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数で来るなら数で攻めるのさ

横河美波



私はぶち開けたビル壁の穴から外に飛び出した。


すぐに全てのビルを見下ろす高さまで辿り着く。


町の方々からは煙が上がっていて、倒壊している建物もある。


停電している箇所もあるのか、町並みの所々が黒くなっている。


逃げる人達の悲鳴がここまで届いていた。


何人死んだとか怪我をしたとか、そんなのはどうでも良い。


今は…


『ママ、ここから四時の方向…』


『四時??』


『えーと、右後ろ。アルバイトの会社の看板の下に一人いるよ』


『おっけー!!』


私は身を翻して右後ろに向かった。



彼は居た。


乗り捨てられた車、瓦礫だらけの路上。傾いた青看板の上に黒装束の忍者が私を見上げている。


何度見ても頭巾と布マスクなあの忍者だ。


普通の人よりも体格は良いけど、明らかに忍者。


SFの人じゃなかったっけ?


私は記録を読んだ。


斎藤博樹


コンパルド星系グロン星のカオスサイド


忍者窃盗団シャドーフット頭領


ドニー博士が開発し、世界に散らばっている5つの動力のうち「金の動力」を体内に備えていて、周囲の金属を意のままに操る事が出来る。


ビルの鉄骨からチェーンソーの付いた手裏剣やクナイを発射したり、その身を守る鎧、龍を作って(ゴーレムかな?)戦わせたり用途は色々。


必殺技は、朧残月。なまくらの手裏剣の中によく切れる手裏剣を混ぜて発射する。


都市1つ分の鉄を使って巨大な龍を作り、英雄の…生身の肉体のサムライを押し潰して勝利したらしい。


確かにSF界隈のあの時に居た人。


確認終了。


恩を仇で返しやがった罪は激しく重い。


ぎったんばったんに食い散らかしてやる。



私は一声吼えると両手に炎の力、嘴に雷の力を練り上げた。


暴炎の魔法、雷鳴の魔法を同時に発動させる。両手と嘴から炎の渦と雷が吹き出てくる。


感覚でいうと、庭にホースで水をまくような。


そのどれもが山1つ簡単に吹き飛ばせる威力があるんだ、当たったビルが簡単に崩れていって爽快。


ビルってこんなに脆いんだね。


身構える斎藤。忍者みたいに指で変な形を作ると…私の周囲のビルから、自動車のタイヤ位の手裏剣が幾つも飛びだしてきた。


避ける必要もない。全部只の鉄筋を変化させた鉄製の手裏剣だ。


私の体にぶち当たって砕けるけど、大きめのアブが当たった程度にしか感じない。勢いだけ。


意識がそっちに言ってる間、斎藤は炎と雷をかわして姿を消していた。


さすが忍者だ。


だけど、私を狙ってる気配はある。


『ママ、茶色のビルの鉄筋の中を上に移動してる』


すかさずクィスが斎藤の位置を教えてくれた。


なるほど。


再び周囲のビルから手裏剣が飛んでくる。


『茶色のビルから出てきた手裏剣の中にいるよ』


手裏剣に隠れてるのか…軌道は私に向かっていない。


方々から飛んできた手裏剣が私に当たって砕け、そのうちの幾つかが私を反れていって…


『ママ、上じゃ』


『ありがとう!』


見上げなくても複眼で把握している。


手裏剣の中から斎藤が出てきて、刀をかかげて飛びかかってきた。


刀にしては少し短めの黒い刃。


左手をカマキリのカマに変え、私はその刀を受けた。


ガリガリガリ!と刃を受けたにしては変な振動と金属音が耳に入って、カマが少し欠けた。


ノコギリみたい?


『ママのカマに傷をつけるとは…』


『オリハルコンに比べると柔らかいよ』


クワガタの角へ変えた右手を斎藤の胴体にぶち込んだ。


その途端、斎藤はさらさらの黒い砂になって崩れていく。


『ママ、砂鉄になって逃げそう』


『は?逃げんなし』


翼の一対で風の魔力を練り上げて、砂が拡散する前に包み込んでやった。


『ママ、もう1人来た。近江だよ』


誰だっけ。


一瞬の思考の隙間を抜いて、素早い動きの黒いぞわぞわした雲が風で閉じ込めた斎藤の体を攫っていく。


『ナノマシンのやつ。右側のビルの上にいる。』


あー、あの中身がカカシみたいな女か。


視線をずらすと、ビルの屋上に膝を付く忍者とゴテゴテした金属の水着みたいな物を着た女がいた。


その女が両手を掲げる。するとその両手から黒いぞわぞわ……ナノマシンが滝のように放出されていく。


やがてそれは私と連中の間に集まって…手ノ塚さんのマンション位の高さの壁になりつつある。


数か質量で攻めるつもり?


よくわかんないけど、甘いんじゃない。


『おいで〜!!みんな〜!!』


私が一声吠えると…さっきまでよく見えていた月が陰った。


ナノマシンだとか何とかメタルの武器だとか何だかチウムの体だか判らないけど、金属でしょ?


女が作っているナノマシンの壁より遥かに大きい赤黒い雲がドームになって私を中心に周囲をとりまいた。


産んでおいたよ、虫の卵で。金属を食べるのが大好きなハエの子供達を。


子供達の目を通してナノマシンの壁越しの2人を見る。


きょろきょろして明らかに慌ててる、マジ可愛い。


女の手から何も出てないってことは、もう打ち止めみたいだし。


ナノマシンの壁が動く。2人を守るように形を変えて覆い始めた。


さっきの鉄の中を移動するやつで逃げられたら面倒だ。


『みんな〜!私が食べるから殺さない程度に食べちゃって〜!』


何万匹のハエの羽音、チェーンソーでも耳元で暴れてるような音をたてて…小さいみんながSF界隈の2人に雪崩込む…のと同時に突然私とSF界隈との間に白い閃光が走った。


巨大なカメラのフラッシュのような…しまった…目が眩む。


慌てて風を纏って守りを固めていたら…


『あ…』


ちかちかした白い視界の中、クィスの声が不意に途切れた。


ん?

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