S7エース
お前ふざけんなよ、マジで。としか言えないな。
鸚鵡野郎、口がきけるからまあま知能が高い魔物なんだろうとは思ったけど。
袖の羽飾りについた糸をぺちぺち取りながらぶつぶつ文句を言ってるし。
「お前なんか焼き鳥にしてやれるんだからな、」
俺がむすっとして言ってやると、
「は?イケメンだと思ったけど、なんかその言い草気に食わないわね。ああ、もうほんとべたべた。
もう、いいわ、後でお風呂で取るしか。」
黄緑色の髪のなかなかの美大夫だな。
「ふうん。そういうの出来るとか便利なんだな。人型になれるとか。」
俺が言うと、
「誰でもできるわけじゃないわよ。」
とか言いながら、糸を指で外していく。
こうしてみると、細かい動作が出来る分人型に変身できる利点は多々あるようだ。誰にでもできるわけではないそうだが。
「あなた、可愛いのね。」
「あ?キモイんだよ。」
俺が言うと、
「あんたに言ってんじゃないわよ。そこの蛇娘に言ってんの。蛇の時もまあま綺麗だったけど、人型になったら美少女じゃない。予想の上行く可愛さだわ。」
「そんなことどうでもいい。それより、お前どこから来た?ここの洞窟に住んでるのか。この先どうなるかとか洞窟から出る方法とか知ってるのか教えてくれ。」
アミがむすっとした顔をして俺が気になっていたことをしっかりと聞いてくれた。
ああ、それな。こいついきなり湧いて出てきたし、どっから来たのかも気になるし、そもそのこの洞窟に入って初めて話が出来る意思の疎通が出来る生命体だもんな。
訊きたいことが山ほどある。
素直に全部教えてくれるとは限らないが、一応聞いておくほうがいい。更に本当のことを話すかも分からないし、こいつがソロプレーヤーとは限らないから、仲間がいて助けに来るという事も考えておかなくてはならない。
にしても今は俺たちのほうが立場的に有利だ。食べてしまうこともできるが、腹はいっぱいだし、情報が欲しい。
「可愛いけど、あなた痴女なの?なんで全裸なのよ。鱗で服とか作れるでしょ?」
アミは「え?」って言って
自分の体を見て
「そうなの?」
「そうよ。ちょっと考えればできるはずよ。」
そう言われてなんか自分の体を眺めて
それから目をつぶって、なんか考えたらしく、そしたら
なんか服とやらを錬成出来たらしい。
綺麗なオーロラ色のドレスみたいなのを身にまとっている。
「ま、そんなとこかしらね。悪くないわ。それくらいしてもらわないと魔王様の前に連れていけないし、裸じゃねえ。失礼よね、なんか。裸が喜ばれるシュチュエーションもあるかも知れないけど、そういうのにしたって、脱がすのが良かったりするしいきなり全裸って萌えないわよね。なんか品がない感じ。蛇娘ちゃん裸族の痴女なのかもしれないけど、教えてあげたほうがいいわよね。後で教えてなかったってアタシが怒られちゃうかもしれないし、アタシ優しいから、教えてあげたの。感謝しなさい。」
っていきなり
こいつ、いきなりなんかさりげなく凄いこといってないか。
オイオイ、魔王とか言ったよな。今。
「魔王って言ったか?どういう事だ。」
俺が言うと、ふふんとした態度で、鸚鵡野郎が得意げに言ってのけた。
「アタシ、魔王様の命であんたたちを迎えに来たのよ。それにちょっと、戦力の確認もしたかったし、アタシのおかげでそこの蛇娘もレベルアップしたじゃない?どうせ、話とか念話くらいしか出来なかったんじゃないの?念話はMP消費するから効率悪いの。それに人型になれると色々便利なのよ、そのくらいのスキルが無いと魔王様にお会いさせるわけにはいかないし、アタシじゃないと出来ない役目だったわね。」
得意げに言ってるけど、こいつ俺たちに負けたって事すっかり忘れてないか?
まあ、勝ち負けとか関係なかったって事なのか。アミにスキルを与えるためにわざと負けたって事か?
