一年後の一騒動
砂漠に住んで1年、紆余曲折があったがリモネルは安寧な生活を楽しんでいた。
竈もなんとか使いこなし芋粉パンくらいなら焼けるようになっていた。
時々焦がしてしまうがそれもまた経験のひとつ。
流砂も無くなり熱帯植物を次々繁殖させてきた、
いまではパイナップル、バナナ、サトウキビも作っている。
塩はゴッツが岩塩を、藻塩はマールが作ってくれた。
マールに海へ連れていって欲しいと言ったが「危険」とジェスチャーで拒否されている。
難しいのは葉野菜栽培でかなり苦戦した、ゴッツが持ってくる黒土を畑へ運びなんとか収穫できるようになってきた。
「宮殿周辺はだいぶオアシス化したと思わない?ね、サンディ」
野菜を洗っていたサンディが「むぷ」と同意した。
採れたて野菜にパインドレッシングをかけて食べる。
「んー!美味しい、パインの爽やかな酸味と風味がたまらないわ」
サンディは微笑み、パンを切りサンドイッチを作っている。
ゴッツとマールは棒切れを持って剣術らしいことを始めている。
楽しい日々ではあるが、ひとつ不満がある、全員で食卓を囲めないこと。
仕方ないことだと思ってみてもやはり「美味しいね」と笑い合いたい。
3人がやけに人間らしくなってきたことも原因だと思う。
みんなで作った野菜と果物を味わって欲しかった。
そんな事をぼんやり考えながら黙々と作業するサンディの後ろ姿に・・・違和感を覚えた。
もともと自我があるような振る舞いは自分と連動してのことかと思い込んできたが、
ザックとマールは自ら鍛錬に励んでいる。
「どういうこと?表情もなんだか自然過ぎるわ」
考えて考えても答えは出そうもない、創造した直後は動作はギコチなく傀儡人形そのものだった。
「ううーん、創造主の私の魔力が増えたせい?いやいやそれほど変わったはずは」
うんうん、唸る私をサンディが心配するように見て、オデコに手を触れてくる。
「病気じゃないから、というか熱わかるの?」
「・・・むぷ?」わかりませんのポーズをして作業に戻ってしまった。
なんか誤魔化された気がする。
***
午前中は畑の世話をして、暑い昼間は休息をとった、午後はそれぞれ自由行動だ。
そんなルーティンの呑気な日々である。
いつも通り昼寝しようと寝室へ向かったのだが、ゴッツとマールが「いっしょに来い」と必死にアピールしてきた。
「いったい何事?珍しいのね。
あれ?その先は・・・結界の外へ行くの?待って準備するか・・・え、ちょっと!ダメ干乾びちゃう!」
彼らが強引に私を抱え上げて結界から出てしまった。
「やー!?なに?私の事捨てにいくの?なんで?私なにかした?」
私は異常事態にパニックになり暴れまわるが、厳ついマールに敵うはずもなく無駄に終わる。
自我の芽生えた彼らに、用無と判定され破棄されるんだろうかと恐ろしい顛末に青くなる。
(ううぅ暑い、私はまた邪魔だと捨てらるのね・・・)
絶望に昏くなり抵抗する気力も失せた、せめて一思いに殺してくれと懇願してみようか。
グッタリ動かない私にマールが「むぷ?」と鳴らし様子を覗っている。
「・・・うぅ見ないで、さっさと済ませて」
滂沱に流す涙さえあっという間に蒸発する暑さだ、移動中に果てるかもしれない。
魔法でしのごうという思考さえ出てこない。
数分後、目の前に馬車に似て非なる乗り物が見えた。
マールはその乗り物へ私を押しやった・・・そんなに遠くへ捨てるの?
「車内はずいぶん涼しいのね・・・」
グスグス鼻を鳴らし涙を拭いたら少し冷静になった、マールが横に座るとカラカラと車体が動き出した。
「ひゃっ!あわわ・・・なんてスピードなの!」
ゴッツが引いているのだろうか、ズドドドドドッと大地を踏むしめる轟音が車内に響く。
呆然とする私はどれほどの距離を移動したかなど予想もつかない。
しばらくして徐々にスピードが緩み止まった(あぁ私の死に場所はここなのね)
愚図な私を強引にマールが引っ張り出す、強い日差しに顰める。
「むぷ」と音をたてマールが私の手を引いて歩き出した。
連投しております




