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食欲を持て余す

横河美波



違和感。空気…周りの匂いが変わった?


『いかんなママ、みんなと分断されよった』


ササラの声に緊張が感じる。


徐々に治っていく視界、そして絶句する。


匂いが違うはずだ。さっきまで夜のビル街にいたのに私達は眩しい程の真昼の荒野の中に居た。


そりゃ目も眩む。


周囲を見回すけど、ここがどこなのか判らない。


子供達に呼びかけても応答が無くて、召喚もできないってことは…まさか、また異世界??


手ノ塚さんの例があるからありえなくもないけど…ってかタイミングよ。


イライラしていても仕方ない、深呼吸。


うん、空気は美味しい。


『面妖じゃの…』


私の頭にひっついているササラは付いて来れたのか…


『多分異世界だよね』


『恐らく…幻術の類いでは無さそうじゃ』


『悪いけど一緒に警戒してくれる?』


『勿論じゃ』


見える範囲で得られるのは大小色々な高さの岩山もありつつ、背の低い草が点在する平野と地平線が見える。ある意味懐かしい異世界特有の意味も無く広い景色。


あ…念の為に根をはっておかないと…何か出た時に記録が読めないと困る…


その時、全身の毛がぞわぞわっと震えた。


ガチガチに仕上げてきた勇者と睨み合ってる時と同じ、ひしひしと感じる強い殺意。


目に見える範囲にはいない…けど、どこからか近づいてくる。


まずい…根を使って大地の記録を読むには、ある程度広がってからじゃないと読み取れない。


時間は…無さそうだ。


面倒だなぁ…試行錯誤しないと駄目かぁ…


『ママ…』


ササラが息を呑むのを感じる。


『判ってる…来た』


澄み切った青空と地平線の間から何か巨大な物が飛んできている。


毒々しい紫色の飛行機雲を作りながら。


『…?』


複眼で姿を捉えても、灰色の何かの塊にしか見えない。


段々近づいてきてるけど、全然それが何か判らない。


明らかなのは私を殺しに来ていること。


私から少し離れた場所にそれは着地したけど…私は目をそむけたくなるのを堪えた。


…ぐろい。


灰色だったのは腐肉。泥みたいな泡立って脈動している肉がぐにぐに蠢いている。地面に近い方に死んだ魚の目をしたドラゴンの頭、手足や翼もそこかしこから突き出ているて…まるで酸で溶けかけのドラゴンを混ぜて、こねてお団子にしたみたい。


肉が泡だって弾けて、そこから紫色の瘴気が出ている。


そして肉団子の隠し味みたいにその真ん中にムキムキの男の人の胸から上がはみ出ていて


「殺してくれ…殺してくれ…」


虚ろな目をしてかすれた呻き声をあげていた。


口の端からはヨダレと一緒に紫色の瘴気がもくもく…


きしょ…何?この人、異世界人?これがこの世界の普通の人?それとも変な何かに取り込まれた人パターン?


攻撃しても良いものか…と、悩んでいた時だった。


「楽になりたいぃ!!」


唯一自由になっている男の右腕が輝いたかと思うと自分の胸に押し付けた。


その途端、魔力がうねって爆発した。光の線が男の人と肉の塊を貫通。それでも勢いは止まず、光が地面を切りながら進み、遠くの岩山を真っ二つにした。


「えぇ…」


男の胸、肉の塊に大きな風穴があいている。


しかしそれはすぐにじゅくじゅくと、上から溶けた肉が落ちてきてその穴を塞いで…元に戻ってしまった。


「うぁぁぁ…死にたい…死ねない…痛い…苦しい…」


死にたい?


あ、まさか自殺しようとして撃ったけど死ねなかったヤツ?


うわー…えげつない。回復力が凄いんだ。


これ燃やしても端とか中から復活してくやつじゃない?


でも別にこれ、私に殺意向ける必要無くない?


なんでまだギンギンにぶつけられてるんだ…


突然肉の塊がぐるっと回転。


死んだ魚の目をしたドラゴンの頭がこっちを向いた。


『食い物』


伝わってくる心の声。


『我が身に食い込む憎き勇者を滅ぼす為の贄となれ!!』


あっ、殺意こっちからか!


ドラゴンの顔の周りに紫色の瘴気が集まる。


なかなか威力が凄そうな気がする!!


後ろに回って雷でも叩き込んでやろうと思ったその時。


「や…めろ…」


男の右腕からまたさっきの光線が放たれて、今度はドラゴンの口をざっくり切り裂いた。


「!!!」


ドラゴンの悲鳴の咆哮とともに、集めた瘴気が霧散した。


うわ、格好良い…こんな姿になっても私を守ろうとしてくれるんだ…


どうにかして離してやれたらなぁ…と思っていたら、また驚く事が起きた。


「えっ…」


男の人とドラゴンの肉の塊が、テレビの電源を落とすみたいに気配も何もかもが、ぱっと消えたのだ。


『…ササラ…さっきのどこ行ったか判る?』


『何も判らぬ…』


何?この世界?あれと戦う流れなの?どうなの?


私が行った世界も最初は神様が教えてくれたのに現れる気配が…


「遅くなってごめん」


今度はテレビを点けたみたいに、1人の男の人が現れた。


外国の貴族の男性が着てるようなスーツにマント…ドラキュラみたいな格好している。


手や足、頭の部分には紫色の炎が燃えている。


「いきなりいなくなってびっくりしたよ。怪我とかは無い?」


ん?あれ?この声…あれ??手ノ塚さん?


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