第13話幸せな生活の条件1飯を食べること
――テンカの街には4つの検問所がある。それぞれが東西南北にあり、この街に入るものは、生物、非生物問わず検問所を通ることになる。それぞれには特徴があり、東は港が近いので、海産物や輸入品が多い。西は主に観光客や承認が出入りする。北は工業地帯や王都に近いため、加工品やその原料が多い。南は、森や畑のある町や村が近いため、食料品が入ることが多い。今回は南の検問所へと届く食料を守るために、大和たちが向かうことになった。
「身体検査を受けさせてもらうぞ」
そう言ったのは、南の検問所の警備を務めて4年目になる若い兵士だった。今日はまともな食料がなく、お腹がすいてはいるが、文句一つなく勤めを果たしていた。検問所を通ろうとした4人組の男女に声をかけたのだ。。ひとりは褐色の肌を持つダークエルフ。ひとりは男の牧師。そして、2人の修道女がいた。修道女はひとりは小さく、もうひとりは大きい。牧師と修道女達は身長の大きさ的と髪の色が同じだったため、親子でもおかしくなかった。
「私は構わないけど、あそこの3人は宗教的に手荷物検査でお願いね。肌を外で晒してはダメなの…それと検問所の中の神像に祈りを捧げても良いかと彼らが…」
そう言って、エダークエルフが連れの3人を見る。ダークエルフ…この顔はギルドの【暴君】アイシャだと兵士は思った。
「どれも構わん。が、武器の類は検問所の外に出るまで預からせてもらう」
そう言われ、アイシャは2本の剣と弓を渡す。
「ではお前は身体検査だ。」
そう言って兵士は女性検査菅を呼び、アイシャの体を調べさせる。牧師と修道女は外見的に問題はなかったため、手荷物検査をして通すことにした。怪しいものは何もない。
「よし!検査終了!通れ!」
そう言って兵士は検問所の中の神像と案内する。実はこの時、兵士は2つの勘違いをしていた。1つは彼らは宗教家でないこと、もう1つは男がもう一人いたことだ。
「はあーバレなくてよかったー」
そういったのは小さい方の修道女…いや、俺こと望月大和だ。俺は待ち伏せてる男たちにバレないように女装をすることにしたのだ。一応、口元を隠しているためバレなかったのだろうと思った。
「まあ、ヤマトくんは細身だし、顔も可愛いからバレないとは思ってたけどねー」
アイシャさん…まあ、細いのは仕方ない。寝たきりだったんだし。顔が可愛いは男として泣けるからやめて。
「とりあえず神像の方へ移動するぞ。そこで祈ってるフリをして待ち伏せるぞ」
「カトルが祈るなんて…フリとはいえ、気持ち悪いですわ!」
「テスタこそ、その格好はお前にはふさわしくない。その服はもっと清楚な女性が着るものだ」
そう言って二人はにらみ合いをする。目立つからやめてほしい。
「ほらほらー仲がいいからって喧嘩しなーい!」
そう言ってアイシャさんが二人を止める。大丈夫かなあ…
少し歩くと、神像のところへ着いた。そこには2柱の石像があり、なかなかに神々しかった。片方は男の神様…どっかで見たような顔をしている。というか、俺を転生させたおっさんだった。
「な、なんでこのおっさんが…?」
「おっさんとはひどいわよーヤマトくーん」
「心の神スピルを知らないなんて…今までどんな生活をしてたのか想像つきませんわ…」
テスタが俺を憐れむ目で見てくる。やめて、女装してるところにそんな目で見られたら新しい趣味に目覚めちゃうから。
「スピルは心…つまり生命が生命であるためのものを司る神。創造神のクリエの生み出したモノに心を与えることで、俺たちのような命が生まれると言われている。」
「心のない生物はただのモノよ。生きてるんじゃなくて、生きてるように動くモノ。私達はそう思ってるわ」
聞いてもないのに教えてくれる。皆やさしい…
「じゃあ、横の女の神様が…」
「そう、創造の神クリエですわ!いつかわたくしもこんな女性になりたいものですわ」
そう言っているテスタの目わ熱がこもっていた。憧れかなー?
