王国の小さな異変(数か月前の話)
ギャグ回です
*下品な表現有、食事中は危険です!
とある貴族のお茶会での出来事――
華やかな婦人方が囁きあう、薔薇園の花がおかしいと。
「見目は大輪で美しいというのに、おかしなものね」
「ほんとですわ、今の時期はとても香しいはずですのに」
「それに一見華やかですけど、こんな毒々しい色でしたでしょうか?」
御婦人方は揃って頭を傾げた、薔薇を愛でる茶会が台無しな兆候である。
「皆様ごきげんよう、薔薇を愛でる会にご出席いただきありがとう存じます。
本日は新茶で作らせた流行りの緑茶をご用意させましたの、喉を潤してくださいませ」
茶会の発起人である公爵夫人がメイド数人を引き連れ現れた。
丸テーブルには雅な白磁の茶器が並ぶ、婦人方が楚々として座り笑みで答える。
メイド達が一斉に席を周る、優雅かつ迅速に渡り歩き茶を注いでいく。
「それでは御堪能くださいませ」
御婦人方はしずしずと上品に茶を含み、そして一斉に「ブーーーーーッ!」と吹き出した。
「み、皆様!?どうなさいましたの?」一人狼狽える茶会の主催たる公爵夫人。
「お、恐れながら、公爵夫人・・・これは茶にございますか?」伯爵夫人が青い顔で訴えた。
「え?」
公爵夫人はメイド達を見据える、彼女達はブンブンと頭が取れんばかりに横に振った。
飲んだ御婦人方は
「馬糞みたい・・・ぐえぇ」「溝川みたいな味が・・うげぇぼ」「私のはワキガのよう・・・うべぇ」「雑巾のしぼり汁の味が・・ごばぁ」
えずく婦人達から、とんでもない感想が飛び出す。
貴族婦人達が馬糞やドブ川や雑巾の味を何故知っているのが甚だ疑問であるが。
「そんなバカな!私にも注ぎなさい!」
取り寄せた茶葉は1週間前に吟味済である、絶対の自信が公爵夫人にはあった。
もし不味ければ自領の特産品に傷がついてしまう。
公爵夫人はためらわず一口含む・・・
「ぶっべぇーーー!旦那の足裏の味がするーーー!!くっせぇ!!!」
公爵夫人は足裏を舐めたことがあるようだ。
茶会は大失敗に終わり、公爵家は原因究明と謝罪に奔走する羽目になった。
***
とある男爵領の事件――
某男爵は定期の領地視察に足を運んでいた、天候は上々きっと良い作物がとれる事と澄んだ青空を眺める。
案の定、青々とした田園が続いている、今の時期ならば小ぶりで甘い赤桃と葉野菜類が収穫に入ったはず。
領民を労うための土産を馬車に乗せ男爵はご機嫌である。
「男爵様!わざわざご足労を」
「いやなに挨拶は良い、果実の出来はどうかね?」
たわわに実った赤桃が美味そうに陽の光を浴び輝いている、葉野菜も青々と無事に収穫できそうな頃合いのようだ。
「うむ、良い収穫量が見込めそうじゃないか!」
「・・・ええまぁ見た目はそうですが」
歯切れの悪い言い方をする農夫に眉を吊り上げた。
「なんだ?虫害でも出たのかね?」
「いいえ、その虫も食らわないといいますか、野鳥も寄り付かないといいますか」
ゴニョゴニョと話す様にイラついた男爵は赤桃を一つ捥いで確認した。
新鮮なそれは細かい毛耳が生えて、色つや良く食欲をそそる。
手巾で毛を除けかぶりついた、瑞々しい果汁とともに芳醇な・・・芳醇な?
「ぎょばぁーーー!なんじゃこりゃぁーーー!」
ナンジャコリャー
ナンジャコリャー
・・・
・・
男爵の雄叫びが長閑な農地にこだました。
***
王城で午後の紅茶――
「聖女様、本日の水菓子は赤桃でございます」
「あぁそう?5個ほど剥いて」
畏まりましたとメイドがスルスルと剥きはじめた。
オランジェルはカウチソファからノソリと起き上がった「ビリリッ」嫌な音が背中から聞こえた。
メイドは聞こえないふりを決めこんだ。
「ふぅふぅ、よっこらせ、やーねサマードレスは薄手で弱いったらないわ!」
丸々太ましい体は無関係とばかりにドレスにケチをつけた。
メイドが(痩せろ!デブ!)と心の中で叫んだかどうかは知る由もない。
「どうぞ、お召し上がりください」
「ねぇ、夕飯はブルスト多めに茹でといてよ?」
「・・・畏まりました」
オランジェルはブルストみたいな指でフォークを掴みムシャリと桃を食んだ。
「んぐぼぉーーー!犬のウンコみたいな味が迸るーーー!!!」
聖女様は犬のウンコを食べた事があるようだ。
すみませんでした・・・




