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実験は成功だ!

第五話 実験は成功だ!


 冬はスライム猟が振るわないから、本当なら雇い止めになるはずだ。


 しかし俺はD級スライムにエサを与えるだけでC級に格上げできたのを示した。


 俺はそこで終わらずに、エサを変えるとC級をB級にしたり、A級にまで格上げできるんじゃないかと考えた。それをエドワードさんに言ったら、冬の間、雇用継続してくれることになった。あと、品質の判定もしてくれると。


 めちゃくちゃありがたい。出稼ぎに出なくていいからね。ただ、エサを変えるだけで品質を上げられるのか?正直、分からない。もしうまくいかなかったら……。


 エドワードさんは笑った。


「その時は俺の手持ちのカネが減るだけだ」


――期待されている。


 エドワードさんの期待は、俺には思ったより重い。こういうプレッシャーには俺は弱い。好きに生きていきたいし、のんびり生きていきたい。冬の間ずっと養ってもらって、それを仕事の結果で返すのは性に合わない。しかも失敗してもいいというのが逆に怖い。


 とはいえ、何もしないとドツボに追い込まれる。なによりタダ飯は食えない。何か成果を出さないといけないし、最低でも努力はしないといけない。


 とにかく、俺は何種類かのエサを与えることにした。


 小さい桶に一体ずつスライムを入れて、違ったエサを何日間か与える。ダメなら別のエサを与える。


 野菜クズが一般的なスライムの飼料だ。エドワードさんは近所から買っている。近所からは喜ばれている。一般家庭ではゴミでしかないから。


 余計な話をしたが、野菜クズは外して考えることにした。


 じゃあ動物?魚?いや、これらはそもそも食べない。生きた魚を桶に入れたら、スライムはむしろ逃げていた。


 薬草とかは?これは食べたんだけど品質に影響しなさそうだった。


 麦芽の絞り粕はどうだろう?ビール醸造所で分けてもらえる。なにより、陽気になりそう。


 与えると、スライムたちは確かに陽気になった。この効果は正直どうでもいい。肝心の品質は良くならなかった。ただ、体重は増えた。これはこれで利益になりそうだ。


 しかし、ここからは進まなかった。


 たとえば、果物とかを与えたら、野菜と同じような感じだった。パンも与えたが、スライムどもは好きじゃないみたいだ。


――そろそろネタがなくなってきた。


 他にも試してみたが、ここまででC級からB級に上がるエサは見つかってない。


「ダメなのか……」


 いつの間にか晩秋が終わり初冬を迎えていた。本来の雇用期間が終わって、スライム畜養の延長雇用が始まったのだ。心理的な圧力が強まってくる。


 俺は焦っていた。池のほとりを歩いたり、街に出たりしていたが、なかなか思い付かなかった。


 ある日、街で大量に豆のサヤのようなものを捨てる女を見かけた。


「これは何ですか?」


 俺は聞いた。


「見ての通り、虫に食われたエンドウ豆だよ」


 確かにエンドウ豆だ。よく考えたら聞くまでもなかった。ただ、サヤに穴が空いてたりした。人様が食べるものとしては売れないんだろう。


「これ、もらっていいですか?」


「はあ?」


 かなり怪しい人に見えたらしい。女は眉をしかめて俺をじろじろ見た。ただし俺は真剣だ。でも彼女からしたら余計に変な人に見えたのかもしれない。


「お願いします」


 俺は懇願した。通じたようだった。


「まあいいけど」


 ため息まじりだったから、完全には届かなかったとは思う。


 とはいえ、結構な量のエンドウ豆をもらえた。まあゴミだもんな。


 俺にはそれなりの考えがあった。エンドウは牛の放牧地で栽培しているからだ。牛にいいから植えてるんだろう。


――ごめん、いい加減なことを言った。


 しかも、これは後に否定されてしまい少し恥ずかしい思いをすることになるのだ。


 それはともかく、俺はスライムに虫食いエンドウ豆を与え始めた。


 エンドウ豆でどうなるか分からない。今回も失敗するかもしれない。でもこれまでも色々と試しては失敗してきている。いまさら恐れるものなどない。


 与えて数日後の朝、驚くべきことが起きた。B級が増えたように見えたのだ。エドワードさんに見せた。


「確かにB級になった個体が出てきたな」


 エドワードさんもハッキリ言った。彼の鑑定なんだから間違いない。


「根拠はともかく、よく見つけた!」


 一言余計だけど、エドワードさんが喜ぶ様子を見れたのは良かったなと思った。世話になりっぱなしだったからね。


 その後も年を越す頃まで、エンドウ豆を与え続けて、記録を取り続けた。


 帳簿をまとめると、野菜くずを与えた場合で級が上がる個体は見つからなかったが、豆を与えるとC級からB級になるのが40%。A級は10%現れる結果となった。


 とりあえずアバークスをはじく。C級100杯あったとすると、50杯はC級のまま、40杯はB級、10杯がA級。C級は10杯2インだから、10イン。B級は1杯1インだから40イン。A級は1杯2インだから20イン。合計で70イン。


 C級のままだと、20インだから、3倍を超えるということになる。


――まじか!?


 それに虫食いエンドウ豆はゴミ扱いだから多少の色を付けても、かなり安く買えるんじゃないか。


 俺はもう興奮しまくっていた。こんなの大勝利じゃないか!と。


 エドワードさんに持ちかけた。エンドウ豆で畜養しましょうと。


 エドワードさんは慎重だった。


「とりあえずは春まで少しだけ試してみればいい」


 俺はたぶん「こいつ分かってねえな」みたいな表情をしてたんだと思う。


「何かひっかかるんだ……」


 エドワードさんの予感は当たるのか俺が正しいのか、春までに決まる。スローライフは一旦置いた。


お読み頂きありがとうございます。

全15話の5話でした。


「俺」はエンドウ豆でスライムの品質が上がることを知りました。


そして、アバークス(ソロバンみたいなもの)をはじくと、かなり儲かると。


しかし師匠のエドワードさんは浮かぬ顔ですね。

どうなるんだろう?気になりますね!?(強引)


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