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推しと異世界召喚    作者: 安寿
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K9ナデル・ミリンボーン先生の密着指導見学

たまたま魔法攻撃練習場の前を通りかかった。たくさんの人だかりで、通路を通り抜けれない。

何事?と思い様子をうかがうと、何やら歓声が聞こえる。

凄い!とか。”いやあ“!とか。何なんだろうと気になる。

訝しげに見ていると親切な生徒が俺に教えてくれた。

「ミリンボーン先生が聖女さまに指導なさっているのですよ。」

成子?聖女さまと言ったらこの世界に一人なんだから成子に決まっているのだが。

どうやら威力がすごすぎてうおー!って歓声が上がっているらしいが、

”いやあ“とは?

なんか黄色い悲鳴のようなものが聞こえるがあれは?

気になりすぎて、俺はずいずいと人垣をかき分けて様子が見えるとことまで進んだ。


なんだとお?

何であんな密着してんの?

俺が目にしたのは、


ナデル・ミリンボーン先生とやらが、成子の肩を抱いて腕を取って密着指導をしているところだった。


あれ。必要なの?


”いやあ“って悲鳴はナデル・ミリンボーン先生のファンの女生徒たちのものだったらしい。


「いいなあ。あんな風に私も先生に抱き寄せてもらう指導を受けたいわ。」


「あんなの羨ましすぎ。」

ふーっと息を吐いて近くの女生徒が羨ましそうにため息交じりに呟いた。


女生徒:聖女さま、羨ましすぎる。



女生徒:あら、あなた、だって聖女様ですもの、仕方ないんじゃなくて?


女生徒:近衛騎士団のユーリ様も聖女さまにご執心って噂ですわ。


女生徒:あの黒髪にあの黒い瞳。神秘的ですわ。


女生徒:あんなにお美しかったら殿方が夢中になるのも仕方ないのでは?


女生徒:きっとミリンボーン先生も聖女さまにご執心なのですわ。


女生徒:それでなくては多忙なミリンボーンさまが先生などなさることなんかあるわけありませんもの。


女生徒:むしろそのせいでこうして間近にお姿を拝見できてラッキーって思うほうがよくってよ。


はらはらと零れ落ちるように女生徒たちの言葉が俺の脳裏に響いてきた。

は、人気者なわけね。


そんで、成子にご執心と。

役得ですか?その密着。必要ですか?


俺の中でなんか知らないけど沸々と煮えたぎるようなものが。


なんであんな触ってるわけ?


