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【祝700PV突発!】書館のウォーカー   作者: ジョニ男
第2章 盗掘者達

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第2章・第17話:一握りのご褒美

(……居酒屋、か)

自室に戻り、泥まみれの服を脱ぎ捨ててシャワーを浴びながら、レインは未だにどこか現実感のない妙な浮ついた感覚を覚えていた。

プロのゲーマーとして、数々の不条理なイベントや初見殺しのギミックを冷徹に見切ってきた自負はある。だが、まさかあの高嶺の花であり、規律の塊のような風紀委員長――エレナ・バレンシュタインから、ピンポイントで「居酒屋」を指定されてサシの飯に誘われるなど、クソゲーの隠しルートでも想定していなかった。

(まあ、あいつなりに気を使ってくれたんだろうな。俺が平民だから、高級な店だと緊張すると思って……)

シャワーを止め、鏡に映る自分の顔を見る。髪を乾かし、普段通りのラフな私服に袖を通しながらも、心臓がいつもより微かに早く脈打っているのを自覚せざるを得なかった。ただのプロウォーカーの相棒、ただの平民特待生。その自分が、あの完璧なお嬢様と二人きりで酒場に行く。冷静になろうとしても、どうしても喉の奥が乾くような緊張感が付きまとった。

「よし……行くか」

魔導銃はさすがに置いていくが、懐にはあの不気味に沈黙した『昏き結晶』を忍ばせる。これから話すのは、イグノタフ家の闇、あるいは国の心臓部の秘密だ。ただのデート気分で浮かれている場合ではない――と、自分に言い聞かせるようにして、レインは宿舎を後にした。

城下町の喧騒から少し外れた路地裏。

エレナに指定された店は、赤提灯が控えめに揺れる、隠れ家風の少し落ち着いた大衆居酒屋だった。確かにここなら、学園の生徒や貴族の目が届くことはないだろう。

約束の時間の数分前。店の前へとたどり着いたレインは、そこに佇む人影を見て、思わず足を止めた。

「あ……レイン君!」

振り返ったエレナの姿に、レインは一瞬、本気で息を呑んだ。

胸の奥がドクン、と大きく跳ねる。

普段の厳格な風紀委員長の制服や、地下で身にまとっていたあの凛々しい『学園騎士服』姿ではない。動きやすさを意識したのだろうが、上品な生成りのブラウスに、身体のラインに沿ってしなやかに流れる落ち着いた色合いのフレアスカート。名門バレンシュタイン家のお嬢様としての育ちの良さが隠しきれない、ハッとするほど可憐な私服姿だった。

いつもきっちりと結ばれている豊かな髪も、今は少し緩めにまとめられており、夕暮れの街灯に照らされて柔らかく輝いている。

そして何より、レインの視線を強烈に奪ったのは、その凶悪なまでのプロポーションだった。

カチッとした厚手の学園騎士服の上からでも目立っていた彼女の相変わらずの爆乳が、締め付けから解放され、柔らかい生地のブラウスを限界まで押し上げてこれでもかとばかりにその圧倒的な存在感を主張している。キュッと細く引き締まったウエストとの対比で、その果実のような豊満さはさらに強調され、地上の開放的な空気も手伝って、直視するのを躊躇わせるほどの色香を放っていた。

(おいおいおい……ちょっと待て、学園騎士服で抑え込んでねえあいつ、あんなに凄かったか……!?)

泥を落として薄く化粧を施した彼女の美貌もさることながら、その暴力的なまでの双丘の存在感に、レインの理性は一瞬でフリーズしかけた。透き通るような白い肌が、街灯のオレンジ色の光を浴びて淡く上気したように見え、吸い込まれそうなほど気品に満ちた瞳が真っ直ぐにレインを捉えている。

「待たせ、たか……?」

喉が急に干からびたようで、声が少し掠れてしまった。いつもなら軽口を叩けるはずなのに、目の前のあまりの眩しさと、どうしても視線が行ってしまう胸元に、どう対応していいか分からない。完璧なバグ利用(ハメ技)を閃いた時ですらここまで動揺したことはないのに、今のレインは完全にエレナの美貌と抜群のプロポーションという名の「初見殺し」に翻弄されていた。

「いいえ! 私も今しがた到着したところですわ」

エレナは少し頬を染めながら、ふわりと微笑んだ。その緊張したような、しかし嬉しそうな表情がまた破壊力抜群で、レインは小さく咳払いをしながら強引に視線を上方に固定する。

「その……このような場所へお呼び立てして、申し訳ありません。色々と調べてはみたのですが、殿方と『いざかや』という場所に赴くのは初めてでして……。失礼はございませんでしょうか?」

「い、いや、完璧なチョイスだ。むしろ委員長がこんな渋い店知ってたことに驚きだよ」

「ふふ、風紀委員のネットワークを侮りませんよう」

エレナは少しいたずらっぽく、ぐっと胸を張る。その動作に合わせてブラウスの生地がはち切れんばかりに引っ張られ、豊かなバストがさらに強調される。レインは慌ててまた目を泳がせた。完全にドギマギしている自分自身に内心で「落ち着けゲーマーだろ俺は! 胸ばっか見てんじゃねえ!」と激しいツッコミを入れながらも、エレナが「さあ、参りましょう」と店の縄のれんをそっとくぐると、その後に続く足取りはどうしても少しぎこちなくなってしまった。

