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異世界奇譚 釣具に転生!? 早く人間になりたいっ!!   作者: いたたたっ


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10/11

十 異世界の事

 果たして、あの出来事は、夢であったのか? はたまた、現実であったのか? 


 私は、私の罪を裁く為に、謎の空間内に作り上げられた裁判所の中で、神様に出会い、堤防の駐車場で助けた猫と再会し、釣りを通して、対峙した数多の魚と、大量に虐殺した餌の声を聞いた。


 だが。そんな事が現実に起こるのだろうか? あれは、トラックに轢かれた私が、死に至るまでの、極限の時間の中で、妄想した何かではなかったのだろうか? 


 そうなると。


 今、ここでこうして、こんな事をつらつらと考えている私は、何者なのだろうか? 

 

 一度も死んだ事はないので、分からないが、死とはこういう物だという事なのか? 死んでも意識は継続し、永遠の時をただひたすらに、こんなふうに何事かを考えて過ごし続ける。

 

 これを、人は天国と呼んだり、地獄と呼んだりするのかも知れない。 


 それとも。


 私は、実は、まだ、生きていて、今は、病室のベットの上で寝ていて、その内に目が覚めて、また、前と同じ日常が、戻って来るとか? 


 いや。まだ、もう一つ、別の可能性があった。


 神様は言っていた。


 開玉聖よ。お前は、異世界に転生するのじゃ。と。


 それと。


 猫ちゃんの事やクロダイの乙女の事もあった。裁判の途中で、チコと名付けた、あの猫ちゃんは、チコは、たった一匹で、私の為に戦ってくれていた。あの謎の空間まで来てくれていた。そのお陰で、裁判の状況は変わって行き、クロダイの乙女やその仲間のクロダイ達の応援もあって、裁判の最後の方では、原告達も、私の事を許し、応援さえしてくれていたのだ。

 

 あの裁判が、私の夢や妄想だって?


 チコのあの思いが、すべて、嘘?


 クロダイの乙女や、他の魚達、餌達の言葉も?


 ……。


 私に、そこまでの夢を見たり、妄想をする才能はない。


 ここは異世界で、私は転生していて、そこで、新たな体を得て、生きていて、こんなふうに、思考しているという可能性を、信じた方が良さそうだ。


 その方が、皆の気持ちを、嘘にしなくて済むし。


 むにゃむにゃ。う~ん。もう、食べられない~。


 唐突に、私は、そんな言葉を言ったような気になって、ハッと、目を覚ますと、なんだ? 眠っていただけ? なんて事を思いながら、意識を外に、向けてみた。


  ババーン!! 

 

 その瞬間 、私は、息を呑んだ。


 まだ、見た事も聞いた事もない、新世界に来て、その世界の、広大で美しく、人の手によって汚されてはいないような、大自然を見た時に、莫大な資金が投入されて、作られた映画の中などで、流れて来るような、壮大な曲が、私の中に流れ出し、私は、自身の前に広がる、圧倒的な、世界の情景を、体を動かさずに、というか、なぜだか体が動かせないので、その状態で、見られる範囲内で見た。見まくった。


 麗らかな陽射しが、高く生い茂る木々の、緑を湛える、枝々の隙間から、森の作っている生命の領域内に、入り込む際に、作り出した、小さな天使の梯子が、落ち葉や、苔や、茸などが、満ちている大地に、光の恩恵を落としている。


 たくさんの生命の息吹を、ただ、そこにいるだけで、感じられる、豊かな、それでいて、静謐な空間の中に、様々な、生き物達の発する匂いが漂っている。


 ああ。そうか。


 信じるとかじゃない。あの裁判も、チコも、クロダイの乙女も、やっぱり、全部、現実にあった事なんだ。


 ここは、異世界だ。


 私は、異世界に転生しているんだ。


 私は、そんな光景を見て、感じて、その景色の猛烈な説得力に、圧倒されて、何の根拠もないが、勝手に、そう確信した。


 そうなると。


 私は、ここで何をしているのだろうか? というか、私は、何者なのだろうか? 


 こんな、人の気配のまったくしない、太古の森のような場所に、ぽつねんと、一人でいるなんて、普通の、と言っても、それは、あくまでも、私が前にいた、あっちの世界の常識での普通であるが、そんな感覚で考えるなら、今のこの状況は、あまりに、異常な事なのではないのだろうか?


 そんな事を考えていると、私は、閃きを覚えた。


 そうだ。ここは異世界なのだ。そして、私は転生者。となると、これは、あれだろう。


 私だって、ただの釣りキチではない。まあ、自分で自分の事を、釣りキチなんていうのは、イタいという事は、自覚しているのだが、それは事実なのだからしょうがない。そんな私でも、釣り以外の事だって、それなりに知ってはいるのだ。


 そう。異世界、それに、転生とくれば、あれですぞ。


 私の中では、定番の、ステータスオープン!!


 私が読んだり見たり聞いたりした異世界転生モノでは、どの作品にもそれがあった。ゲームなどのような世界の中ではなくても、自分のステータスが、小さなウィンドウのような物で空中に表示されるという、謎の超便利機能があるはずなのだ。


 良し。では、高らかに、宣言しようではないか。


 ステータスオープン!!


 うおぅ。こいつは、かなりの高感度だぜぇ。一瞬で出て来たぜー!


