第12話テンカの街の弱点
俺は目が覚めると、ベッドの上にいた。ああ、見覚えがある。ここはギルドの医務室だな。しかし、なんでここに運ばれたんだ?えーと、確か俺は自分の魔法に巻き込まれて…あ、そういえばあの男たちはどうなったんだ?
「目が覚めた?まさかこんなすぐに来るなんて思ってなかったわ」
「あ、あなたはあの時の…えーと看護婦さん?」
「看護婦なんてものでもないわ。私の名前はアイシャ。アイシャ・エレンミアよ。」
「すいません…アイシャさん、僕と一緒に狐耳の男とフードの男がいませんでした?」
「ああ、その人たちならさっき帰ったわよ。あなたの魔法に巻き込まれたけど、暴走は仕方ないからと行っていたわ。優しい人で良かったわねー、魔法での傷害は意図してないとはいえ、下手したら牢獄行きよ」
「いやそんなことはどうでもいいんです!あの人たちが今回の食料を痛ませていた犯人なんです!」
「え?まさか…嘘言ってないわよね?」
「ホントですよ!僕は襲われたから魔法を使ったんです!自己防衛です!」
「…私の目を見て」
アイシャさんがそう言うと、周りの魔法陣が浮かび、アイシャさんの目が光る。
「あの人たちは本当に食料腐敗事件の犯人?」
「はい」
「…嘘じゃないみたいね。その理由は?」
「彼らが話していたからです。夕方に届く食料をどう腐らせるかと」
「どうやって?」
「街に入ってから、検問所で腐らせると。方法はわからないけど確かに行っていました。」
「方法は多分魔法ね。おそらく土と闇の魔法を合成させた腐敗の魔法。彼らを帰してしまったのはまずいわね…あなた起きたばかりだけど体は大丈夫?」
「空腹感を除けば大丈夫です」
お腹が空きすぎて胃が痛い。でも、動けないほどじゃない。痛みなんて慣れてる。
「じゃあ、あなたに依頼するわ。今から食料が届くのは北の検問所。そこで彼らを見つけて取り押さえて欲しいの」
「いいですよ。でも、俺一人じゃ無理ですよ。もっと人を呼ばないんですか?」
「こういうのは少人数じゃなくて組織でやってることが多いの。あんまりたくさんの人を動かすと、感づかれるかもしれないの。それに一人じゃないわ」
「え?誰か来てくれるんですか?」
「ええ、私に任せて!じゃあ、人を集めてくるから受付でまってて!」
そういうとアイシャさんは部屋から出ていく。しかし、あの魔法はなんだったんだろうか?嘘を見抜くような魔法だったのだろうか?しかし、なんのために食料を腐らせているのだろうか。俺は飯が食えていないという被害は出ているが。まさか、空腹にして街の人々を弱らせるのが目的…?俺はそんなことを考えながら受付に向かう。
受付で待っていると、アイシャさんが2人連れてきた。一人は神父のような服をきた黒髪青眼の男。もう一人は、修道女のような服を着た同じ髪と目をした女の人。どちらも十字架は服についていない。あくまでそれっぽい服だ。
「俺はカトル・ロストだ」
「私はテスタ・ロストと申しますわ」
二人が喋る。同じ苗字ということは双子かな?
「あなたの思ってるとおり双子ですわ」
「顔に出てるそ」
心を読まれた。そんなにわかりやすい顔だったのか?
「今回の依頼は俺たち4人で行う」
「ここで詳しく話せないから、検問所に向かいながら話しますわ」
「さあ、急ぐわよー」
「え?もうですか?ていうかアイシャさんも?」
「もうって当たり前よ。もうすぐ荷物が着く時間よ!」
…ああ、俺は気を失ってたから結構時間が経ってたのか。
「時間があれば俺達は行かなくても良かったんだがな」
「そうですわ!しかも着替えの時間もいただけないなんて…報酬は弾んでもらいますわ!」
…神父っぽいだけで実際は違うのかもしれないな。そんなことを言いながら俺達4人はギルドから出る。場所はアイシャさんが教えてくれるらしい。
「急ぐわよー!」
しかし、夕方が近いとはいえ、アイシャさんの黒い服は暑いのじゃないだろうか。緑の髪に褐色の肌。黒いナース服は街中では目立つ格好じゃ…というかロスト双子も黒い。俺の服は…服が違う。多分水に濡れたから変えてくれたのか?よく見ると俺の服も黒い。というか、こんな中二コートみたいな服は嫌だ。腰にある剣も含めて鏡で見るとダメージがでかいかもしれない。深く考えちゃダメだな。
この怪しい4人組は、たまに人の目を引きながら検問所へと進んでいく。
「今回の事件は何が目的なんですかね?」
俺は作戦を聞く前に、疑問をぶつけた。俺には食料を止めた場合の利点がよくわからなかった。
「…このテンカは商売の街。日々新しいものが外から来て、皆売買をするわ。でも、この街自体は何も生産していないの。食料も外から来たモノに頼ってるわ。」
「ということは?」
「この街は人が多い上にどんなものでもすぐ売れてしまうから、食料を保存しておいても量が少ないの。普通、こんなことにならないように対策はされているのだけれど、今回はそれをすり抜けられてしまっているわ。だから、この犯人を捕まえて話を聞かなきゃいけないわ」
「まあ、そう言う奴らは情報を漏らすかわからんがな。」
「その時は私のこの【真実の眼】で見るわよ」
「まあ、頼もしいですわ」
アイシャさんのあの魔法は真実の眼というのか…結構そのまんまだな。
「まあ、こんなことばっかり話してる場合じゃないわ。それで今回の作戦なんだけど…」
俺は3人の作戦を聞くと多少は驚いたが、素直に従うことにした。説明を聴き終わると、もうすぐ検問所らしい。俺は準備のために服を脱いだ。凹んだ腹を見てさらに空腹を思い出した。
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