ガラガラ、と引き戸を開けると、店内には出汁と香ばしい焼き鳥の匂い、そして仕事終わりの大人たちの心地よい喧騒が広がっていた。

「いらっしゃい! 二名さん? 奥の個室へどうぞ!」

威勢のいい店主の声に、エレナは一瞬だけビクッと肩を揺らしたが、すぐに凛とした態度を取り戻してレインを振り返る。

「……すごいですわね。これが、庶民の皆さんの『いこうのば』……!」

個室へ向かう通路、すぐ隣を歩くエレナから、ふわりと上品で甘い香りが漂ってくる。その度に彼女の豊かな胸元が視界の端をかすめ、レインの心臓は店内の喧騒に負けないほど激しく鳴り響いていた。

店主の案内に従い、通路の奥にある小さな個室へと入る。

畳の上によく磨かれた座卓が置かれただけの、年季の入った四畳半ほどの空間だ。引き戸を閉めると、店内の喧騒が心地よい遠音へと変わり、急に二人きりの密室感が強調された。

「……まぁ、靴を脱いで上がるのですわね。なんだか、お友達の私室にお邪魔するようで、少し緊張いたしますわ」

エレナは丁寧に靴を揃え、フレアスカートの裾を気にしながら、不慣れな手つきで座布団の上にちょこんと正座した。

だが、その姿勢がまた別の意味で凶悪だった。

正座によって上体が綺麗に伸びたことで、ブラウスを限界まで押し上げているその爆乳が、さらにせり出すようにしてレインの目の前に突き出されたのだ。机を挟んだ距離が近いこともあり、直視せずともその圧倒的な質量感が視界を強制的にジャックしてくる。

(おいおい、座るとさらに破壊力が増してんじゃねえか……。これ、対面で飯食うの無理だろ……)

レインは心の中で悲鳴を上げながら、あえて少し崩したあぐらをかき、手元の木札のお品書きに必死で視線を落とした。


【※注釈:世界観設定に関するおことわり】

この世界(国)の法律では、学園生のような未成年であっても魔力循環の観点から飲酒は一切禁止されていません。もちろん、現実の日本においては未成年の飲酒は法律で固く禁止されています。良い子の読者の皆さんは成人するまで絶対に真似しないでね!


「あの、レイン君。まずは……その、『とりあえず、なま』というものを頼めばよろしいのでしょうか? 事前に庶民の酒場での作法を嗜んでまいりましたの!」

少し頬を紅潮させ、どこか誇らしげに言ってみせるエレナ。名門バレンシュタイン家のお嬢様が、大真面目に居酒屋の注文の仕方を勉強してきたのだと思うと、レインはドギマギしていたのが急に可笑しくなり、思わず吹き出してしまった。

「くくっ、間違っちゃいねえけど……委員長、酒いける口なのか? 無理してビールにしなくていいぞ。果実酒とか、冷たいお茶もあるからな」

「う……。じ、実は、お恥ずかしながら家以外でお酒を嗜むのは初めてでして……。ですが、今日はレイン君と対等にお話がしたいのです。ですから、その、レイン君と同じものを!」

覚悟を決めたような真剣な目で、じっと見つめてくるエレナ。吸い込まれそうなほど美しいコバルトブルーの瞳に真っ直ぐ射抜かれ、レインはまたしても心臓を大きく揺さぶられた。

「……分かったよ。じゃあ、軽めの果実酒のソーダ割りを二つ。あと、ここは焼き鳥が美味い店だから、王道のねぎま、つくね、皮、それと砂肝あたりを塩とタレで適当に頼むな。あ、それとこれも居酒屋の定番だ、『だし巻き卵』を一つ」

「はい! 全てレイン君にお任せいたしますわ」

レインが店員を呼んで注文を終えると、すぐに冷えたグラスとお通しのキャベツが運ばれてきた。

お互いにグラスを持ち、小さくカチン、と合わせる。

「まずは……地下書館からの生還と、外地実習の成功を祝して。お疲れ様でしたわ、レイン君」

「ああ、お疲れ、委員長」

エレナは恐る恐るグラスに口をつけ、炭酸の刺激に「ひゃゃ……っ」と小さく身を震わせた。その無防備で可愛らしい反応に、レインの胸がまたトクンと跳ねる。

少し冷たいアルコールが体に染み渡り、個室の空気がじんわりと解れていく。

そこへ、香ばしい炭火の香りを漂わせた出来立ての焼き鳥がドカンと運ばれてきた。この世界の国産鶏は、現実世界のそれよりも遥かに大柄で凶悪な生態を持つため、その肉質は信じられないほど引き締まり、一粒一粒のサイズも規格外にデカい。

