幽閉された人々
今回は非常に短いパートです。クライマックスと一緒にしようか迷ったのですが(字数的に)、最後はやっぱりすぱっといこうというわけで分けることにしました。
「ねぇ船長さん」
「なに」
恐る恐る声をかけたミルに、ソフィは冷たく答えた。
「うちらどうなっちゃうです?」
「どうなっちゃうもこうなっちゃうもないわ。エリーゼのことを説明して、お咎めなしなら釈放、ダメなら処分ね」
ソフィは感情をこめずに答えた。
「そんなぁ……」
ミルは泣き出しそうに耳をぺったりさせている。
「すまぬ……わらわの責任じゃ……」
と申し訳なさそうに言ったのはエリーゼ。
「あなたの責任じゃないわ。しいて言うなら船内コンピュータの不具合を忘れてた私の責任よ」
ソフィは至ってクールに弁護した。
「とはいえ、わらわがおらねばぬしらはここに来ることはなかったのじゃ……せめてわらわに元の力があれば……」
エリーゼは悔しそうに言った。
「そういえば、あなた宇宙バンパイアなのにずいぶんあっさりと捕まったのね」
「うむ……わらわは今力をつかえぬ」
「どういうこと?」
「この右手にはめている三つの指輪。これに対となる指輪がそれぞれ存在するのじゃ。銀の指輪は我らが能力、吸収を司る鍵。金の指輪は吸収したものを吐き出すための鍵じゃ。今手元にあるのは、金の指輪のみ。吸うことが出来ねば吐くこともできぬ」
「バンパイアっていうからには、吸ったら相手もバンパイアになる! とかだと思ってましたです……」
ミルが少しだけ驚いたように言った。
「宇宙バンパイアというのは、人が付けた名称じゃ。我らはそういったものを目指して能力開発を行ったわけではないのじゃ。もともとはエネルギーの再利用、物質循環の促進、個人間のデータ通信などを目的としておった。それには遺伝子のコントロールと、人体の一部サイボーグ化、指輪の形をした起動デバイスが必要じゃった、それだけの話じゃ」
「もとは平和的利用のために開発されたってわけね」
「宇宙魔法使いと呼ばれる全ての者たちがそうであったかどうかはわからぬ。しかし少なくとも我らは平和利用を目指しておったよ。一部の愚か者が現れる前まではの」
エリーゼが顔を暗く顔を伏せる。
「一部の愚か者?」
「わらわの父より5代前の国王じゃ。その人物が技術の軍事転用を提唱し、宇宙で初めて銀河統一論を唱え出したのがすべての始まりじゃった。詳しい話はわらわもよくわからぬ。しかしその流れを断ち切ることができぬまま、ブラッドフィールド家は滅ぼされることとなった。因果応報という奴じゃ」
エリーゼは自嘲するように笑って言った。
「でも、うちが一つ不思議なのは、何で公安局は未だにエリーちゃんを探してたかってことです。だって数百万年も前に行方不明になったのですよ?」
ミルは心底不思議がっている。
「それは……大銀河連邦というものが、三カ国同盟のなれはてだとするのなら、奴らの中に我らの仇敵がおるからじゃろう。我らと最も近い銀河におった宇宙魔法使いじゃ。我らと彼奴らは、数百年にわたって小競り合いを繰り返しておったからのう。もし公安局とやらの前身が彼奴らならば、ありうる話じゃろう」
「『彼奴ら』というのは何のことなの?」
ソフィが尋ねる。
「……あまりその名を口にしたくはないが、彼奴らは宇宙ゴーストと呼ばれておる。家名はグラール。彼奴等は我らよりも後になって能力の開発研究を行ったのじゃ。ゆえに我らを倒すためだけに作られたといっても過言ではない。戦時中は宇宙バンパイアハンターなどとも呼ばれておったようじゃ……わらわに唯一心残りがあるとすれば、彼奴らに復讐できぬことじゃのう」
エリーゼは悔しそうに言った。
「じゃあ、もしかしてうちらがすぐにどうこうされないのって……」
「おそらく、そいつが向かっておるのじゃろう。能力を使えないとあっても、わらわは最後の宇宙バンパイアじゃ。その手で抹殺したいのじゃろう」
「じゃあエリーゼがもし能力を取り戻したとしても、そいつには勝てないってこと?」
「うむ……言わば天敵じゃからのう。わらわの力のほとんどは彼奴らには効かぬ」
「そうなの……そいつがくる前に何とかして逃げだせないかしら……」
ソフィたちが捕まっている部屋には、格子のようなものはない。ソフィたちはそれぞれ少し離れて椅子に座っている。その周りの床には半径4メートルほどの青白い円が描かれている。この円に触れると、電気ショックが流れる仕組みである。円は一度触れると半径が少しずつ縮み、何度か脱出に失敗すると死ぬまで電気ショックが流れるようになる仕組みである。
「無理ですよ……電気牢を破った人は今まで一人もいないって話です」
「この電気牢から出た時がチャンス……かしら……」
「出られるんですかね……」
その時、階上から物凄い轟音が鳴り響いた。コンクリートと鉄でできた建物が破壊される音。それに混じって聞こえてくる宇宙船のエンジン音。
「これってもしかして、あーくんとナナちゃん!?」
「あいつらなんて無茶を……逃げてよバカ」
次回は最後の山場・・・かな?




