表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界奇譚 釣具に転生!? 早く人間になりたいっ!!   作者: いたたたっ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/3

三 まだ続く裁判の事

 生き餌達が、話し合いを始めてから、どれくらいの時間が経ったのか。


 生き餌達の、それぞれの種族が、その座面の上に、一個一個の軍勢のようになって乗っていた、猫ちゃんが座っていた椅子と同じように、長い時の流れを感じさせる、味わいのある、複数の椅子を、すべての種族が向き合うような、配置にして、生き餌達が、顔を突き合わせ、侃々諤々の白熱している議論を続けていて、その議論の、終わりは、一向に見えて来てはいなかった。


「これこれ。いい加減にするのじゃ。いつまで、続ける気なのじゃ?」


 待っている事に、少々飽きて来ているらしい神様の、ちょっと、疲れたような声が降って来て、生き餌達が、静かになる。


「皆、それぞれに、言いたい事があるカニ」


「そうだそうだアオイソメ」


 カニとアオイソメの群れの中から、抗議の声が上がった。


「もう、十分じゃろうて。これ以上続ける気なら、お前達の発言の時間は、なしにしちゃおうかのう?」


 体を動かす事のできる生き餌達が、一斉に体を動かし、神様の方に顔を向ける。


「横暴だユムシ」


 ユムシが言って、椅子の上を転がるようにして、体をグニャグニャと動かす。


「原告団の中で、一番酷い目に遭って来たのは、我々なんだボケジャコ。いくら神様でも、そんな事は認められないボケジャコ」


 ボケジャコが、大きな溜息を吐く。


「そこまで言わんでも良いではないか。分かったのじゃ。もう良いのじゃ」


 神様が、そこまで言って、言葉を切ると、やや間があってから、後光が、一際明るく光った。


「では、お前達の発言はなしにして、判決を申し渡す事としよう」


 急に、とても、厳かな声音になって、神様が、告げた。


「分かったカニ。分かったカニ。皆。この中で一番多く、この人間に殺されているのは、このカニ達カニ。ここは、代表として発言する事を、許して欲しいカニ」


 カニ達が、木製の椅子の上で動き出し、カチカチという音を立てながら、椅子の背凭れの部分に上り、一番上の所に集まると、組体操でもしているかのような動きをし始めて、大きな高いピラミッドを作った。


「しょうがないフナムシ。カニ。任せたフナムシ」

 

 フナムシ達が、椅子の上で、忙しそうに、たくさんの足を動かしつつ、走り回りながら言う。


「しっかりやらなかったら、即交代だフジツボ」


 椅子の上に山のように積まれていた、フジツボ達が、微動だにせずに言った。


 そうして、神様の圧に、一瞬で屈した生き餌達が、急に、団結をしだし、あっという間に、代表者が決まった。


「それでは、早速、言わせてもらうカニ。この人間は、ここにいるたくさんの魚達よりも、遥かに多くの、生き餌達を殺してるカニ。しかもカニ。その殺し方は残忍極まりないんだカニ。我ら、カニなんて、横掛け、尻掛け、更には、この人間だけが良くやってたのだが、二本針を用いて、二か所に刺すなんて事もやってたカニ。まだあるカニ。その中でも一番残忍な針の付け方があるカニ。それが、これカニ」


 他のカニ達の上、ピラミッドの頂点にいて、発言をしていたカニが言い終えるなり、突然、爪と脚部をすべて自切した。


「この姿を良く見て欲しいカニ。これこそが、最も陰惨な状態カニ。人間達は、この状態をパチンコなどと呼んでたカニ。これは、そもそも、フグなどの餌取対策の為だったカニ。けれど、そんなのは、一投目か二投目くらいしか、効果がなかったカニ。爪と足をもがれても、結局は、餌取達に食べられしまってたカニ。なんと嘆かわしい事かカニ。まだあったカニ。小さいカニ達に関しては、爪と足を全部もいでから、二匹を一つの大きな針に掛けるなんて事もしてたカニ。しかも、これは、あくまでも、我々カニ達だけに限った話カニ。他の生き餌達だって、相当に酷い目に遭ってるんだカニ。神様。どうか、お願いしますカニ。この人間に、重い罰を与えて欲しいカニ」


 言い終えた、爪と脚部のなくなったカニが、他のカニ達の手によって、背凭れの上を移動し、座面の方に行き、別の、一回りくらい大きいカニが、カニ達の作っているピラミッドの頂点に立った。


「カニよ。お前達の言いたい事は、分かったのじゃ。確かに、魚達よりも、お前達の扱いの方が、遥かに酷いのじゃ」


「待って欲しいカタクチイワシ。僕らだって、泳がせの餌として、使われた事があるカタクチイワシ。魚の中にだって、生き餌として使われた者達が、いるんだカタクチイワシ」


 原告達は、釣り物で言うところの、大物から順番に、被告人に近い席に座っていたので、これでもかと、たくさん並んでいる椅子の列の、最後尾、謎の時空間の白色に光っている、壁のようになっている場所の、一番近くにいた、カタクチイワシが、自身の存在を、アピールしているかのように、飛び上がりながら、叫んだ。


「それを言うなら、アジだって、やられてるアジ」


 アジも最後尾ではないにしろ、かなり後ろの席だったので、カタクチイワシを真似て、飛び上がろうとしていたが、ゼイゴ同士が絡まっていたので飛び上がれず、二、三匹が絡まって、椅子から落下して、この謎の時空間の床の上、まるで吸い込まれでもしてしまいそうなほどの、暗黒色を湛えた場所に、落下してビチビチと跳ね回った。


「魚達の中にも、生き餌として使われた者が、いる、という事じゃな?」


「そうですカニ。この人間は、生き物を生き物と思わない、残忍で、恐ろしい性質を持ってる人間ですカニ。こんな人間に、チート能力を与えて、異世界なんかに行かせたら、大変な事になってしまうカニ。我々カニは、この人間に、我々と同じように、生き餌となるような運命を、与えて欲しいと、思ってるカニ」


 新たに頂点に立っていたカニが言い、両方の立派な爪を、謎の時空間の白色に光る天井に向かって、高く掲げる様に突き上げた。


「さっきから、黙って聞いてれば、言いたい放題、言いやがってニャン。神様。この猫に発言を許して欲しいニャン。こんな一方的な主張は、到底受け入れられないニャン」


 猫ちゃんが、フシュー、フシャーっと、激しく威嚇するような声を出しつつ、背中を丸めて、やんのかステップを披露しながら、原告団の傍まで行った。


「猫ちゃん。離れるのじゃ。原告達が怯えておる。今すぐに戻らなければ、発言は許可できないのじゃ」


 様々な声の悲鳴と、種毎に違う語尾が、謎の時空間に飛び交い、神様が、静止の声を上げた。


「すいませんニャン。ついつい、興奮してしまったニャン」


 猫ちゃんが、原告団の方を見て、これでもかと、舌なめずりをしながら、私の傍まで戻って来る。


「よろしい。では、猫ちゃんよ。発言を許すのじゃ」


 神様の言葉を聞いた猫ちゃんが、私の足に両方の前足を掛けて、後ろ足だけで立ち上がるような恰好をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