20志願してきた人は知り合いだった まりんさん登場
それは不安な雲が帝国の上空を覆い隠す憂鬱な気分になりがちな低気圧で体調が悪くなる人なら絶対に体調悪いよねというような日に起きた。
「ナリス、今回の討伐軍に参加したいっていう人が来ているんだけど、ちょっといいかな。」
近衛騎士団隊長のユーリが私に声をかけてきた。ちなみにナリコはこの世界では呼びにくいらしく、ユーリは勝手に私にナリスというあだ名をつけてナリスと呼んでいる。特にこだわりはないので、気にしてはいない。
ん?何故?という気持ちがよぎるのと、一抹の不安が心をよぎった。嫌な予感がする。虫の知らせみたいな感じである。
討伐軍に加わりたいという志願者がいたとして、人員の選抜等をする権限はユーリにあり、人選に対して私が口を出したこともないし、戦力や戦いにおいて必要なスキルや人員配置の判断などは経験と魔物に対しても精通しているユーリに任せるのが当たり前だからである。部外者が口を挟む余地などないのだ。
だからどういった形で志願兵を募集しているかも知らなかったし、どうやって選抜し、配置を決めているのかとかも知らなかった。だから、⦅ちょっといいかな?⦆の意味が私には⦆「?」でしかなかったのである。更に、学園に入学して手芸部なんかも作り、それなりにのんびりとした生活をしていて、討伐も演習のような感じでやっている段階だし、ユーリは騎士団長なので、多忙であり、私なんかがやってる討伐とは桁が違う活躍をしていて、今のところ実践でまだ役に立ちそうもない学園で勉強中の私や京也のところに「ちょっといいかな?」とかわざわざ学園内まで呼びに来るというのがまず不思議に思ったのだ。よ
「はい?」なんか間抜けな返事になってしまった。もちろん疑問形の語尾が上がる感じの返事である。
しかし、騎士団長に」呼び出されたとあっては、私も聖女としての役目もあるとうのもあり、近衛騎士団の騎士団長室まで出向くことになった。
学園から出るのは討伐の演習以外ほぼないので、何とも久しぶりな気がする。
「実は君のことを知っているという女性なんだが。」
私のことを知っている女性?意味が分からない。討伐軍に参加希望の志願者、しかも女性。
この世界に私のことを知っている人なんて。疑問に思っていると、
「多分ナリスたちを同じ世界から召喚された人らしいんだ。時期も同じくらいだしね。」
それはびっくりである。
召喚されたのは、京也と私の他、蘭之丈だけだと思っていた。
が別に召喚された人がいてもおかしくはないだろう。
ただ、かなり日にちが経っているし今までその人は何をしていたのだろうかという疑問もあった。しかもなんでこのタイミングで討伐軍に志願してきたんだろう。
という疑問は会ってみてすぐにわかることになる。
ああ、この人。
はあ。そうかあ。
私は憂鬱な気分になり、今日このどんよりとした空を覆う雲の嫌な天気と同じ気分になるしかなかった。
とても嬉しいとか思えなかったのだ。
隊長執務室に通されて、応接セットに優雅に腰をかけているその女性を私は知っていた。
そもそも一介の志願兵が隊長執務室に通されることは無い。余程のコネか何か特別な理由がないとあり得ない。大抵は大勢で面接して選抜するのだから。それも隊長ではなく副隊長や指揮官クラスのものが担当することが多い。隊長は激務で忙しいからだ。
それをちゃっかり応接セットに座っていた。
「お久しぶり?ドームで最近お会いしなかったけど来てなかったのかしら?」
意味が分からない。
「ドーム?ライブなら行ってたけど?広いから会わなかっただけじゃないの?」
「コンサートじゃなくて、野球よ。野球。」
「ああ、行ってないわ。あそこは野球ファンの方たちが行く場所でしょ。私なんかがチケット取っていってはいけない場所だと思ったから、」
「もう行ってないわ。」
私は苦々しい気持ちでそう答えた。
「あら、そうなの?私はずっと行ってるわ。楽しいわよ。近くで見れるし、この前なんか触っちゃったわ。」
相変わらずだな、この人。ああ、嫌だな。なんか面倒なことにならないといいけど。
私の頭に浮かんだのは、黒歴史としかいえない記憶、頭の中から消しゴムで消せるものなら消してしまいたい、そんな記憶で、それをこんぽ異世界にきてまでほじくりだされて、思い起こさせられることになるとは思いもしなかったので、
それに私にとっての疫病神というか、アンラッキーの象徴のような人で、この人がいると私の運が吸い取られるというかろくなことにならないので、なるべくどんなイベントでも会わないように気を付けて見掛けたら遠くに避難したりするくらい苦手な、元の世界で京也の同担の、まりんさんだった。




