十七 もう一つの邂逅の事
チコは、あの変な獣の臭いと気配とを追って、森の中を彷徨った? んだニャン。
一匹、二匹、三匹と、猫パンチと猫キックと猫頭突きで、彷徨っている最中に、出会った? 変な獣を倒して、それから、一際? 変な獣の臭いが強くする場所に辿り着いた? んだニャン。
チコは、その、そこだけ、特に? 強い臭いのする場所には、心当たり? があったんだニャン。チコはすぐに思ったんだニャン。
ここは、あの変な獣の巣? じゃないのかニャン、と、ニャン。
こんもりと盛り上がった、小さな丘のような? 場所が、森の中に、現れて? その丘のような所の壁面? の下の、森の地面? と接している? 所に、ちょうど? 人が一人立ったまま入れるような? 洞穴? みたいなのがあったんだニャン。
その、洞穴みたいなの中から、強烈な獣臭がして来てて、チコは、自分の予想? が正しいと思ったんだニャン。
ここを叩けば? もう、あの変な獣に襲われる事は、少なくとも、ここ暫く? は、なくなるんじゃないかと、チコは思ったんだニャン。
周囲の気配と臭いと音を確認して、近くには、あの変な獣達がいないと分かると、チコは、洞穴の中に入ったんだニャン。
洞穴の中は真っ暗だったけど、チコの目は暗闇でも見えるので、全然平気だったニャン。洞穴は、少し進むと、すぐに行き止まりになったんだニャン。
それで、その一番奥? の所で、チコは見付けてしまったんだニャン。
二匹の子供? の変な獣の死骸? とニャン。
一匹だけ、生きている、変な獣の子供をニャン。
モゾモゾと? 寝ているような様子で、少しだけ、動いていた生きていた変な獣の子供が、チコの存在に? 気が付くと、顔を上げて、鼻をヒクヒクと動かしたんだニャン。
戦っていた事で、チコの体に移っていた? 獣の臭いで勘違い? したんだ思うニャン。
子供の獣は、親を呼ぶような声で、小さく鳴いてから、目をゆっくりと開けたんだニャン。
子供の獣はチコを見て、ちょっと小首を傾げた? けど、チコが何かは分からなかったのか、少しの間を空けてから、餌を? ねだるような? 声で鳴き始めたんだニャン。
その姿を見て、チコの、心? の中? に、なんとも言えない? 今まで、何度か? 感じた事のあるような気がする? 思い、気持ち? が渦巻いた? んだニャン。
これは、この思い、気持ちは、何なんだニャン?
チコは、ハッとしたんだニャン。
チコは、この子供を、自分と同じ、野良にしてしまったのかニャン? と思ったんだニャン。
チコは、なんて、残酷な? 事を、してしまったんだニャン。
これじゃ、チコは、あの堤防でチコに酷い事をして来た、烏や、人間と変わらないんだニャン。
チコの全身に、雷に打たれたような、衝撃? が走ったんだニャン。
チコは、今まで、自分が感じていた、あの変な、思い、気持ちが、何なのか、分かったような気がしたんだニャン。
これは、罪悪感? ニャン?
これは、あの裁判の時に、聖が魚達や餌達に感じていた、何か? ニャン?
チコは、なんて事をしてしまったんだニャン。
獣の子が、ヨロヨロと? 立ち上がったんだニャン。まだ、とても小さい子供で、足元が? 覚束ない? んだニャン。そのまま、ヨチヨチと歩いて、チコの方に、近付いて来たんだニャン。
チコは、動けなかったニャン。逃げる事も、撥ね除ける? 事もできなかったんだニャン。
今のチコは強いんだニャン。 だから、こんな子供なんて、一撃で殺す事ができるはずなんだニャン。
でも。
できなかったんだニャン。
しかも。
おかしいんだニャン。
涙が出て来たんだニャン。
チコは、この子の親や、群れの仲間? を殺してしまったんだニャン。あの獣達は、きっと、この子供の餌を確保する? 為にも、チコ達を襲っていたんだニャン。
チコは、自分と同じ、天涯孤独? に、この子をしてしまったんだニャン。
獣の子が、チコの足元まで来たんだニャン。それで、チコの足の脛? の辺りに頭を当てると、何かをねだる? ように、甘える? ように、頭を、体を、擦り付けて来たんだニャン。
チコは、何も考えられなくなって、力が抜けた? みたいになって、立っていられなくなって、座り込む? と、獣の子を抱き上げて? しまったんだニャン。
何もかもが? 止まってしまったような、空気? さえなくなってしまったかのような、時間? が、始まって、チコは、動けなくなって、ずっとずっと? 獣の子を抱き締めて? いたんだニャン。
「チコ様? チコ様、こんな所にいたんですね。どうしたんですか? 無事ですか? チコ様がなかなか戻って来ないので、探しに来ました。何があったんですか? 大丈夫ですか?」
「チコ様。もう大丈夫ですぞ。このセバソ、命を懸けて、チコ様をお守り致しますぞ。あへぇぇぇぇぇ。なんですぅ、これは? ひぃぃー。蜘蛛の巣!! チコ様。お嬢様。このセバソ、蜘蛛だけは~、蜘蛛だけは~」
お嬢様とセバソの声が聞こえて来て、チコの時間が動き出して、チコは、二人のいる方に顔を向けたんだニャン。
「チコ様、それは? 何かを持ってるんですか?」
「分からないんだニャン。これを見付けてしまってから、チコは、変なんだニャン。もう、何とも戦えないんだニャン。殺せないんだニャン」
チコは、顔を俯けた? んだニャン。
「チコ様……」
お嬢様が、息を呑んだ? のが、気配と音で伝わって来たんだニャン。
「チコ様。大丈夫です。チコ様は、貴方は、何も悪くないんです。間違ってないんです。貴方は、ただ、私達の為に、戦ってくれただけなんです」
洞穴の暗闇の中で、お嬢様が、チコの事を、チコが抱いている獣の子供ごと、抱き締めたんだニャン。
抱き締めてくれた、お嬢様からは、なぜだか? 涙の匂いが、したんだニャン。