分からないけど、こいつ焼き鳥になってたかもしれないって事忘れてるような気がするんだが。
「お前が言ってる魔王がどうとかいう話とか本当の事言ってるって証拠あるのかよ。負けて焼き鳥にされるのが嫌だから適当にほざいてるだけってことじゃねえよな。」
俺は思った通りのことを言っただけなのだが。
「なんですって?魔王様の使者のアタシにそんな口きくとか、不敬罪だからね。いきなり消滅させられても知らないわよ。口をつつしみなさい。」
魔王の名前を出した途端に急に強気になる鸚鵡野郎。
何となく、確かに何かあるような感じはするが。
「魔王ってのが何なのかそれも俺わからねえし、そう言われてもなあ。」
「分からないなら教えてあげるけど、あんたたちをこの世界に召喚したのが魔王様だってことくらいは知っておいたほうがいいわね。他の世界からこうして召喚することができるくらいには凄いお方なのよ。」
って、初耳だったわ。俺がこの世界、しかも洞窟に召喚されたとか言うハードコースな目に合わせた張本人がその魔王様とやらなのか。
迷惑だわ。俺は元の世界に帰りたいわ。魔王様とやらに会ったら、まず帰りたいですって言うわ。
でも何となく、その召喚とやらは片道切符なのではないだろうか。今まで読んだアニメとかラノベとかゲームとかだと、召喚は出来ても戻す魔法は知りませんがテンプレだったよなあ、と薄っすらの嫌な気持ちを持ったのだった。
希望というより何となく絶望が待ち受けているようなそんな気持ちがした。
美少女になったアミには言わなかったが。
アミが脱走してきた部屋に戻りたいのかは疑問だったし、蛇のほうがいいのか、人型に変身出来てうれしいのかとかはわからなかったというのもあるし、今第三者の鸚鵡野郎がいるところで、魔王側に属しているものがいるところでその話をするのは適切ではないなと、単純な俺様の頭でも思いついたからだ。
いきなり消滅とかいう物騒な言葉も出てきたことだし。
魔王とやらに会ってみたいというちょっとわくわくした気持ちもあったが。
「それじゃ、行くわよ。アタシに付いてきなさい。」
偉そうに言うと、また鸚鵡の姿に変身して、ふわりと飛んだ。
アミはどうするのかと思ったが、人型のまま歩いている。
「歩くって感じ久しぶりな気がするな。」
アミがポツリと言った。
「え?」
俺がその言葉に反応すると、
「いや、何となくそう思っただけだ。」
ふうん、ま、別にいいか。いろいろあるんだろう。
そんなこんなで、鸚鵡野郎に付いていくと
「エイヤ!」
っと、鸚鵡野郎が岩で行き止まりになったところに魔法を当てたらしく、
岩が消滅して岩の中に空間が現れた。
空間の中に魔法陣のようなものが書いてある。
良くアニメなんかで見る魔法陣がそこにはあった。
岩の魔法で隠してあったらしい。
「あ、これ、転移魔法陣って言うの。あんたたちは初めてじゃないかと思って親切に教えてあげてるのよ。」
「今から魔王城にこれで行くから。」
「あら自己紹介してなかったわ。アタシ、エース。パロッチャットよ。言っとくけど、パロッチャットは鸚鵡型の最上位種だから。よろしくね。」
「俺はシュン。」
「アミだ。よろしく。」
「シュンにアミね。シュンの事は聞いてたけど、アミちゃんに名前があるのは知らなかったわ。ネームドなのね、どうりで進化が早いはずだと思ったわ。
アミちゃんはシュンの使い魔なのかしら。」
「アミは別に使い魔とかじゃないと思う。契約とかそういうのもしてないし。そういうの俺たちよくわからねえけど。」
「あらそう。別にアンタたちがどういう関係でもアタシには関係ないし、どうでもいいのよね。
ごめんなさいい。一応聞いただけよ。」
「それじゃ行くわよ。これに乗って」
後で思い返すと、あのときよく知りもしない鸚鵡野郎のエースに付いて魔法陣に載ったなとは思う、どこに繋がっているのかも分からないのに。
でも、そろそろ暗い洞窟に飽きてきて、自力で脱出出来るのかも分からないし、魔法陣とやらで脱出出来るのならそれでいいと思っていた。
それくらい洞窟のダンジョンの生活がきつくなってきていたからだと思う。
まず、食事が倒した魔物、当然塩とか胡椒とか、醬油とか、調味料などないから、魔物の味そのものである。
当然まずい。
焼こうが生だろうが不味い。アミは蛇だから丸飲みにしてるし、美味いとか不味いとか感じているのがは分からなかったが、俺にはきつかった。もう安い牛丼屋の最低の並牛丼でいいから食べたい。味がするだけでいい。神戸牛A5とかのステーキが食いたいとか贅沢は言わない。牛丼屋の牛丼でいいから、味がするものが食いたい。ラーメン食いたい。とか思ったんだよなあ。
暗い洞窟の中で不味い飯。それも自分たちで狩らなくては食えない。生きるか死ぬかの生活。寝るのも交代で見張りをしなければいけなかった。
なんか、きつかったな。これから先が楽になるのかどうかは分からないが、とにかく、このダンジョンに飽きてきていたというのもある。
ここでエースに会えたのは僥倖だったなと思った。
まあ、魔王とやらが取り計らったことのようなのだが。
だから魔法陣を踏むときはちょっとホッとしたような、少しだけ不安なような半々の気持ちだった。
アミも同じ気持ちなのかどうかは分からないし、ここが気に入って行きたくないなら行かなくてもいいと言っておいたほうがいいだろう。
俺がアミの顔を見ると俺の気持ちに気付いたらしく、
「僕も行くよ。ここに一人で残っても僕だけじゃ戦えないし寝る時も不安だ。僕はシュンといたい。一緒に行く。」
「当り前よ。二人とも連れてかなくちゃ魔王様にアタシが怒られちゃうもの。さあさ、二人とも行くわよ。乗って。」
そして、三人共魔法陣に乗った。




