十四 お嬢様の事
さてさてニャン。いつまでも、ここにいてもしょうがないニャン。聖を探さないといけないしニャン。
「それじゃ、チコは行くニャン」
チコは、そう言って立ち去ろうとしたニャン。
「待って下さい。えっと、チコ様にはお礼をしなければなりません。よろしければ、私達と一緒に私の家まで来てくれませんか?」
お嬢様という雌が、座ったままで、頭を、下げた? ニャン。
「お礼なんていらないニャン。チコは、急いでるニャン。聖を探さないといけなんだニャン」
「誰かをお探しになってるのですか?」
「お探しになってるんだニャン。だから行くんだニャン」
「それは、……。すいません。でも、お願いです。行かないで下さい」
お嬢様がなんだか、凄く、必死? な顔? になって? 大きな声を出して、チコの事を行かせないようにして来たんだニャン。
「セバソ? がいるんだニャン。セバソじゃ、駄目ニャン?」
「あの、はい。セバソティアンは、その、えっと、やっぱり、男の人ですから」
なんだニャン? お嬢様が、なんだか、困ったような顔? で、顔を俯けた? ニャン。それで、何やら、自分の股? の辺り? をじいーっと? 見てるニャン。
チコは、その様子? を見て、すぐに、閃いたニャン。
「おしっこ? ニャン?」
「そんな。そんな事言わないで下さい」
お嬢様の顔が、凄く赤くなったニャン。
「おしっこは違うのかニャン? じゃあ、なんなんだニャン?」
チコは、全然? 分からないから、首を傾げた? ニャン。
「おしっこおしっこ言わないで下さい。恥ずかしいんです」
「恥ずかしい? ニャン? なるほどニャン。あれは、恥ずかしいという気持ち? も、あったんだニャン? 大丈夫ニャン。チコも漏らした事があるニャン。そうだニャン。きっと、セバソも、漏らした事くらいあるんだニャン。また、閃いたニャン。起こすニャン。セバソを起こして、おしっこを漏らした事が、あるかどうか来てみるんだニャン」
お嬢様が、立ち上がると、チコの方に走って来て、チコに抱き着いたんだニャン。
「チコ様。お願いです。着替えを手伝って下さい」
「どうしてニャン? 今、自分で立ってたニャン。それなら自分でできるニャン」
「この服は自分では脱げないんです。背中の紐が解けません」
「服を脱ぐニャン? それなら分かってるニャン。聖が堤防で、雨具を脱いだり着たりしてたニャン」
チコは、お嬢様の背後? に回った? ニャン。
「背中ニャン? あるニャン。紐があるニャン。これを切れば良いニャンね」
チコは、爪で、しゃしゃっと紐を切ってやったニャン。
「チコ様。まだ、駄目です。着替えがないのに、服が脱げてしまったではないですか」
「は?! お嬢様? どうして急に、そんな、あられもない姿に?」
セバソが、急に目を開けたニャン。
「セバソティアンの馬鹿。まだ寝てなさい」
お嬢様が、近くに落ちていた、折れた剣の柄側の方? をセバソに向かって投げて、セバソの頭に思いっ切り? 当たったニャン。
「ぐぶべぁ」
セバソが、大きな声で、呻いて? 気絶? したニャン。
「チコ様。今のうちです。お願いですから、急いで馬車の中から、私の着替えを取って来て下さい」
「え~? ニャン。なんでニャン? 自分で行けば良いニャン」
「チコ様!! は・や・く!!!」
「ひ、ひひいーニャン。何だニャン? この、お嬢様という人間は、なんだか、凄く、迫力がある? ニャン。怖いんだニャン」
チコは、四本足で走って、馬車の中に飛び込んで、その場にあった服を片っ端? から取って来たんだニャン。
「チコ様。ありがとうございます。でぇー!! 違います。これは、セバソティアンの服です。し、しししし、しかも、下着ばっかりじゃないですか!!」
「服なんて、どれがどれだか分からないんだニャン。それじゃ駄目ニャン?」
「駄目です。セバソティアンがまた起きてしまいます。早くして下さい。それで、着替えはここではできませんので、服を取って来たら、私をここから離れた、森の奥に運んで下さい」
「お嬢様は、なんだか、図々しく? なって来たんだニャン」
「この状況です。図々しくもなります。急いで下さい」
危険が危険なんだニャン。お嬢様が、また怒り出したんにゃん。急ぐんだニャン。
「今度は、大丈夫なようですね。じゃあ、その服と一緒に、すいませんが、私を、早く、あっちへ」
服を取って来たら、お嬢様が、そう言って、森の奥の方? を指差した? ニャン。
「あっちニャンね」
「はい」
しょうがない? ので、チコは服とお嬢様を担いで? 走ろうとしたニャン。
「駄目です。こんな、肩から、ぶら下げるみたいな。私は、女の子なんですよ? もっと、気を使って、こう、なんというか、壊れ物を扱うような? そんな感じで大事に、後、ちゃんと、服を私の体にかけて、周りから見えないように隠して下さい」
「もう~ニャン。わがまま? ニャンね」
「チコ様。元はと言えば、全部チコ様の」
「あ~はいはいニャン。チコが全部悪いニャン。あっちニャンね。はいはいニャン。行くニャン行くニャン」
お嬢様に服を巻いて? 両手でお嬢様を抱えて? 二本足で走って、森の奥の方まで行ってから、お嬢様の着替えを手伝った? ニャン。
「チコ様。ありがとうございます」
「ありがとうじゃないニャン。チコはやりたくなかったのに、無理やりやらせてたくせに? ニャン」
「またそんな事を言って。チコ様が私の服を、くどくどくどくど」
「分かったニャン。分かったニャン。そんな事よりも、セバソの方はあのままで良いニャン? また、あの変な犬だか、狼だかが来たら、大変だと思うニャン」
「そうでした。着替えも終わりましたし、急いで戻りましょう」
「じゃあ、また抱っこ? するニャン」
「ありがとうございます。その方が速いのでお願いします」
チコは、お嬢様を抱っこして、走り出したニャン。
「チコ様。止まって。スト〜ップ。ストップです」
「なんだニャン? 今度は何が不満? ニャン?」
「違うんです。ちょっと、戻って下さい」
「戻る? ニャン?」
「はい。あっちの木の所に、見た事のない、何か、細い棒? のような物が、立てかけてあったような、気がしたんです」
「それがどうかしたのかニャン?」
「あれは、自然の物ではなく、人が作った物だと思うんです。誰かが忘れた物だったりしたら、今頃はその誰かが困ってるかも知れません」
「そんなのそのままにしておけば良いニャン。きっと、誰かは戻って来るニャン」
「チコ様。チコ様は、弱い者を助けると仰ってましたよね?」
「仰ってましたのニャン」
「似たような事です。困ってる人も、助けた方が良いんですよ」
「そうなのかニャン?」
「そうなのです。ニャン」
お嬢様が、嬉しそうに笑って、チコの言葉遣い? を真似? したんだニャン。




