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異世界奇譚 釣具に転生!? 早く人間になりたいっ!!   作者: いたたたっ


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二十四 釣りポイントの事

 シレルが、うんうんと頷く事に飽きたのか、暫くしてから、さあ、シェレジーの元に帰るかと言うと、一人で戻って行こうとした。


「おいおい。シレル様。何かを忘れては、いませんかい?」


 私は、咄嗟に、嫌味っぽく言ってしまった。なんだろう? なぜか、シレルに対しては、変な言い方をしてしまう。別に嫌いとかではないし、何か思うところがあるなんて事もない。まあ、強いて言えば、ついついからかいたくなってしまう、という事ならあるかも知れない。


「あ~。ごめ〜ん。すっかり忘れてた。異世界野郎は、動けないんだったっけ〜?」


「そうですよ。異世界野郎は動けない。だから、これからは、どこに行くのでも、シレル様のお力を借りないと」


 シレルが、とても嬉しそうに、ニンマリと笑った。


「動けるように、なりたい?」


「何? 動けるようになれるのか?」


 シレルの言葉を聞いた私は、思わず、釣り人の手によって、一度食べた針付きの餌が引っ張られ、口から抜け出てしまって、抜け出た餌に、慌てて再び食い付こうとする、クロダイのような反応をしてしまった。


「なれる、と言ったら?」


「教えてくれ。頼む。大妖精のシレル大先生様」


 これまた、私は、一度口から出てしまって、見失ってしまっていた餌が、また目の前に来た時のクロダイのように、好反応をしてしまう。おっと。一つ言っておこう。今、例に挙げたクロダイの話は、あくまでも、活性の高い、食べちゃうぜスイッチ全開のクロダイの話であって、やる気ないない期クロダイではないので、そこは注意しておいてほしい。


「うむうむ。よろしい。では、少しだけ、この大妖精のシレル様の能力の一つである、鑑定能力が導き出した、お前の持つ能力についての話をしてやろう」


 シレルが、酷く勿体ぶって、ぺったんこな胸を、偉そうに張った。


「は、ははあ〜。どうぞ。シレル大妖精先生。お願い致します」


 私は穂先を下げて、は?! また、私は、おかしな事を?! 私は、頭を下げて、いや、下げたつもりなってそう言った。


「異世界野郎。お前は、その変な物になる前の姿は、なんだったのかね?」


 シレルの奴、この勿体ぶったキャラを、続けるつもりらしい。


「はい。私は、前世、えっと、この姿になる前は、人間でありました」


 シレルが、目を丸くして、酷く驚いたような、顔をした。


「異世界野郎。お前、人間だったのか?」


「大先生。驚き過ぎです。これだけ話していれば分かるでしょう? これだけ、あれやこれやと話せる生き物なんて、他にいますか?」


 シレルが、嫌味っぽく言ったので、私もちょっと、嫌味っぽさを返してみた。


「普通にいるだろ。お前のいた世界には人間しかその手の種族はいなかったのか? こっちの世界には、人間みたいな能力を持ってる奴なんてたくさんいる。このシレル様達妖精だってそうだし、他にも魔族の連中やその辺にいる動物達だって、あいつらの言葉を理解できればの話だが、人間と変わらないぞ」


 そうだった。私は、すっかりと忘れていた。森の木々の会話や、他の動物達の言葉を聞いた事があった。彼らは、私と何ら変わらない感じで、話をしていたのだった。


「そういえば、私は、木や動物の言葉が分かるんだった」


「そうなのか? それは良い能力を持ってるじゃないか。契約が完全じゃないから、やっぱり不具合が出てるみたいだ。お前の能力について、すべては把握できてないらしい」


「良いかどうかは、まだ分からないけど、一人でいても退屈はしなかったかな。でもこっちからは、話せなかったからな。寂しいは寂しかったけど」


「常に聞こえてる感じか? 今とかも」


 シレルが、気遣うように聞いて来た。


「なんだ? 何か、心配してくれているのか?」


「仲間にもいてな。生き物なんてのはどこにでもいるから。常に聞こえてるとかなら、気を付けた方が良い」


 私は、そういえば、今は、聞こえてはいない。そう思ってから、森の声に耳を傾けてみた。もちろん、傾ける耳はないけどな。


「妖精がいるぞ。あれは、大妖精のシレルじゃないか。こんな所で何をしてるんだ?」


「本当だ。何かされるかも知れない。ここは息を潜めてじっとしておこう」


 足元に生えている、何かの草とその草の上にのっていた、緑色の芋虫のそんな会話が聞こえて来た。


「聞こうと思わないと聞こえないみたいだ。確か、前にもそんな事に気が付いた事があった気がする。前の時は孤独で死にそうだったからな。今みたいに意識してなかったから、あんまり良くは覚えてないけど」


「そうか。それなら良かった。便利な能力ではあるんだけど、ほどほどにしておけ。出ないと心をやられちまう事もある」


 シレルが、珍しく、そんなふうな、私を労わるような事を、言ってくれた。


「ありがとう」


「えっと、何の話をしてたんだっけ? そうだった。動けるようになれるかだったか。人間に戻れるかも知れない、と言ったらどうする?」


 私のお礼の言葉を聞いたシレルが、ちょっと照れ臭そうに、体をモジモジと動かしてから、口を開いた。


「戻れるのか?」


 私は、目の前を餌が行ったり来たりして、興奮して来て、体を切れの良い動きでクリンクリンと、右に左にと回転させる、クロダイのような気持になって、言葉を返した。


「戻れるはずだ。お前のステータスに、釣りポイント? というのがあるだろう?」


「ああ、ある。って、お前、私のステータスが見えるのか?」


「やっぱり不具合のせいで、全部じゃないけど見える。さっきも言ったけど、このシレル様は鑑定能力持ちだからな。この能力の事もあって、シェレジーはシレル様と契約したんだしな。もちろん、他にもできる事はあるけどな」


「教えてくれ。困ってたんだ。あれは何もかもが意味が分からない。猫ちゃんポイントは簡単に上がったけど、特に何もないみたいだし。他のだって、何がなんだかさっぱり分からない」


 シレルが、悪そうに微笑んだ。


「お前の態度次第だ。このシレル様の言う事をちゃんと聞いて、良い子にしてれば教えてやらんでもない」


 く、くう。こいつ、なんて奴だ。あのど外道のクサフグくらい嫌な奴だ。あいつらめ、いっつも良い時に邪魔しやがって。


「でも、ここまで言ったからな。釣りポイントの事くらいは教えてやろうではないか。お前は、釣り? という事をして、魚を釣って? 釣りポイントを集めれば、色々な釣具? になれる。ええっと、前世と今生と、どちらの世界の中でも、釣具? と大勢が認めた物であれば何にでもなれるらしいぞ。釣具の事は分からないが、人間もその釣具という物の中に、入るんじゃないのか?」


 釣具と人間か。どうだろう? 釣具と人間……。何か、人間が釣具だと認識されるような……。


……。


……。

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