13王立学園 魔法コース
キングスマナリン王国の聖女として召喚された私、早瀬成子は、今王立学園の魔法コースに通っている。
ステータスバーで確認済だが私の魔力総量は多い。けど、扱いきれていないというのが現状である。
いきなり素晴らしいステータスを手にしても本人がうまく扱えなければ宝の持ち腐れなのだ。
いい例が召喚当日の近衛騎士団の方々を治癒魔法で治療したけど、自分の魔力に魔力酔いとやらを起こしてぶっ倒れてそのまま意識なく二日間も寝ていたという情けない例がある。
魔力で戦うということを期待されている以上魔法を使ったら気絶しましたでは、役に立つどころか足手まといでしかないだろう。そんなんでは、勇者として召喚された京也の役に立たないではないか。
折角一緒に召喚されたんだから、京也の役に立ちたいというのがファンとして当然の気持ちである。
いつ出陣するのか分からないが、今の状態では野良スライム一匹倒せないだろうとのこと。スライムは元世界のゲームでもおなじみのキングオブ雑魚キャラであるが、この世界でも実際に雑魚キャラらしかった。ちょっと強い魔力や武術が使える子なら子供でも簡単に倒せるらしいが、ぴょこぴょこと機敏に飛び回るので、ちゃんと鍛錬してないとステータスが高いだけでは倒せないとの事。ん-ん、チート能力で楽ができるのかと思ったらそうでもないということが判明してちょっとがっかりしている。というのも、気絶して使い物にならなくなる前は必死に治癒魔法を使いながらも、もしかして私ってこの世界ではすごいのでは?最強なのでは?こんな今にも死にかかってるような赤く焼けただれた人とか助けられるってこの世界でも珍しいのでは?と自分に酔っているところがあったのである。京也の称賛の眼差しもそうだが、治療が終わって感謝してくれているらしい、騎士の人たちや、治している横で、どよめく驚きの声なんかがもしかして私って凄いのでは?という気持ちにさせてくれていたからだ。そういうわけで私は今キングスマナリン王国王立学園魔法コースに入学し学生として魔法を学んでいる。
魔法の成り立ちから教えてくれる基礎的な座学からである。それに小さな子供でも知っているこの世界の当たり前のこと、歴史や社会についてとか一切知らないのだから、正直大変である。言語だけは自動翻訳機能が備わっているらしく、意思の疎通とかで困ることはなかったが、他のことに関しては赤子同然である。もちろん、習わないと文字も書けないから、結構辛いものがある。しかもなんでもすぐ覚えてしまう子供とは違うのだから、辛い。英語すら学生のことに習ったけど忘れてしまったなあという感じの私には辛い。京也なんか英語はネイティブ並みに話せるらしいし、フランス語もまあまあいけるし、中国語に関しても勉強してるらしかったからキングスマナリンの言語もすぐ覚えてしまうんだろうなあ、まあ勝手に翻訳してくれてるからいいとは言っても地味に魔力かなんかを消費してるような気もするし普通に話せるようになるに越したことはないと思うし。にしても京也売れっ子アイドルでめちゃ忙しいだろうに外国語勉強しているのえらいなあと常々思っていたが、そういう日ごろからの勉強スタイルとかがきっとこの国においても役に立つんだろう。仕事が忙しいとかヲタ活動に忙しくて勉学なんかとっくのとうに忘れていた私とは大違いだろうな、はあ。と思いながら渡り廊下を歩いていると、中庭で京也が剣の素振りをしているのが見えた。偉いなあ、朝から熱心である。まだ授業の始まる時間でもないし、私なんか今日やるとこ予習しとかなくてはいけなかったのに、眠くて寝てしまったというのに。
それにしても、朝の陽に当たって京也の汗が光って美しい。はあ、あの汗を浴びたいとかちょっと変態チックなことを思ってほけっと見ていると、私の熱い変態な視線に気付いたのか京也がこっちを見た。ヤバい。聖女にあるまじき変態な顔をしているのを見られたかも。私は緩んだ顔を取り繕って、会釈をした。京也も剣の手を止めて、おうって感じで挨拶してくれた。
信じられない事だが、ここでは京也と一緒に学生をしているのだ。本当に人生何があるか分からないものだ。京也は剣術コースなんだけど。同じ王立学園の生徒であるということには変わりはないのだから。そんなことを感慨深く考えていると、私に専属で指導してくださっているナデル・ミリンボーン先生が向こうから歩いてきた。彼は多分私より若い。と思う。けど、めちゃめちゃ魔法に関して凄い方らしい。というか、この国で一番の魔導士なのだ。一番とは一番である。それより上がいないということだ。彼より年齢が上の立派な魔導士はたくさんいるだろうし、彼に指導していた師匠のような人もいるのではないか、というか絶対いるだろうが、そういう人たちより飛びぬけて魔法技術も素質も実力もあるということなのである。そんな彼は王国魔導士団の師団長という要職についてるので、本当は王立学園で教鞭をとることなどなく、彼に教えてもらえるなんてことは普通だったら有り得ないとの事だった。
彼に関しては魔法コースの生徒全員が憧れているので、私が指導してもらっているとき、多数のギャラリーが発生した。本当はそにう目立つのは苦手なので嫌なのだったが、もっと静かにおとなしく過ごしたいのだがそうもいかないらしい。まず、ナデル・ミリンボーンの姿形がまずい。目をみはるようなイケメンなのだ。騎士団隊長のユーリさんもイケメンだが、ナデルさんはもう見るからに美男子で、見た目細マッチョなユーリさんと違って儚げな美しさなのである。柔らかそうな紫色の髪はふわふわとしていて、目は綺麗な薄いグレーで、細い形の良い鼻、薄い唇が儚さを強調しているようなそんな美形っぷりであった。
色素が薄い系の美形といったらいいであろうか。スミレの花のような美しさなのだ。男性にそういう表現はあまりよくないかもしれないけどそんな印象を持った。
が、魔法のことになると、鬼のように勉強熱心でそして実力があった。
もちろん、そういう自分が簡単にできる天才にありがちな、厳しさである。
私は魔法とかない世界から来たんですけど。わかりません。できないんですけど。と何回言おうと思ったか分からない。だって、一言でいうと厳しいんだもん。指導が。見た目からは想像もつかない熱血教官なのであった。なんでこういう事態になったのか知らないが今日も私の魔法実技の指導は熱血スパルタ式になるよな、はあ、頑張れるかなあ、いや、頑張らなくちゃいけないけど、京也も頑張ってるんだし、と思うけど、ナデル先生絶対ドSだ。あの容姿に騙される女性が多いみたいだけど、絶対ドSだって。と思いつつ今日も一日が始まるのだった。




