第23話人の第一印象は見た目から
「特急依頼ねえ…ほかに人が来るのかしら?」
「さあ?別に来なくてもいいよ。俺が斬るから」
「……大した自信ね。ラージとは言ってもドラゴンよ」
「俺は魔物を斬れるならなんだって構わん。特急依頼だと早く受けないと誰が先にやるかわからんしな」
「はいはい」
特急依頼は緊急ほどではないものの、急を要する依頼のことである。依頼を出した日から徐々に報酬が下がっていき、一定期間が経つと緊急依頼として扱われる。依頼を受けてもらうためにとても高額な報酬なので、初日は競争率が高い場合がおおい。しかし
「時間になったけどほかに人がいないわね。やっぱりドラゴン相手だと命が惜しいというわけかしら」
「そうだろう。しかも俺と一緒に行きたくないってやつも多いからな」
「……嫌われてるの?」
「俺が魔物を切り刻むたびに青い顔をされてな。もう誰も俺と組みたくないそうだ。…都合がいいから困ってはいないが…」
そう言った俺を見てティアが、やれやれといった顔で手を胸の高さに上げた。なんか癪に触るなあ。そう思っていると、待ち合わせ室のドアの開く音がする。
「今回集まったのはお二人だけですね。それでもいきますか?」
部屋に入った人物は、最初に最低限のことだけを聞いてきた。茶色の髪に小動物のような笑顔。だが、顔と正反対に声には生気がこもってない。
「あ、あなたは王都のギルドの看板受付嬢の…ジュリカさん!」
「あ、ティア。お久しぶりです」
「なんでここに?」
「あなたと同じ日にここに派遣されたんです。最近ここ人手不足ですから」
どうやら知り合いみたいだ。だが
「…そんな話はどうでもいい。ラージドラゴンの討伐…ひとりでも俺は行く」
「わかりました。外に案内の者がいるので、話しかけてください」
「わかった」
「勝手に話を進めないで!私も行くわ!」
そう言ってジュリカが部屋を出ていく。俺たちはそれについていく。
『なんか面白くなりそうだ』
…コイツの言うことは無視。とりあえず案内してくれる人に会おう。
外に出るとボロボロの格好をした、お世辞にも裕福であると言えない男が立っていた。半ズボンより少し長い裾のズボンに、上はボロボロのノースリーブの薄手の生地。見えている肌には埃が少しついており、なんというか、あやしい。こいつが案内人なんて嫌だぞ。あ、こいつ俺から目そらしやがった・
「どうも、今回の依頼の案内担当の、カルロと申します。」
予感的中。…まあ、案内だけなら誰でもいいか…。
「俺、見たんですよ。北の山で暴れているラージドラゴンを。あんな巨体で羽もはばたかせずに空飛びまわり、山の岩肌を削っていました。近くを通りがかったんですが、生きた心地がしませんでした。」
「それは…大変でしたね。襲われた人とかはいなかったんですか?」
ティアが同情します。といった顔で案内人に情報を聞いている。
「それはまだ聞いてません。でも、あそこに竜がいるだけで交通止めで困っている人もいますし、振動で落石とかも起こっています。運び屋も商人もとても困っています」
「詳しいですね。もしかして商人かそれに関係する仕事を?
「……まあ、運び屋に近いものをやっていました。いや?してます?といったほうが正しいですかな。」
今の含みはなんだ。もしかしてこいつまっとうな仕事をしていないんじゃないだろうか。俺が疑惑の目を向けると、
「…まあ、大きい声で言えない仕事ですよ。でも、今回の事はみんな困ってるんで、追求しないでください」
そういうと案内人が北に向って歩き出す。何か怪我があるのか、右足を引きずるようにしている。
「とりあえず、北の山まで向かいましょうぜ。そこから細かい位置に案内しますよ」
馬車で2時間ぐらい揺られると、北の山の入り口についた。入り口近くにはテントのようなものがあり、その近くには武装した男が二人ほど立っている。そのうちの一人が声をかけてくる。
「君たち、ここの道は危険だ。王都に行くなら時間はかかるが船が安定だ、今すぐ帰りなさい」
「私たちは冒険者ギルドのものよ。依頼を受けてこの先に用があるの」
「冒険者ギルドねえ…そこのぼろっちい奴もか?とても戦えそうにはないが」
冒険者と聞くと、急に口調が砕けた。相変わらずこの世界は敬語が持たないなあ。ボロボロだとそう思うよね。もっと恰好きちんとしてほしい。
「彼は案内人よ…というかなんで戦うってわかってるのよ?」
「最近ちらほらとドラゴンを討伐しに来るやつが来るからな。…そいつらは一人も帰ってこないがな…」
「そうですか…どんなドラゴンかわかりますか?」
なんでそんな質問を?ラージドラゴンだから聞く必要はないんじゃ?
「ドラゴンってことは知ってるが、詳しいことはわからない。なんせ、姿を見て生きて帰った奴がいないんだ」
俺は案内人を見る。こいつ「俺は見た!」って言ってたよな?だから俺は
「おい、その話は本当か?ここの案内人が見たって言ってるんだが?」
そういうと、武装した男が肩をすくめながら
「はっ、本当に見たならなんで俺たちに情報が伝わってないんだ?俺たちは王都からの派遣だが、情報が伝わってきてないぜ?」
「…やっぱり」
ティアが目を細めて案内人を見る。案内人はあわてた様子で
「お、おれは見たぞ!ここにドラゴンがいるのを!」
「ラージドラゴンでしょ?」
「ラージドラゴンはここじゃないぞ。王都の近くにある山だ。ここはいまだ調査中だ」
「お…お…おれおれおえお――」
案内人が血走った目で山に入っていく。
「「お、おい」」
俺と武装した男が同じ言葉を言うが、もう遅い。案内人は岩陰に入り、姿が見えなくなってしまった。
「おい!なんで止めなかった!」
武装した男が、もう一人に男にたいして怒っている。胸元をつかみあげる動作だが、丸型の鎧のせいか、手が滑っている。
「だって見張れと言われているけど、捕まえろって言われてないし」
「ふざけ…」
「はい、そこまで。私たちはあの男を追いかけるわ。あなたたちは王都に連絡しておいて」
「わかった。あ、冒険者ならギルドカードがあるだろう」
「あるけど…なんだ?」
「俺の位置がわかるように登録してやるよ。山で迷ったら、俺の方向に向けてまっすぐ向かうといい。地図には高低差が載ってないから迷いやすいんだ」
「あ、ありがとう」
俺とティアは武装した男の血をカードにたらし、場所を登録する。この人、いい人だな。
「じゃあ、無事を祈るよ。あの男は任せた」
「私たちが連れてきた奴だから当然よ。…怪しかったから確認してよかったわ」
ティア…お前も怪しいと思ってたか。しかし、なんでこんな場所に俺たちを連れてきたんだ。そして、うそをつく必要はあったのか?そう考えていると、ハバキリから声が来こえる。
『結構でかい魔力を感じるぜ。気をつけな』
ハバキリがでかい魔力なんて言葉を言うのはじめてだった。少なくとも、以前にドラゴンを切った時には言わなかった言葉だ。
俺は不安を消しきれないまま、北の山の中に入る。あの男をさっさと見つけてティアに押し付けて、俺はドラゴンを斬ろう。そう考えていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
最近タイトル変更を考えておりますが、いい案が浮かびません。正直(仮)で逃げてる感は否めません。