「とにかく祈りながら監視をするぞ。ヤマト」
カトルが胸の高さに腕を組み、目をつむる。そのまっすぐとした姿勢はカトルの整った顔とあわせて、一つの芸術のように思えた
「ほら、ヤマトくんも!」
そう言われたので、俺も祈ることにした。…祈るばかりじゃなくて、横も見なくては。
テスタも祈ったことで、見た目には3人の信者とその護衛のアイシャという図式に見える。そのまま俺たちは、怪しい人物が来るまで祈ることした。
検問所のあいだにはたくさんの人が通る。さっき一緒にゾウサギを狩っていた3人組も通ったし、他にも怪しい人影は通ったが、あの時の2人はいなかった。
ぐ〜
「…ヤマト、その音はなんだ…」
「ごめんなさい。お腹がすいて…」
祈っていると空腹を思い出した。やばい、空腹ってこんなに辛いものだったんだ。なんか胃に酸っぱいものがこみ上げてくるし。
「耐えるしかないですわ。無事に終われば食べられますわよ」
終わるまで食べられないのか、はあと息をついた時、見覚えのある顔が目に付いた。あの狐耳の男は…
「アイシャさん…」
「ええ、あの男でしょ。もうひとりの男はわかる?」
「えーと…」
フードの男はいない。というか、顔わかってないじゃん俺。
「すいません…顔がわかりません」
「まあ、仕方ないわ。私はあの狐耳を見張ってるわ。あなたたちは合図するまで動けるようにしてて」
俺たちが頷くと、アイシャさんは狐耳のあとをつけていった。
カーン!かーん!かーん!
どうやら食料を積んだ馬車がもうすぐ来るらしい…やばい!早く見つけないと!俺はあたりを見渡した。すると、置いてある馬車の一台から見覚えのある色の光が漏れていることに気づいた…まさか!
「2人とも!俺についてきてくれ!」
俺はそう言うと走り出した。2人もすぐについてきてくれた。しかし、いきなり走り出す信者とは、周りの人は不思議に思ったに違いない。
俺が馬車に乗り込むと魔法陣を浮かばせた男がいた。顔に深い傷がある男は驚いたような顔をしている。
「い、いやーこの魔法は暇つぶししてるだけでして…決して怪しいものでは」
この声は聞き覚えがある。狐耳と一緒にいたやつだ。
「二人共、捕まえてくれ!」
「「了解」」
そう言うと、二人が男に向かう。
「ちっ、まさかばれるとわな…だが!」
男の魔法陣が光ると、馬車が足元から腐り落ちる。俺たちは地面とのわずかな間に落下しそうになった。
「この程度で足止めになるとでも思いかしら?」
そう言って、テスタのに周りに魔法陣が浮かび、灰色に光る。すると、俺たちの体が浮かび上がる。なんか不思議な感覚だ。
「いや、思ってないさ」
そう言った男は地面に落下するかと思ったら、そのまま沈んでいった。…は?男は地面を腐らせて、その中を移動するようだ
「地面の中に逃げられると思ったか?」
カトルがそう言うと、魔法陣が浮かび上がる。薄く光ると、腐った地面が消えていき、男が現れた。
「あれ?」
そう言った男は地面に横たわっている。自分の周りのもが消えてとても驚いているようだ。
「これで終わりですわ」
テスタが男にたいして見えないなにかを振るうと、男は意識を失ったようだ。とりあえず一件落着かな?とか思ってたら。
「おまわりさん、こいつらです」
まあ、こんだけ暴れれば通報されますよねー。主に暴れていたのは2人だが、俺も連れて行かれた。まあ、こんなこともあるだろう。知らないけど。
このあと、食料が無事に届き、アイシャさんが狐耳の男を捕まえて事情を割るまで、俺達3人は拘留所に閉じ込められていた。アイシャさんが事情を話すと俺たちは解放されたが、もう俺は空腹で倒れそうだった。というか、解放された安心感で倒れた。ああ、飯が食えないのはもう嫌だと思いながら、めし処までアイシャさんに運んでもらう。今日のご飯は格別だった。俺が幸せに生きるためには飯が欠かせない、と心に刻み込んだ。
これにて大和くんのお話の第1章が終了です。次の話からは第2章なので、次の話を投稿の際に章分けします。それと、総合評価156ptありがとうございます!最初は100行けばいいかなーとか思っていたので、予想以上の評価でとても嬉しいです。もしよかったら、これからもよろしくお願いします!




