桃栗三年、砂漠数百年?
「わあーすごぉーい、一晩でこんなに育つなんてー(棒)」
背の低いソテツは青々した葉をワサリと茂らせ、ナツメヤシが天を突くがの如くドーンと立っている。
あの赤茶の植物は横長に茂りハート型の葉っぱを揺らしていた。
3人は私を取り囲み胡乱な目をむぷーっと向けてくる。
「そ、そんなに怒らないでよー
だってだって種が発芽する前に砂に流れたらやり直しよ?」
砂嵐のあったその夜中に、魔力全快になった私はコッソリ畑に魔法を使ってしまった。
そして朝、魔力を使い果たし昼過ぎまで屍の如く寝込んでいた。
「なによう、みんなだって無茶してるの知ってるからね!」
キッとゴッツを睨み「黒土運んできたのだーれ?あれは魔物森の土よね?」
「マール、また海まで突進して魚介獲ってきたわね?
しかも貝と海老は潜らないと獲れないわ、海底で壊れたらどうするの?」
「そしてサンディ、あなた山で木の実採ってきてるでしょ?
ここから山ってどれほど距離があるかわかって?」
オヤツのパウンドケーキにはオニグルミが入っていたし、ジュースは山桃が使われてた。
8割創造だからと言って、こんなの作るなんて反則技だ。
今更だけど卵や砂糖、小麦粉なしで創造ってムチャクチャだと思うよ。
詰め寄る私に対し「ぷも?わかりません」とポーズを決める3人だった。
「そ、じゃあ私もわかりませーん。勝手に育ったのよ」
つーんとそっぽを向き嘯いた。
だってね、こんな荒地にのんびり畑作って自活なんて数百年はかかりそうよ。
魔法が使えなかったら悪魔の鍋なんて来やしなかったけど。
お互いを思い合い過ぎてると4人で目を合わせたら、気まずくなって笑い誤魔化すしかなかった。
「あなた達ずいぶん表情豊かになったわよね、私の事心配したり怒ったり」
3人は「わかりません」のポーズをとるが、表情はおどけ笑っていた。
***
「へえデーツと言って食べらるのね」
植物辞典を調べナツメヤシの黄色い実を摘まむ、あくまで砂漠の流砂を止める目的だったので、実の利用は考えていなかった。
「どれ・・・味見・・・!?」
甘さのあとに広がる渋味にびっくりする、干さなければ渋が抜けないと書いてあった・・・。
サンディがウッカリ者のリモネルに残念な視線を送る。
「うー・・・だって、ごめん。お水ちょうだい」
干し方と日数で味わいが違うようで、カラカラに干せば保存食になった。
干したものはすごく甘くケーキにすべきだなと思った。
お酒にもなるようだが、まぁそのうち?
サンディがテーブル上の赤茶を指差した。
「あぁこれ?甘藷という芋らしいの、じゃがいもとどう違うのかしらね?」
図鑑をガン見しつつ細長い芋を指先で転がす「ほうほう」「ええ?」と一人で納得したり驚いたりを繰り返す。
「サンディ、これは丸ごと焼くのが美味しいんですって!
でもどう焼こうかしら?焚火と竈・・・うーん焚火はやめよう火事が怖いわ」
そもそもリモネルは料理経験が皆無である、つくづく無計画な娘だ。
沼のすぐ横に竈らしきを創造した。
「えーと・・・どうしようサンディ焼く薪がないわ」
薪は丸太を割って乾燥させなければ煙ばかりでて使いものにならない。
当然砂漠に木など生えてもいない。
数日後、ゴッツが魔物森で丸太を引き摺ってきたのだが、片腕が捥げかけていた。
どうやら魔物と格闘してきたようだ。
リモネルは号泣しながらゴッツを治した。
「うわぁあああん!ごめんなさーい」




