
大司教は涼やかな声色でオランジェルに問う。
「あ、あら。大司教様が見目麗しい方と知っておれば毎日参りましたわ!
もちろん、今日から参じますとも!」
キラキラウルウルと得意の落としにかかったオランジェルに、王子も司教も顔を顰めた。
王子&大司教(こいつの根拠の無い自信はどこからでるのか!?)
肩こりがヤバミでハンマーで叩きながら投稿してます。
明日あたり爆発しそう




