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異世界は突然に(仮)  作者: ルミナス
第2章 家族と魔法と喋る剣
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第19話幸せな生活の条件2すぐ傍にいる家族

『あ、俺の名前を名乗るのが先だったか?前の持ち主は俺をハバキリって呼んでたからそれでいいや。ほかの名前がいいなら新たに付けてくれや』

剣がさらに喋ってくる。頭の中に響いているのか、耳で聴いてるのか自分にはわからない不思議な感覚だった。声は…少年のようでもあり、少女と言われてもおかしくないような澄んだ声だった。

『いやーあのスライム俺なんて食って何がしたかったんだろうなあ。魔力こもってるとは言え、剣だぜ?無機物だぜ?』

(もしかしてこいつがスライムの中にあったせいで大きくなったのか?)

『あ、なんか喋んないけどどうした?願い事が思い浮かばないか?まあ、聞くだけで叶えられるとは言ってないから気軽にいいな!』

「お前のせいでスライムは大きくなったのか?」

『お、俺に対する第一声がそれか!まあ、多分そうかもな。俺のような魔剣は魔力を増幅する機能もあるらしいからな』

「じゃあ、お前が取り込まれなければこんなことには…」

『おいおい、俺は被害者だぜ?俺に責任を求めるのはどうかと思うぜ?主犯はそこのスライムなんだからよ?』

確かにそうだ。でも、コイツさえいなければフィンネやギルドの皆が…そういえば願いを聞く?

「願いってのは聞いてどうするんだ?」

『お、食いついたか。聞いて叶えられそうなら手伝ってやる。無理そうだったらできる限りの範囲でな』

「…さっき大怪我をした女の子がいる。その子を助けて欲しい」

『よしきた!癒しの力なら俺は得意だぜ!』

本当にそうなら頼もしいのだが。俺は奥歯を噛み締めながら、ハバキリを持ってフィンネの下へ行く。

『……これはひどいな。これは今の俺じゃ助けらんないな』

俺はフィンネの手を握る。そして、ハバキリを睨んだ。

『まてまて、「今の」って言ったんだ。方法はある』

「…それはなんだ?」

『まず、俺がこの子の体を取り込んで保存しておく。そのあいだに体は治しておく』

「それだけじゃダメなのか?」

『体を治しただけじゃ魂がのらない。今のこの子は体と魂が剥離しかけてる。だから、それを大量の魔力で無理やりくっつける。そのためにはお前の協力が必要だ』

「何だ?」

『俺で高い魔力を持つ魔物を切って伐って斬りまくるんだ。そうすりゃ魔力を貯めて、この子を助けてやる』

「…どのくらい斬ればいい?」

『さあ?魔物を滅ぼすくらい斬ればいいんじゃないか?魔物さえいなけりゃこんなことも起こらないぜ?』

こいつの言ってることがどこまで信用できるかわからない。だが、今はこいつの言うことを信じなければ、フィンネが死ぬのは変わらない。やるしかない、やるしかないんだ。

「わかった。お前の言うとおりにしよう」

『お、この子のために魔物を滅ぼすのかい?くぅ〜若いっていいねえ!じゃあよろしくな!相棒!』

誰が相棒だ、俺はこいつは信じられない。コイツさえいなければスライムが大きくならなかったかもしれないんだ。だが、俺はハバキリを手にとって、こういった。

「ああ…よろしく。一緒に魔物を滅ぼそう」




今回のスライム討伐ではギルド【ブレイブ】のメンバー100人のうち、82名が参加し、30名が帰らぬものとなり、5名が行方不明となった。残りのメンバーも重症のモノが多い。等ギルドとして損失が大きいのは【神喰】のメンバーが全員使い物にならなくなったことだ。リーダーのアルフは意識不明の重体。フィンネの死体は見つかっていないが、スライムに取り込まれた可能性が大。カルバとラメリアは死体として見つかり、すでに葬儀まで終えている。

現在のギルドの戦力は、王都に遠征に行っていた【ブレイブ】と、今回の事件で犠牲のなかった【スルクライ】に頼ることになる。なお、今回のスライム討伐に最も貢献したモチヅキ・ヤマトはギルドランクをBに格上げし、難しい依頼にも望んでもらうことにした。




スライム討伐から2週間が経ち、イシュラは忙しい時間の中、一つのことを調べていた。

「あの時、ヤマトが持っていた剣に見覚えがあった。俺の予想が正しければ…」

イシュラは【勇者スサノの伝説】という本を読んでおり、一つの記述を見つけた。

「これだ!」

【勇者スサノの持っていた武器は5つ】

そのうちの一つの記述にイシュラは釘づけになる

【ハバキリ 刃ほどの大きな柄を持ち、言葉を話したという。スサノはこれを使い、ヤマタノ竜を切り裂いた】

「ヤマトか…やっぱりあいつは面白いな!いつか本気のあいつと手合わせ願いたいもんだ」

イシュラはハバキリがフィンネの体を取り込んだことも、スライムの体の中からでてきた剣のことも見ていたが、ギルドには報告していない。彼が報告しなかったことで、大和の運命は狂うことになるのだが、彼はそれを知らない。




今、大和は狭いベッドの中にいる。ハバキリが傍にあり、あの日のことが夢ではないと教えてくる。大和はハバキリの柄にある玉の飾りを見る。その中には、フィンネの姿があり、傷が治っているのが見える。

(フィンネ…君がいなくなって生活は色あせて見えるよ)

近くにフィンネの姿があるとはいえ、彼女は喋らないし、大和を見ることはない。大和が最も欲しているのは、傍にいる家族…彼女の温かみなのだ。

(俺の家族はもう、フィンネしかいない。家族を助けるのは当たり前だ!)

彼は明日のためにもう寝ることにした。明日から彼は旅に出るのだ。その目的は…

(そのために…魔物を…一匹残らず…切り刻んでやる)

魔物を斬るためであった。


これにて第2部終了です。個人的には展開が早いと思っていますが、グダグダやってもしょうがないと思うので、駆け足でやっていこうと思います。

それと、お気に入り登録104件ありがとうございます!なんか3桁になると、とても恐縮しまいます。よかったらこれからもよろしくお願いします。

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