十八 見付けたニャン!! ……だと? の事
チコ達は、行ってしまった。
あはっ。
あはっ。
あはははははははははははははははははは。
変な笑い声が出てしまったよ。テヘッ。
……。
あれ? なんだろう?
チコの元気な転生後の姿を見られて、良かった、はず、なのに。
なぜだか、泣けて来る。
釣具だから、泣けないけど。
そんでもって。
私は、今、折れている。
私の、上半分、正確には、綺麗に半分に折れていたわけではないけれども、その上半分は、お嬢様のスカートとともに、どこかへ、行ってしまった。
私の意識とか、感覚とか、そういう物、所謂、釣具化している私自身は、本体は、悲しい事に、こっち側、お嬢様とは、一緒に行ってはいない方に、残ってしまっている。
嗚呼。嗚呼。無常。無情。
でも。でも。
これできっと、良いのでしょう。
だって。
私は、罰を受けているのだもの。今生は、きっと、こういう人生を歩んで行くのでしょう。
私は、乾いた、達観した、笑い声を、声は出てはいないけれども、上げた。上げたつもりになった。
辺りを一陣の、冷めた風が吹き抜けて行っている気さえして来て、私は思わず無言になった。元々喋ってはいないけど。
そんなこんなをしていると、私の体が? 竹竿が? 不意に、光り出した。
おお? おおおお?
これは、なんなの? これは、あれなの? ひょっとして、何か、変化が起きる兆し的な? ひょっとして、人間になっちゃうとか?
そうか。私、反省しているもんな。チコ達が、変な獣に襲われた時は、この命を差し出しても良いと思ったし。実際に、折れちゃってもいるし。折れても、死んだりはしないみたいだけど、というか、そもそも、釣具に死という概念があるかどうかも、謎だけど。
体の? 竹竿の? ええーい。どっちでも良いけど、光が強くなった。
来たか? 来たのか? ついに、ここで、人間に!!
ニョイーン。という、効果音が聞こえて来そうな勢いで、折れた部分から、穂先が生えて来て、そのまま伸びて行って、元の、折れていない時の竹竿に戻ると、今度は、穂先から、金袖とナイロンラインと割ビシとゴム管と玉ウキが、はいはい。通りますよってな感じで、生えて来た。
あー。はいはい。そういう事。
てぇっ。
おかしいだろ?! ここで、これって、なんなんだよ、これはっ!! 期待しちゃっていたのにぃぃぃ。
……。
喜んだ方が良いのか。はたまた、嘆いた方が良いのか。私の釣具ボディから発せられていた光が消えた時、なんと、私は、完全に、釣具として、復活を遂げていたのだった。
はああああああああ。
私は、吐けない溜息を盛大に吐いて、それから、もうどうしようもないので、また、瞑想でもする事にした。
「取り敢えず、あの謎の道具は持って帰りましょう。このまま、折れたまま、放置して行くわけにもいきません」
むむむ? これは、お嬢様の、お声?
「ええ~? ニャン。あんなの捨てておけば良いんだニャン」
ヂゴオ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙!!!
「チコ様。お嬢様。どうやら、その議論は無駄なようですぞ」
セバソ? どうした? 全然、ちっとも、無駄じゃないぞ。
「これを、ご覧下さい。このセバソめの予想が当たっていたようですな。この、謎の変な道具、元通りに直っております」
ノオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!
こんな、こんな、酷い事ってある? 折角の復活が、超裏目に出ていやがる。
「それは、良かったニャン。そんな事より、早く、どこか、食べ物がある所に行きたいニャン。この子、聖に、ご飯をあげたいニャン」
は、はい? チコ? チコ様? チコちゃん? 今、ななななっ、なんと?
なんか、聖って、聞こえたような?
