22まりんさん がんばる
話を聞くと、やはり異世界召喚されて、取り敢えず酒場で働いていて、元の世界で県庁で受付のパートをしていた経験もあることをアピールして、冒険者ギルドの受付の仕事に雇われて働いていたとのこと。
京也の異世界召喚を知ったのは、前回の討伐軍の帰還凱旋パレードを見て、勇者一行に知った顔を発見、びっくりしたし、懐かしいし、それで京也の部隊に入れて欲しいのとの事だった。
命懸けなんだけど。それに私も京也も魔法学校で、魔術なり体術なりの訓練を一通り受けている。スキルもレベルも上がっている。みたところ、まりんさんのステータスは一応魔導士だが、スキルも取得していないし、レベル上げもされていない。そりゃ、酒場のウエイトレスとギルドの受付だけしかしてなかったら、チートでレベルが上がる異世界出身者といってもレベルが勝手にあがるわけではないのだ。
「命懸けだし、そのレベルで討伐軍参加は危険だと思う。危ないからやめた方がいいと思うんだけど。」
私は一目見てそう判断したし、判断したからそう言った。
「ギルドの仕事はあるなら、平和になるまでギルドの仕事した方がいいし、元の世界に帰れる方法がないか、探しているから待っていて欲しい。」
「何?その上から目線。」
いきなりお冠である。
「自分だけ京也と組んでさぞかり気分いいんでしょうね。聖女さまとやらなんでしょ。あなた。
だからって自分だけずるいわ。私だって魔導士だし、役に立てると思うんだけど。」
「危ないし、京也もあなたが危ないことに首突っ込むの喜ばないと思うけど。参加するのやめておいた方がいいと思う。」
私は本当に危険なことに首突っ込まない方がいいだろうなと思って言った。
だけど、彼女に同担意識に火を付けてしまったらしく、ああでもないこうでもないことを言い出して、『とにかく京也の部隊に入れて欲しいの、成子さんだけずるいわ。』と。
ついにわあわあと泣き喚く騒ぎで、なんか私が意地悪してるみたいな感じになってしまった。
バタバタしていると、騒ぎを聞きつけたのかたまたまなのか、京也と大賢者さま蘭之丈がやってきた。
ドアをコンコンと叩き、
「入っていいかな?」
と声がして、
え?京也までいるの?
って、当たり前か。聖女として参戦する私よりも勇者京也の意見のほうが重要だろうし、ここに呼ばれていても全然不思議ではないのだ。
でも、なんか、まりんさんがいるところに京也が来るのがもの凄く嫌な感じがあった。私も同担拒否が発動したのだろうか。いや、やはりいつも、まりんさんがいるとなんとなくついていないというパターンがもう定着しているので、まりんさん忌避している状態なのだ。決して同担拒否ではない、と思う。
「ああ、京也か、それに蘭之丈殿も。どうぞ、入って。今ちょっと取り込み中で、困っていて・・・」
「二人の意見も訊いてみたいと思っていたからちょうどいい。」
とユーリが答える暇もなく、
「わーん、京也あ。」
って、抱きつく?いきなり抱きつく?
私は思わすムッとしてしまった。
「私だけ仲間に入れてもらえないなんて酷くないです?
成子さん、私は討伐軍に入ってはダメって。京也さんのお役に立ちたいのは私も同じなのに、意地悪するんですよお。」
わーんわーん。さめざめ。
と泣く。
ウザイ。
なんで抱きついて泣いてるの?そんでなんで私が悪者になってるわけ?
え?なんなの?この人。どこまで私の邪魔するのよ。っていうかなんで召喚されてるのお?
知らなかったよお。
こんな人いると知ってたら関わり合いになりたくないから会わなかったのに、もう、この人出てくるとろくな事ないんだから。もう嫌なんだってば。
正直一緒の部隊で戦いたくない。魔力があるとは言え、まりんさんがいるとろくな事ないジンクスが発動しそうで、嫌なのだ。なんか魔力すら吸い取られそうな気がする。まりんさんといると私の運がスポンジで吸い取られるように、まりんさんに吸い取られてしまうのだ。
京也は固まって無表情だが、何を思っているのが分からないけど、無下にもできないよなあ。
ファンなのは知ってるんだろうし、ああ、嫌だな同担のクレイジーBBA。
いっけなーい。私聖女さまだったわ。BBAなんてお下品な言葉を思うと魔力が減るかも知れない。桑原桑原。
同担マダムくらいに抑えておかないと。はあ、嫌な予感しかしないし、今この瞬間京也何を思ってるんだろう。また自分が引き寄せて召喚してしまったと自責の念に苛まれているとか?勝手についてきちゃったんじゃないのお?って思うけど、多分そうは思わないだろうな。優しいから。はあ、私だって抱きついたりしてないのに。もう、もうさすが3人も生んでいる人は違う。恥じらいとかないし、人生の戦い方の熟練度が違う、はあ、なんか負けそうな気がする。こんなところまできて、まりんさんの突撃とは。なんでこんなに厳しいものなの、人生って。
「まあ、まあ、落ち着いて。」
蘭之丈が、まりんさんの頭を撫でてあげて、いい子いい子よしよしって。
はあ、もうどうなってるの、これ。
まりんさんのごね勝ちじゃん。私だって蘭之丈にいい子いい子されたいけど。
してもらったことないし。もう。役得じゃん。
「話は聞いたよ。」
蘭之丈が口を開いた。
「いいんじゃない?参加させても。兵力は多い方がいいんだし。魔導士軍として一緒に討伐軍にいれてみれば?京也もナリコも過剰兵力くらいなんだし、一人くらいちょっと弱いの入れても大丈夫んなんじゃないの?」
大賢者さまの言葉は絶対である。
大賢者さまの考え以上にこの国で正しいことをいう人はいないという認識である。国王の言葉を除いては。国王の言葉はすべてに優先するが国王も大賢者の意見は尊重する。
よって、この場では大賢者の言葉がすべてに優先する。個人の主観なんてもってのほかだ。
私の嫌な予感なんて、いくら聖女だからといっても、京也関係ではやきもちでしょとかとられかねないし、それに正直そういう側面も大ありだったので、口を挟むことは出来なかった。
嫌だなあと強く思ったけど。
終わった。
大賢者さまの一言で討伐軍に、まりんさんが加わることになった。




