第20話狂人
――テンカの街 イシュタルの中心に位置する街で、商売の街として知られている。元々は王都に送る荷物を一時的に置いておくための街だったが、海と山と川に近い立地条件の良さからあらゆるところから物品が輸送され、倉庫の街から商売の街へと発展していった。物が集まると自動的に人も集まり、様々な技術が混ざっていった結果、あらゆる人種と技術が集まり、王都よりも技術に関しては発展していると言われている。
この街のギルドは大きいものではなかったが、様々な人が集まるこの街で人種、条件問わずギルドのメンバーを登録していった結果、あらゆる問題を解決できるギルドとして評判になった。その頃はギルドの名前がなく、テンカの街のギルドとしてあったが、後に勇者スサノがこのギルドを訪れ、「魔王」と呼ばれる人型の魔物を討伐した時に、王から【ブレイブ】の名を付けられることになった。現在、ギルド【ブレイブ】はスライム討伐の際の戦死やケガでメンバーの大半が動けない状態であり、一時的に王都や近隣の街からの派遣で成り立っている。
「今日からあなたとパーティを組めと言われたティア・マドルよ、よろしく」
ティアは王都から派遣された冒険者の一人で、王都のギルドでは平凡な実力者ではあるものの、ギルドへの忠誠心と剣の腕を買われて一つの命令を受けたのだ。それは、ギルド【ブレイブ】で活躍している【狂人】と呼ばれている男と組めというものだった。ギルド【ブレイブ】まで足を運び、目の前の男を見ると不安になった。どう見ても戦える人間ではない様に見えたからだ。
(この男が【狂人】…見た目はただの子供みたいね。でも…)
ティアは目の前の男を見る。黒髪黒目の細身の体に、顔を見ると子どものようであった。だが、その表情は無そのものであり、目はどこも見ていない。
「あんたが俺と組まされる人か…俺は魔物を切れればなんでもいいから、好きにやってくれ」
目の前の男はティアのことなど興味ないとでも言いそうな顔で、依頼の紙を持つと、受付に向かった。
「ちょっと待ちなさいよ!なんで勝手に依頼を受けるの?」
「?好きにやってくれと言ったじゃないか」
「でも、私はあなたと…」
「俺の邪魔をするのか…?邪魔するなら…死んでもらうぞ?」
「は?じょうだんでしょ…」
ティアは目の前の男の表情が全く変わっておらず、声も平坦なことから冗談を言っていないと判断した。目の前の男は自分が邪魔なら本当に斬るだろう。そのことに恐怖した。
目の前の男は受付に依頼の紙を持って行き、ギルドカードに依頼を登録すると、ギルドから出て行った。
「あいつ…!待ちなさい!」
ティアも受付をすると、男を追いかけた。
(【狂人】モチヅキ・ヤマト…あんなのただのクソガキじゃない!なんで私こんなやつと組まなきゃいけないのよ!)
ティアは大和が剣に向かって喋っているのを見かけ、頭が痛くなった。彼女はしばらく頭痛に悩まさせることだろう。
第3章 勇者と魔物と王都
時間が…足りない…




