第24話能ある鷹は爪を隠す
俺たちは山の外側を落ちないように下を見ながら歩いている。前を見ないと、あの男は見つからないがそんなことを言っている場合ではない。尖った岩も邪魔をしてとても動けないのだ。
「なんでさっきの男が怪しいって思ったんだ?見た目?」
俺はさっき思ったことをティアに聞いてみる。
「気になるんだーへー仲間はいらないみたいなこと言っておいて」
…仲間として気になるんじゃなくて、純粋に疑問だったからだ。
「まあ、とある魔法で確認したのよ。詳細は教えないけど」
「なんでだ?」
「爪は隠すものよ。あなたを助けるときにでも使ってあげる」
「俺は一人でいい」
「そんなこと言わないの、いつか必ず役に立つから。下手すると今日かも」
「はあ…」
俺は息をつき、顔を上げる。気分を変えよう。そう思っていたら、視界にとんでもないものが映った。
「な、なんだあれは!」
北の山は大きな岩がたくさんあり、視界には尖った岩がたくさん映る、だが、その岩の集まりが途中から不自然に消滅している。消滅した先にはなぜか砂場があり、岩山の中にはとても不自然な場所だった。
「なにあれ…整備…というわけでもないわよね」
ティアも面喰っている。
「もしかして…ドラゴンの仕業?でも、ドラゴンは基本的に風か炎だから…えーと」
「ドラゴンの可能性はある。とりあえずいぞごう!」
俺たちは迅速にかつ丁寧に砂場にいそぐ。…そこで案内人が休んでれば完璧なんだが。
砂場につく。目の前には真っ白な砂が敷き詰められており、とても細かい粒子でできている。ティアがどこからか出した剣の鞘で砂をつつくと、キュッという音がなる。
「…この音が鳴るってことはかなりきれいな砂ね。少なくとも何年も前からこれって状態ではないわ。ここら辺の風は他の汚い埃を連れてくるから汚れないのはあり得ない」
「そんなことがわかるのか」
「うろ覚えだけどね。とりあえずこの辺りを探しましょう。なにか異変があれば…」
ティアがそういうと、足元の砂の中から蛇が4匹ほど出てきた。たしかこの蛇は…
「キヌヘビ…猛毒をもつ中型の蛇ね。さわり心地が絹みたいだからキヌヘビだそうよ」
「触って噛まれたらあの世行きだな」
「そうね…まあ頭を飛ばしてから触ればいいのよ」
「とりあえず狩るか」
俺が腰の剣を抜こうとすると、ティアがそれを止めた
「まあ、こいつらは魔物じゃないでしょ。ここは私に任せなさい」
「…好きにしろ」
俺は万が一に備えて腰の剣に手を当てたまま待機することにした。どんな戦い方なんだろうか。
「数は…4。足元は砂。視界は良好、砂に潜って移動をせず、そのまま這ってくる。これなら楽勝ね」
ティアは魔方陣を出現させると、右手の手首までを魔方陣に突っ込み、引き抜く。すると、彼女の手にはレイピアのような細身の剣が握られていた。剣先から持ち手まで布などもまかれていない純金属製だ。
「まずは…一番近いのから!」
彼女は足元に魔方陣を置き、魔力を通してから魔方陣を踏みつけた。すると、一番近くのキヌヘビに鉄の杭が刺さる。下が砂なので拘束はされないが、動きは鈍くなる。
「ていやあ!」
掛け声とともに、頭をはねる。二匹目が後ろから飛び跳ねてくる。だが、彼女のところに届く前に、中から降ってきた刃に頭をはねられる。
「残りはまとめて!」
ティアは剣を水平に振り、とびかかるキヌヘビ2匹の頭をはねた。4匹とも頭をはねる完璧な処理。剣の振り筋もぶれておらず、なかなかの腕前だということがわかる。
(10秒くらいで4匹処理か…なかなかやるな)
速いし、丁寧。仕事はなかなかやるようだ。魔法は金属を出現させるものか、これはたしか…
「私の魔法は土と光の合成魔法。金属を出現させるわ」
ティアが説明を始めた。
「私の来てる鎧とこの剣は魔法で出現させたもので、壊れてもすぐ直せるし、持ち運ばなくてもいいという利点があるわ。金属にはバリエーションがあるから、汎用性は高いと自負しているわ」
「まあ、なかなかだな。でも、魔力は結構食うだろ?」
「まあね。でも出した金属を消すと、ある程度魔力を回収できるのよ。だから、すぐ魔力切れなんてことはおこらないわ」
結構ズルいな。俺の氷は溶けても魔力が帰ってこないのに。
「ちなみに、さっき言ってた確認する魔法はこれじゃないから。」
「だろうな」
「たぶんビックリするわよー。まあ、蛇も倒したし、進みましょう」
「そうだな」
俺たちは蛇を放置したまま、砂場を進むことにした。足が砂にとられて歩きづらいなと思った。
進むたびに足元の砂が細かくなっていくのがわかった。足元はもはや砂というより粒子で、風で粒子が飛んで視界を邪魔している。息を吸うたびに呼吸が苦しくなり、目は開けているだけで痛みが走る。
「…ねえ、おかしいと思わない?」
「これだけ障害物がないのにあの男が見つからないことか?」
ティアはやれやれといった顔で手を胸の高さに上げ、振る。この動作イライラくるな。
「砂が細かくなってることよ」
「ああ、それか。さっきから細かくなっているが、そういうものじゃないのか?」
俺は砂場の事なんか知らないから、そんなもんだと思っていた。
「ありえないわよ。これだけ細かくなってるということは理由があるのよ。おそらく…」
「その理由は?」
「ドラゴンが砂を砕いた…とか?」
「はあ」
なんか急に疲れてきた。一刻も早くあの男とドラゴンをもつけなければ。
そう思ったら、目の前に砂嵐が起きた。このタイミングで来るということは…
「あれ、きっとドラゴンよ。急ぎましょう!」
言われなくてもそのつもりだ。俺はハバキリに手を伸ばしながら、砂嵐に向う。目がとても痛い。
砂嵐に近づくと、荒らしが止まった。中から出てきたのは全身が透明なクリスタル状の鱗に覆われたドラゴンだった。その目は見る者の心を奪うほどに美しく、おぞましい赤色で、額から伸びた角は天へと伸びている。背中の翼は真っ白な色をしており、尻尾は赤いクリスタルが先についている。首元には半円状の何かが刺さっており、綺麗な体には不釣り合いだった。
(これは一体何のドラゴンなんだ?)
俺がそう思うと、ティアが震えているのが見えた
「な…なんでこいつがここにいるのよ…」
ティアが絶望を込めた声でいう。そして、一つの単語をつぶやいた。
「【壊竜】…私たちはもう終わりよ…」
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