23まりんさんもいっしょ
というわけで、急遽討伐軍に、まりんさんも加わることになった。
嫌な予感しかしない。
というか、魔導士として参加ということだが、火魔法一つまともに打てないし、もう少し訓練とか積んでからのほうが良かったのではないかと私は思うんだが、それは素人考えなのだそうで、戦いの中でレベルアップがはかれるからそのほうが手っ取り早いのだと、大賢者さまのお話だった。そういわれれば、確かにポ〇モンとかのレベル上げにしても、ド〇クエのレベル上げにしてもダンジョンとか攻略した方が早いし、ポ〇モンにいたってはパーティーに加えているだけで戦わなくてもレベル上げが自動でできて、戦わないものも死にさえしなければレベルは上がっていた。死にさえしなければ。
って結局戦力にならないうえに死にさえしなければが、ふと頭をよぎるので、守ってあげなくてはいけないって言うことで、正直足手まといなんだよなあ。でも、大賢者さまのお墨付きでパーティーに入れてるし、まあ、同郷のよしみということもあり、いまいち言葉も分かっているか不明なこともあり、私や京也や大賢者の蘭之丈くんはステータスやスキルで言語も勝手に翻訳されているけど、まりんさんもそうかとか分からなかったし、「知らない人ばかりだと怖ーい」って大賢者に訴えるように言うし、ユーリも仕方なく、同意して、「京也と一緒じゃなきゃ嫌、どうして成子さんだけ京也と一緒なわけ」という納得のわがままに応じて、しっかりと勇者京也の部隊に入れてもらっての参加である。
京也がどう思っているのかがいまいち私には分からなかった。嬉しい様子でも迷惑な様子でもないのだ。
そりゃ、いちいちファンの動向とか気にしていなかっただろうし、どうみてもしつこい系の思いつめ本気愛系リアコのヤバさが滲み出て目がハートまりんさんが加わったことに何も感じていないとは思えないんだが彼はポーカーファイスだった。
やだなと思ってるのは私だけか。はあ、別に悪い人ではないんだけど、ガチガチの同担拒否ではないんだけど、まりんさんは友好的なのだ。一応だけど。嫌味とか言ったり目線バチバチだが、でも同じファンなんだし一緒に仲良く応援しましょってスタンスなのだ。だから、あの気持ち悪いブログを、読んでねとか言えるわけだし。まりんさんはなんか思いっきりリアコ丸出し本気愛のブログを書いていてリアコ仲間に好評でブログ登録者が結構いて気持ちを代弁してくれてありがとうとかコメントをもらったりしているブロガーなのだ。ちなみにリアコとはリアル恋の略所と私は認識している。違ってたらごめんなさいなのであしからずなのである。マダム仲間にとても人気の。そして、私は初めて会った時に「私ブログ書いてるからお気に入り登録してね。〈神崎京也に恋して〉って名前のブログだから検索してね」にっこりってされたので後で検索して読んでみたら、なんかえ?これ3人も社会人のお子さんいて書きます?って内容の熱く恋心を綴ったものだったので、悪いけどそっとページを閉じたって経緯がある。詳しく思い出すのも気持ち悪いのであまりここでも触れたくないくらいの黒歴史である。関わりたくない人ナンバーワンなのだ。
「成子さん、よろしくね。」にっこり笑って一緒に出陣ときたものだった。
どう考えても勇者隊なんて危ないに決まってるんだけど、それゆえに強い人が配置されているからかえって危なくないともいえる。だから大賢者もこの舞台に配属するように言ったんだろう。まりんさんは京也がいるからにこにこである。
ヤバい、近い。とかぶつぶつ言ってるのが聞こえてきた。そりゃ、思いっきり自分から隣の位置陣取ってるんだから近いでしょ。
と思いながら、部隊の様子を見ていると、なんか、まりんさんは人気者だった。意外にも知り合いが多いのだ。まりんさんが最初に召喚されてこの世界に降り立った場所が酒場、居酒屋というかビアホールのようなところをイメージしてもらえるといいのだが、元世界のキリンシティみたいなところで、冒険者ギルドの近くにあり、大体仕事を終えた冒険者がもらったゴールドを片手に疲れを癒しお腹を満たすのに寄っていく場所である。名前はゴールドラッシュという豪勢なものだったが、メニューもお値段も庶民的な店だった。そこで働いていた時期があるせいで、どうも、討伐に参加している冒険者さんたちに顔が知られていて人気なのだ。更に冒険者ギルドの受付に転職したせいもあり、冒険者の人たちに顔が割れている。若いジョー君などは田舎から上京してきて冒険者を目指して頑張っていたのだが、やはり寂しくボームシックになることも多かったらしくそんなときに、お袋さんのように優しいまりんさんに大分助けられたらしく、まりんさん自体はお袋キャラってわけでもないし、そういうのは嫌みたいなんだが、元世界に息子さん一人、娘さん二人全員社会人を育ててきた実際にお母さんをやってきている人なので、安心感が違うらしい。