全開で、嫌な予感がして来た、私の周囲の空気が、一瞬にして、張り詰め、緊張して行く。
「チコ様、その変な獣の子は、本当に、チコ様の探していた、聖という方なのですか?」
「きっとそうだニャン。チコはピンと? 来たんだニャン。あの運命的な? 出会い? ニャン。あんなタイミングで? しかも? あんなふうに、チコに寄って来るなんてニャン。あれは、チコと聖が、初めて出会った時の、再現のようだったんだニャン。チコは、感じたニャン。これは、きっと、聖の転生後の? 姿? だとニャン」
はあああああああああああぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁっぁっぁっぁっぁぁ!!!???
「チコ様。その獣は、恐らくですが、魔獣の類だと思われます。飼うのは難しいかと」
「セバソの言う通りです。チコ様は、ご存じないのかも知れませんが、魔王軍と、人間やエルフやドワーフといった、他種族の間で、少し前から、激しい戦いが起きています。魔獣は、魔王軍の一部、仲間だと言われています。ですから、その子を連れて歩く事は、とても、危険です」
「チコは、聖を絶対に一人にはしないんだニャン。別に、お嬢様とセバソには関係ない? んだニャン。食べ物のある場所だけ教えてくれれば良いニャン。今のチコは強いんだニャン。一人でもどうにでもなるんだニャン」
ヂィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ゴオ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ォ゙!!!
そんな、私の、全身全霊の絶望と、その絶望から来る、渾身の悶えに、気が付いて、偽聖が、チコとの間に生まれた愛を、見せ付けようとしているかの如くに、チコに甘えるように、頬擦りをした。
もちろん。
そんな事は、実際には、あるわけはなく、私が、チコと偽聖の仲の良さそうな様子を見て、勝手に、そう妄想してしまっただけなのだろうけれども、これは、いけない。いよいよ、頭がおかしくなって来ていやがるらしい。
チコ。チコちゃんや。そいつは、聖じゃないよ。聖おじさんは、こっち、ここ、ここにいるよ? この釣具が、君の探している聖おじさんだよ?
「チコ様。私達にはチコ様に命を救って頂いたという、大きな恩があります。そんなチコ様を、このまま、一人にする事なんでできません。ましてや、チコ様は、この辺りの事や、世情の事なども、あまりご存知ないご様子。猶更、放っておく事なんてできません」
「お嬢様。セバソめは、お嬢様のお言葉には賛成です。ですが、今現在、我らの商会は、特に、魔王軍との戦いに、多くの支援をしている所です。その所為で、お嬢様のお命まで狙われる始末。そんな状況の中で、魔獣と関わるというのは」
「セバソティアン。余計な事は言わないで」
「喧嘩? はしないで欲しいニャン。もう良いニャン。二人には迷惑? をかけたくないニャン。チコは、もう、行くニャン」
チコちゃん? 行っちゃ駄目。私は、本当の私は、ここだよ!! 目の前にいるよ!!!
「チコ様。お見苦しい所をお見せして、申し訳ございませんでした。チコ様。何も心配はいりません。私達と一緒に来て下さい。チコ様と聖様のご面倒は、私達が責任を持ってみますので」
「お嬢様」
「セバソティアン。私の決定に、何か文句がありますか?」
「いえ、いえ、このセバソ、感動しておるのです。お嬢様は、誠に、ご立派になられました。チコ様。このセバソ、チコ様には、最大級の、敬意を持って、お仕えさせて頂きます。ですので、今までのご無礼を、どうか、お許し下さい」
「どういう事ニャン?」
「チコ様。チコ様は、私達の、えっと、そうですね、恩人、客人、いえ、友達、いえ、家族、という事でしょうか。それでは、ご不満ですか?」
「家族? ニャン?」
「はい。チコ様。これからは、お嬢様と、このセバソめと、一緒でございます」
「一緒? ニャン?」
「はい。一緒に、行きましょう」
「……。分かったニャン。ありがとうニャン。なんか、とっても、嬉しいんだニャン。聖。これからは、聖とチコも、家族ニャン」
お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙!!!!
ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙ま゙!!!!
い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙!!!!
がががががががががががががががががががががががががががががががが!!!!
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