 何もなかった場所に、何の音もなく、私の言葉に反応して、ふっと、唐突に、瞬時にして、当たり前のように、出現したウィンドウ!!


 けれど。ちっと待て。本当に出ちまうとは。


 これは、ひょっとすると、凄い事なのでは? 私の知識の中にあるそっち系の情報によると、こんな物を出せるのは、物語の主人公級の人物達だけだ。という事は、あれかい? チートスキル持ちかい? これは、うひょひょひょのひょなのかい? ひょっとするとひょっとするのかい? 


 私は、そんなふうな事を考えつつ、ウィンドウをしげしげと見た。


 薄っすらと黒みがかった半透明横長で、縁には、周囲とはっきりと区別するかのように白い線が引かれていて、透明度は結構高く、ウィンドウの向こう側にある、大きな木のゴワゴワとしている感じの幹が透けて見ていて、そのウィンドウの中には、確固とした文明の存在を感じさせるような、魔法なのか、はたまた、機械仕掛けなのか、何かしらの世界の力によって表示されている、文字が躍っている。


 文字も白色だが、縁の部分の線よりも明るい白色で、表示されていて、かなり見やすくなっていて、私は、一通り、ウィンドウの出現に感動したり、感心したりしてから、縦三十センチ横五十センチくらいの大きさのウィンドウの中に表示されている内容に、意識を集中させて行く。


 ウィンドウ内は縁と同じ白色の線で、いくつかの項目ごとに区切られていて、その項目の頭の所に何の項目かが、種族や、職業、ヒットポイント、マジックポイント、スキル、猫ちゃんポイント、クロダイポイント、釣りポイント、などのように、明記されていた。


 何やら、バラエティ豊かな、各項目の事も、非常に気なるのだが、今は、それよりも、優先順位が高い物がある。


 今、一番に知りたいのは、スキルの事、うーむ。それは、やっぱりやめよう。それは最後の楽しみにとっておこう。私は何者か? 私の存在とはなんなのか? という事だな。


 いやいやいや。待て待て待て。これはこれで、とても重要な事でもある。ここは、勢いに任せて行ってはいけない。一旦落ち着いてから、見てみる事にしよう。私は、そう思いつつ、期待に胸を膨らませて、妄想し始める。


 何が良いかなぁ。魔法は使えるとして、後は、何か、武器も扱える系かな~。やっぱり、強いのは大事だよな。魔法騎士とか~? 


 こんな凄い森が広がる世界だ。きっと、強大な魔物とか、野生生物とかがいるに決まっているからな。


 そうなって来ると、強いというのは、必須条件だもんな。武器は、何だろうな〜。そうだな。飛び道具、銃とか? そうなると、魔法ガンスリンガーか? いや。銃がない可能性があるぞ。だいたい、時代設定は、中世? とかで、剣と魔法の世界だろうしな。そうなると、あれだな。やっぱ剣だな。盾はいらないかな? 盾としても使えるような、大きな剣……。どうせなら、某〇ッツが持っていた、ドラゴン〇しみたいなのが格好良いよな。


 それから、他には……。


  他には何かあったっけ? 異世界モノで、チートスキルで、主人公級の立ち位置で、必要な物……。 


 それなりには、流行り物を色々見てたはずなんだけど、いざこうなってみると、記憶が以外と曖昧で何もでて来ない。


 かわいい女の子とか、獣人とか何かしらの種族と出会って、って、それはストーリー展開だもんな。自分の存在とかとは関係ないか。


 うおおおおん。もう、いいや。我慢できん。種族とか、職業とか、あったもんね。そこから、改めて、じっくりと、見ちゃおう。


 ……。


 ……。

 

 は? 


 はい? 


 種族、釣具?


 職業、た、たたたた、竹竿? 


 し、仕掛け? なんだ、この項目は? さっきは、気が付いていなかったのかな?

 

 ハリス直結道糸?


 激安ナイロン一号?


 玉ウキ、六号?


 割ビシ中?


 針? 金袖六号?


 ちょっと待てって。なんだよ、これ。 


 これ、私が、小学生の頃に自前で揃えて、使っていた仕掛けのような構成じゃねえか。

 

 駄目だ。終わっているわ。


 竹竿と仕掛けが、私?


 いくなんでも、これは酷くない? 皆、私の事、応援してくれてたじゃん。神様だって、感動したとか言ってなかった? フジツボとか、フグとかだって、なんか叫んでたじゃん。


 それに、竹竿って。せめてリールが付いてる竿にしろよっ。


 そもそも、竹竿なんて使った事、一度もないんだけど?


 ……。


 あ。あった。釣り堀だ。でも、あれは、あれで、楽しかったかも。


 父方の実家のある山梨に旅行した時に行った、マスの釣り堀は面白かった。新しいマスが入れられると小学生の私でも爆釣だったし。


 おっと、これも小学生の時だけど、当時住んでいた自宅の、そこそこ、近所にあった、鯉の釣り堀も、良かったな。でっかい鯉が掛かると、糸が鳴ってなあ。竿もしなりまくって。慣れて来ると、全身を竿と一体化させたみたいに使って、釣っていたんだよな。


 うんうん。ああいう釣りを久し振りにやるのも悪くはないか。そうなると、竹竿にこの仕掛けってもの、大物は難しいけど、あり、かもな。


 てぇ!!! そうじゃないだろ!!! これぇぇ! 釣具になってるじゃねえか!!!!!!

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