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異世界は突然に(仮)  作者: ルミナス
第2章 家族と魔法と喋る剣
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第16話全てを飲み込む物

 北の検問所前に着くと、メガネの男が震えながら点呼を取っていた。俺はギルドカードの提出を求められたので、カードを見せた。

「こんな子供までスライム討伐か…正直命を捨てに行くようなもんだぞ。なあお前、こっそり帰ってもいいぞ。こんな馬鹿げたことに命を落とす必要はない」

メガネの男が泣きそうな声で言ってくる。俺にはまだ理解が出来ていないが、スライムはとても恐ろしい生物のようだ。この男の人はその恐怖に怯えながらも、俺を気遣ってくれた。

「ありがとうございます。でも、俺もギルドの一員ですから」

俺は明るい声で返した。この人の震えが少しでも止まってくれたらいいなと思いながら。

「な、なんでそう言えるんだ?命が惜しくないのか?」

メガネの男はとても驚いている。命が惜しいかと言われると、よくわからない。

「命が惜しいかはわからないですけど、ギルドの命令には従わないといけないと思って」

俺は昔から受身だった。医者に言われた通りに過ごし、やれ、と言われたらやる。飲め、と言われたら飲む。寝ろ、言われたら寝る。この時の俺は気づいていなかったが、俺にされた命令や頼まれたことは守らなければいけない。という脅迫概念に近いものがあった。

「〜もういい!次の点呼を取りに行く。検問所の中にいけ!」

メガネの男は悲しそうな眼で俺を見ると、どこかへ行ってしまった。なんかまずいことがあったか?とか思いながら検問所の中へ向かう。




 検問所の中には30人位の人が集まっていた。なんとそこに、見覚えのある大柄な男がいた。

「あ、あいつは…バッカス?」

俺はこの男を覚えていた。ギルドを登録した日に、俺に故郷に帰れと行ってきたやつだ。冒険者になっていたのか。故郷に帰れないのに帰れとか言われてもなあ。とりあえず、この男は無視しよう。めんどくさそうだからな。

それからしばらくすると点呼が終わり、スライム討伐作戦の説明を受けることになった。俺達が輪っか状に集まると、真ん中に4人が立った。全員が黒いローブに身を包んでいた。俺たちの視線が注目すると、白い髪の頭の良さそうな顔をした細身の男が口を開いた。

「俺たちが【神喰】だ。今回の作戦は俺たちのパーティが中心に行う。知らないものもいるだろうからパーティを紹介する。俺の名はアレフ。もうひとりの男がカルバ」

そう言ってアレフが少し太めの金髪の男に手を向ける。

「そして、大きい方の女がラメリア」

そう言って紹介された女は顔を隠しており、ボディラインから女とわかる程度だった。

「小さいほうがフィンネだ」

フィンネ?と思い、顔を見ようとしたが、やはり顔を隠している。まあ、本当にフィンネなのかもしれない。身長が似てるし。フィンネほどの魔法使いがいれば安心だな。

「作戦は単純だ。俺たちが魔法を唱えてスライムを消し飛ばすから、その護衛とそこまでの移動を任せる。一応この作戦が失敗した場合は、乾燥剤をばらまいてもらうという仕事もある」

乾燥剤か…結構単純だな。そういえば、もう一つの班はなんの為に別れたんだ?俺がそう思っていると、

「スルクライの班も作戦はある。あいつらもスライムを討伐する作戦はある。だが、まずは俺達の作戦からだ。スライムはとても危険な生物だ。各員、大きく気をつけて任務に当たってくれ」

アレフがそう言うと、【神喰】のパーティが馬車に乗る。その馬車の外に漏れるほどの強大な光が溢れていた。俺たちは乾燥剤を積んだ馬車に乗り込むと、北へと向かった。乾燥剤は1袋20kg一人当たり5袋が支給された。約40人がこの班の人数なので、4tもの乾燥剤がここにあることになる。これだけあれば足りるだろう。俺は楽観的なことを考えていた。




「みえたぞー!あれがスライムだ!」

スライムを見つけたことで馬車が止まり、全員が戦闘態勢に入る。俺が外に出たとき、とんでもないものが目に映った。

赤黒い巨大なゼリー。それが俺の第一印象だった。無属性の魔法で強化した目にで見ると、黒く濁った半透明な体には魚や牛のような動物の体が沈んでおり、どれも赤い肉を晒している。おそらく、溶かしているのだろうか。スライムの大きさは視界には捉えきれないほどだった。高さは4mほどだが、横に広すぎるせいで、とても薄く見える。あのような移動方法で、ローラーのように獲物を貪ってきたのだろう。スライムまでの距離はかなり離れている。なのに、血の臭いや、甘酸っぱくもエグい匂いがここまで届いている。本当に討伐できるのか?これは生き物なのか?俺の頭の中には疑問しか浮かばない。

「お前たち、何を惚けているんだ!」

馬車から【神喰】のパーティが降りてくる。

「もう少し引きつけたら魔法を放つ。全員俺たちより前に出るな」

そう言ったアルフたちの周りには、数え切れないほどの魔法陣と、金属が擦れ合うような音に、目が痛くなるほどの光に包まれていた。

スライムがこちらに向かってくる。あれほど大きな体なのに、かなりのスピードだ。

「神話の炎…祖は全てを産み、全て滅ぼす…【始まりの火】」

アルフたちの魔法陣がスライムの上空へと移動し、このあたりの平原ごと炎がスライムを包み込む。その光景は、まさに地獄だった。




10分ほど続いた炎が消えそうになっていた。スライムを焼き尽くしたのか?

「……いかん!スライムはまだ死んでいない。核まで炎が届かなかったようだ!」

アルフが叫ぶ。何だと!?と全員が思ったときには遅かった。炎の方向から突然伸びてきた触手に、ギルドの3人が捕まって、連れて行かれた。悲鳴が聞こえる。炎が消えたあとには、かなり小さくなったとはいえ、まだ体を残しているスライムの姿があった。

「化物め…」

スライムは大きく膨れ上がると、こちらに向けて大量の触手を伸ばしてくる。何人かでスライムの触手を切り払う。切り離した触手はこちらこそ襲ってこないが、それを切った剣は使い物にならなくなり、その匂いはこちらの戦意を削いでくるものだった。





「風よ!」

俺は魔法陣を出して、魔法を唱える。風をとにかく全力で出して、乾燥剤をスライムに送り込む。触手に乾燥剤が触れると多少は動きが遅くなるので、効いているように見える。【神喰】は次の魔法に向けて準備をしている。乾燥剤でしのいで、スルクライたちの到着を待てば行けるかもしれない。そう思ったとき、スライムの体から触手ではない、何かが吹き出していた。


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