思い出すと、俺前にもこんなに似たような気持になったような気がするんだけど。


思い出した。

そう、あれは俺の映画の撮影に成子がエキストラとして参加していたとき、

役者とエキストラは会話とかしてはいけないというルールがあった。


エキストラとして参加している人は役者に手を振るとかプレゼントを渡すとか、ファンであるというような意思表示をしてはいけないというルールである。


演技に集中するためをれは適切なルールである。

ということを俺も頭でわかっていた。

エキストラから話しかけてはだめだし、役者から話しかけるのも当然暗黙の了解でダメである。


そういう縛りがあるなか、素知らぬ顔で、エキストラとして参加している成子。


他の役者のファンもいるし、仕事としてエキストラとして参加している人たちもいる。

エキストラは動く大道具というような立ち位置なのだ。


だが、


分かっているのだが、


俺がその縛りを遵守している中、


俺の目の届く範囲で、


おっさんが成子にめちゃくちゃ近い位置で、しかもなんかやたらと話しかけているのが目に入って


イライラした。


俺が話とか出来ないのに。


それに合わせてにこやかに会話とかしてるし。

おっさんなんか無視すればいいのに。


更に、成子が持ってた小道具のキャリーを移動するとき、スタッフの長髪のちょっと美形のやつが

さらっと紳士的に持ってあげてて、


それに


「すみません」と


嬉しそうにうっとりと応えている成子を見たときに


爆発しそうにイラっときて


つい不機嫌な顔をして

二人が俺の前を通り過ぎるのを


睨んでしまったんだが、


なんかそのとき、成子がとても


気を使ったような困ったような顔をして俺のことをチラ見していたことを


思い出してしまった。


そう、俺


馬鹿みたいだけど


妬いていたのだ。


あのときの気持ちと同じだ。


これは嫉妬だ。


オッサンにもイラっときたが、あんなオッサンにニコニコ受け答えなんかしなくていいっつうのって思ってたけど、


スタッフの音響装置のイケメン兄ちゃんに嬉しそうにうっとりする必要はないんじゃないかな。

っていうかイケメンつうのがムカつく。余計にムカつく。


イケメンでムカつくというのをなんか既視感あるなと思ってたんだが、これだよ。


そうなのだ。ナデル・ミリンボーン先生とやらがやたら二次元にいそうな婦女子がうっとりしてしまうタイプのイケメンで女生徒に超人気らしいから余計にイラっと来るのだ。

密着して触ってるし。俺だって触ってないのに。


っていうか、


今の状況って、

俺はキャーキャー言われてないし、


それに芸能人と一般人とかいうのでもないし、

むしろ対等の立場というか、もしかしたら、聖女のほうが序列上とかだったような気がする。


ファンとアイドルとかっていうのももう違うとみていいだろう。


成子がどう思っているかは知らないけど


もうアイドルがファンに手を出すのは禁忌


って縛りは


ないのでは?


そうだ。


俺もうアイドルでないんだった。


この世界では


だから縛りとかないんだ。


普通にナデル・ミリンボーン先生は俺の恋敵っていうやつになるのかも。


っていうか、ナデル・ミリンボーン先生の目の前のいちゃつきぶりに頭がいっぱいでさらっと聞き逃してたけど


さっき女生徒たちの声の中に


『近衛騎士団隊長のユーリ様も聖女様にご執心』ってのがあったような。


聞き間違いじゃないと思うが。


それだと、ユーリとやらも俺の恋敵っつうのになるのか。

うーん。

俺はイライラが収まらないし、いろいろ考えると頭の中がぐちゃぐちゃになるような感覚を覚えた。

今までに味わったことのあまりないような感情。


わりに俺はモテたし、アイドルだから愛されるのに慣れていて、自分が一番の状況にも慣れていて、

こういう誰かと取り合うなんて状況に今までなったことがあまりなかったような気がする。


思い出す限りなかったような。

あったのかもしれないけど、思い出せないし、

こんな気持ちあのエキスト参加の成子に対してくらいなもんで、それも俺のファンにモーションかけてんじゃねえよ、みたいな俺が絶対的に愛されてる前提での話だったから、もしかして取られる?取られてる?なんて危機感に陥ったことなんか一切なかった。だから、今ものすごい焦燥感と今後どうするかの対策に頭が混乱している。


とにかく対策を練らねば。


と思ってみていたそのとき、


は?

HA?

ha?


何あれ?


なんで成子の手にキスとかしてんの?


王子?


第三王子?そういえばこの前宮殿で勇者の召喚の儀みたいのやったときにいたようないなかったようないたような。


あのスマートなキスの仕方。あれってこの世界でも貴族とか王族とかそういう高貴な人々だからできるしぐさなんだろう。

それにしても王族から手にキスをしてもらうとかって、結構聖女って身分高いってことでいいのかな。

なんか俺のぞき見して、よだれ垂らしてるみたいな感じでちょっとみじめ臭い感じになってんじゃん。

なんか前の世界でもあんなの映画とかでしか見たことなかったし、そんなことドラマとか映画でもしたことなかったから、なんかちょっとほんと別世界なんだなと実感する。それに男の俺が見てもあの挨拶の仕方はちょっとうっとりする。王子様だ、〔はあと〕ってなってしまう感じだよな。目がハート♡マークになるやつ。


ってなんかもしかしてあいつ強敵なんじゃ。

この世界で権力とかってやっぱり王室とか。

だとすると、

あんなの出てきたらもう俺

ダメなんじゃ。


って、いや、元世界から一緒に召喚されたよしみというか、

日本語での意思疎通も元世界から来たものでしかできないってのもあるし。

それは大賢者の実近もだけど、まああいつは論外だから関係ない除外するとして


引くわけにはいかない。


こっちは先に好きなんだから。

それに一応成子側も先に俺のことを好きなはずだ。



諦めるとかはなしだ。


で、どうしたものかな。


イラっとを通り越して最大のライバルになりそうなやつの登場ですっかり頭が冷えた俺はいろいろ考えを巡らせるのだった。












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