第14話大和、一月が経つ
第2章が始まります。
食糧不足の日から一月が立った。あれから俺はショニさんが手配してくれた宿から出て、今は部屋に硬いベッドと窓しかない安宿に泊まっている。正直、ベッドに関しては今の宿のほうが落ち着くので文句はない。飯は…あの宿に比べればレベルが下がったものの、病院食に比べればうまい。朝起きて飯を食べる。昼に依頼途中に飯を食べる。夜帰って飯を食べて寝る…この行為がとても幸せなことだと学べたのはでかい。女将さんが割と気さくな人なので母親を思い出して懐かしくなる。だが一回死んでいるせいか、ホームシックというものはない。まあ、こんな健康な体を見せられないのは残念だけど。病院で寝たきりの俺は、弟の持ってくるモノの世界にはまっていた。妄想の中で俺は体を動かしていた。ある日は剣を使いこなす勇者だったし、ある日は世界を救う魔法使い。またある日は健康な体で家族とピクニックにいくということも思っていた。
俺はこの一月、ギルドで依頼を受けながらも、フェンネに魔法の特訓をしてもらっていた。おかげで、今は魔法を出すだけではなく、圧縮したり、形を変えたりと操作できるようになった。けど、合成に関してはあと一歩というところだ。なにかきっかけがあれば出来るかもしれないが、今はまだ必要ない。魔法はいいとして、問題は剣だ。俺の剣は正直、剣を振っているだけだ。技術もなく、とにかく振るだけ。野生の魔物はそれでなんとかなっているが、今のままじゃ限界だ。だから剣の先生を探しているもの、見つからない。テンカの街は道場や学校というものがないのだ。フェンネは「王都ならいっぱいあるよー。もし王都に行くなら紹介するよ?」と言われたが、今はいい。まだお金を貯めてからだ。
あ、そうそう。あの時食料を腐らせていた2人組は今も拘置所にいる。組織に属しているということはアイシャさんの真実の眼でわかったけど、捕まった時に記憶を魔法で封印されたみたいで、今はそれを解除しているところらしい。一応テンカの街で死人が出なかったから死刑はまぬがれたらしいけど、その日出た損害の補填のため、莫大な借金は背負わされるらしい。おそらく辛い生活が待っているだろう。知らないけど。
そんな俺は、宿の宴会部屋の前にいる。フェンネとアイシャさんが俺のギルド登録一ヶ月記念のパーティをしてくれるのだ。他にも人を呼んでそこそこ大きいパーティにしてくれるらしい。ありがたい。俺は扉を開けて、中に入る――
異世界に来てから大和は満ち足りていた。自分の思い通りに動く体に、優しい人たちとのふれあい。誰かの為になる仕事に、ライバルたちと競う仕事。狭くても寝られる場所に、おいしい食事。彼はいつからか、このような生活がずっと続くと思っていた。だが、幸せはいつまでも続くとは限らない。あらゆるものは有限だ。いつかは終わってしまう。彼はまだ、それを知らない。
第2章 家族と魔法と喋る剣
第2章は13話の一ヶ月後から始まります。なので、その間の話を外伝として書くかもしれません。それと、お気に入り71件と総合評価202ptありがとうございます!前回の更新から大きく伸びて、本当に驚いています。これからも精進してまいりますので、よかったらよろしくお願いします。
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