今回まりんさんもいると聞いて討伐に参加したいと志願したらしい。元々いる軍の人たちにも人気で「まりんちゃんこっちにも頼むよ。」等とお昼休憩の時等はスープやらの給仕を手伝ったりして人気者だ。なんとなく場が明るく華やかになるのは、まりんさんの元々のお金持ちマダムで華やかな雰囲気があるからだろう。まあ、お金持ちマダムでないとそうそう京也の追っかけ的な事もできないだろうし、お金に余裕がないと難しいよなあとは思う。大賢者が、まりんさんの討伐参加にOKサインを出したことはそう悪くはなかったのかなあと昼休憩の食事のときパンをかじりスープを飲みながらちょっとだけ思った。でも、いつもだったら私が座っている京也の隣にしっかりと陣取って座っているのが、はあ、って何とはなしにため息が出てしまうのだったが。そういえば戦いはやはり、それなりに魔力があっても怖いものだし、間違えば怪我もするし、死ぬかもしれないのだということを思うと、魔王討伐の要の勇者京也にいたっては、敵にも真っ先に狙われるんだし、もはや隠し玉として宮殿に置いておいて、ある程度戦いが優勢になっていざ魔王ってときの切り札にしたほうがいいんじゃないかなあとか思う筋もあったが、
肝心の京也本人が意外に戦いにやる気をみせてて、戦わないとレベルもスキルも上がらないから実践あるのみって言って積極的に戦いに参加しているのだ。
まだ、スライム程度の弱い魔物しか当たってないんだけど。
まずはスライムからかなって感じだから、RPGと割に近い世界戦なのかもしれない。
にしても、召喚された日のユーリたちが遭遇していた敵ってやたら強すぎなんじゃないだろうか。戦いのレベルがずいぶんと違っていたような気がするんだけど、あれは何だったんだろう。
少しでも魔王領に近づかないとということで戦いの陣地を増やしているんだけど、魔物側もいきなり強いものは送ってこないってことなんだろうか。それともあの日は召喚された勇者の気配を感じて強い魔物が派遣されてきたのだろうか。
またそのようなことにならないとも限らないしと思ったりしたのだが、誰もそういうことは言わないし、私は聖女として参加していて指揮官でもないので、口出しとかはできないのだった。何か言えば聞いてはもらえるのだろうけど、ユーリといい京也といい、戦法においては任せておいた方がいいと思っていたし。
そんな、戦いや兵力に対して口出しをしないって方針で参加していたことがあだになってしまうことに。
私はやはり、まりんさんといっしょは嫌だというべきだったのだ。
彼女のためにもそうだし、自分のためにも。なんとはなしにまりんさんといるとろくな事がないジンクスがジンクス通りの結果を導き出すことになるとは。嫌だなあという予感というものは当たるものだ。いい予感より嫌な予感のほうが的中率が高いのは何故なんだろう。危ないという危険回避能力みたいなものが発揮されているということなのだろうか。それを言わずに我慢してしまった。本当はまりんさんといるのがすごく嫌なのに。なんで私は我慢なんかしてしまったんだろう。
その日京也率いる勇者部隊は森を進んでいたが意外にも敵に遭遇せず、かなり魔王領に近づいていた。なんかおかしいと思った時には、大量のスライムの群れに取り囲まれていた。
スライムとはいえものすごい数で、みんな自分の周りのスライムを倒すのがやっとで、まりんさんのことを守る余裕はなかった。というより、スライムくらい自分で倒せよって思ったんだが、まりんさん、なんとスライムすら倒せないのだ。スライムに取り囲まれてわちゃわちゃ魔法の杖を打っているが、当たりもしない。あげくに杖にスライムが巻き付く始末。
スライムに飲み込まれそうになっている。私はとっさに「危ない!」と、まりんさんを助けようと横を向いた。そのとき一瞬の油断を見逃せなったスライム軍の親玉らしきスライムに飛び掛かられて、「キャーっ」よけようとして木の根っこに足を取られた。まりんさんをスライムから守って、スライムに攻撃魔法を打ったのだが、まりんさんを助けようと身体を飛ばして駆け付けた勢いで、木の根っこにつまずき、
よろけて、体制を崩した。回転する視界。そこには悲鳴を上げるまりんさんと、まりんさんを助けようと剣を、まりんさんの杖に巻き付いたスライムに払う京也の姿が見えて、こっちに視線を向けあっという顔をした京也の顔が見えた。京也のちょっと驚いてような顔と目が合って、でも足がよろけてて、
え?って思った時は遅く、
草地の木の枝のようなものにつまずきよろけて、転び、お尻をついてしまったところが、
落とし穴のようなものに落ちた。
わあって思った時には私は下へ下へと落ちて行って、
もしかしてヤバい?って思ったけどどうにもならなくて
上の方の遠くで
「成子!」
って叫ぶ京也の声が聞こえた。
けど、どんどん落ちていく、
落ちて
落ちて
落ちて、




