14ナデル先生の魔法授業
「ナリコさん、昨日言ったところ読んできていただけてますよね?」
うーん、読んできたけど。だけど実際にやろうとすると
出来ない。
的に向かって魔法を打つってだけの簡単な魔術、らしい。んだけど、上手くいかない。
私、徹底的にコントロールが悪い。
もう的と全然違うとこ打って壁とか壊しちゃってるし、的に当たったら当たったで、的ごと壊してしまうし。
机上の空論と実際にやってみるのと大違いで、なんとかイメージ浮かばせているんだけど、上手く出来ない。
もはや練習場自体を破壊してしまう勢いになってしまった。
「はあ、一斉攻撃で全体を全滅させるってことならこれでいいんですけど、」
ナデル先生がため息交じりに言う。
「でも、そういう場合ばかりではないんですよね、戦いの場では。」
顎に手を当ててなんか考えるような顔をして
「例えば、敵の大将を捕縛して、情報を聞き出したい等の場合、部隊全員を全滅させてしまったら台無しになってしまうので、その攻撃では作戦失敗って事になります。」
うんうん、分かってる。残酷な全員殲滅したいとか思ってるわけじゃないんだけど、でもなんかちょっと杖振ると、
眩い光がドカーンってなっちゃうんだけど。
しかもナデル先生見たさにギャラリーが集まってくるし、
「わー、すごい、何あの迫力。」
「有り得ねえ。」
とか悲鳴交じりの声まで聞こえてきて益々集中できないんだけど。
「こうやって杖を持って、こうです。」
ナデル先生が私の腕を掴んで杖の振り方を指導してくれる。
その旅に女生徒からのキャーという声と、イヤーという悲鳴と、ハあん。というようなため息が聞こえる。
だから、もう見に来ないでって思うけど、余計に集中できないんじゃない。
確かに近い。めちゃ近い位置にイケメンである。
だけど、怖いんだってば、もう疲れて無理だってのにスパルタなんだもん。
「体で覚えるしかないので練習あるのみです。」
「こうやって、こう。わかります?こうやってこう、こんな感じで、こうです。」
とにっこり笑って言うんだけど、なんかそれがドsっぽく見えるのは気のせいだろうか。
しかもなんか細い体に細腕なんだが、なんかとても力強い感じで、ふとこんな儚げな美しい容姿なのに、男なんだってのを凄く意識してしまう。
いかん、そういうこと考えてる場合じゃない。んだけど。
しっかりしろ私。って思うんだけど、またドカーンとやってしまった。
的ごと破壊である。
ほんと、ごめんなさい。
でも仕方ないとも思ってる。だってこの世界では魔法は子供のころから使ってて、人によって魔力総量に違いはあるし、全然魔力ないタイプの人もいたりするらしいけど、魔導士クラスになるような人は、みんな赤ちゃんくらいのときから魔法を使っているとのこと。だから、魔法を操るのはもう普通に空気を吸って吐くというのと同じくらい自然、呼吸をするように魔力を扱っているのだ。
そんな人たちと比べて私は魔法とかない世界から来て、魔力総量も多い、それをいきなり使いこなしてと言われても、なんだそりゃってなってしまうのはある意味当然のことと思う。
だから出来ないんです。っていうのが通らないのが辛い。
何回も何回も杖を振って、練習場自体がボロボロになってるのに、私の体もなんか疲れてきてボロボロになっているのにナデル先生の指導は終わらない。むしろどんどんきつくなってきているような気がする。
体力と気力がすり減って奪われてくると同時に気にしてなかったナデル先生の体温とか、先生から発せられるなんだかすごくいい匂いとかが直接私の脳に直撃し始めた、煩悩の塊である。考えないで集中しようとすればするほど、密着して指導しているナデル先生の色気みたいなものが私を直撃してくるのだ。
聖女ってこんなんでいいんだっけ?多分ダメ。知らないけど多分ダメだ。イケメンにときめいていかがわしい気持ちになるなどもってのほかの気がする。もしかしてイケメン耐性をつける訓練なのでは?と思うほどの密着。顔もめちゃくちゃ近い。
なんだこれ。こんなの有りなのか?ダメなような気がするが。