「……まぁ! これが噂の『やきとり』! 随分と大ぶりで、力強いお肉ですのね……!」

エレナは「ねぎま(タレ)」の巨大な串を両手で恭しく持ち、上品に小さな口を近づける。しかし、お嬢様特有の綺麗な姿勢のまま食べようとするため、筋肉質で弾力のある極上の肉をなかなか上手く噛みちぎれない。

「あ、あの、レイン君……お肉が、なかなか反抗的なのですけれど……」

「はは、この世界の鶏は凶暴だからな。そんな上品に持ったら食いづらいって。こうやって横からガブッといくんだよ」

レインが見本を見せると、エレナは「なるほど……!」と意を決し、少し口を大きく開けて横からねぎまに齧り付いた。

じゅわっと溢れる、大柄な地鶏ならではの濃厚な肉汁と、甘辛い濃密なタレの旨味。

「――っ!!」

衝撃的な美味しさに、エレナのコバルトブルーの瞳がパッと輝く。

「美味しい……! 美味しいですわ、レイン君! 弾力が凄くて、噛むたびに旨味が溢れて……炭火の香ばしさとこのタレという味付けが絶妙ですわっ!」

興奮のあまり身を乗り出すエレナ。その拍子に、ブラウスの限界を突破しそうな爆乳が、はち切れんばかりにプルンと大きく弾んだ。タレの付いた大ぶりな串を持ったまま、豊かな胸元をフルに震わせて感動しているその姿は、あまりにも無防備で、あまりにもエロティックだった。

(……頼むから大人しく食ってくれ、俺の理性が死ぬ)

レインは慌てて果実酒を煽り、視線を「つくね(塩)」へと避難させた。

「次はこれを食べてみてくれ。つくねだ」

「つくね……丸くて可愛らしいですわね」

エレナが今度は少し慣れた様子でつくねをパクリと口に含む。

「もぐ……ん? まぁ! 柔らかいお肉の中に、何かコリコリとした不思議な歯ごたえがありますわ! これは一体……?」

「それ、軟骨が入ってるんだよ。この世界の鶏は骨まで硬くて凶暴だから、細かく砕いて混ぜると良いアクセントになるんだ」

「なんこつ! 骨まで美味しくいただいてしまうなんて、庶民の知恵というのは本当に素晴らしいですのね……!」

すっかり居酒屋の魅力に取り憑かれたエレナは、続く「とり皮」のパリパリとした食感とジューシーな脂の旨味にも感動し、果実酒をベースにグイグイと箸を進めていく。少しお酒が回ってきたのか、彼女の白い頬は綺麗な桜色に染まり、コバルトブルーの瞳もどこかトロンと潤みを帯び始めていた。

そこへ、湯気を立てた大皿が運ばれてくる。黄色く輝く、焼き立ての「だし巻き卵」だ。

「まぁ、こちらは卵料理ですのね。宮廷のオムレツとはまた違った形をしていますわ」

「だし巻き卵だ。この横に添えてある大根おろしに、醤油をちょっと垂らして、一緒に食べるんだよ」

レインに教えられた通り、エレナは箸で慎重にだし巻きを切り分け、大根おろしを乗せて口に運んだ。

ジュワッと溢れ出す、お出汁の優しい旨味と卵の甘み。そこに大根おろしのさっぱり感と醤油の塩気が完璧に調和する。

「――っ! ふわふわで、お口の中でとろけてしまいますわ……! この『だいこんおろし』とお醤油の組み合わせ、なんと奥深い味わいなのでしょう……!」

あまりの感動に、エレナは再び胸元をユサリと大きく揺らしながら、恍惚とした表情を浮かべる。お嬢様が庶民の味の真髄に完全にノックアウトされている姿は、見ていて実に微笑ましかった。

「最後にこれだ。手羽先。これはちょっと食べるのが難しいぞ」

目の前に出された、骨付きで脂の乗った大きな手羽先に、エレナはうーんと小さく唸る。

「骨が二本通っているのね……。これは、どうすれば……」

「両手で持って、骨の隙間の肉をこう、一気に引きちぎるように吸うんだ」

「こ、こう、ですの……? んむ……っ」

エレナは小さな口で手羽先にワイルドに食らいつく。骨から肉を引き剥がそうと、彼女が一生懸命に顎を動かすたび、その動作に連動してブラウスに包まれた豊かな双丘が、机の上でたわわに、そして不規則にユサユサと揺れ動く。

指先や口元に少し脂を光らせながら、夢中で肉を頬張るお嬢様の姿は、普段の厳格な姿からは想像もつかないほどに扇情的で、レインはもはや生きた心地がしなかった。

「ぷはっ……! とても濃厚で、コラーゲンがたっぷりという感じですわ! ……あら、レイン君、お顔が真っ赤ですけれど、お酒が強すぎましたかしら?」

「……いや、なんでもねえ。ちょっと部屋が暑いだけだ」

レインは冷えたグラスを額に当てて、無理やり脳の熱を冷ました。

ひと通り凶暴な国産地鶏のフルコースと極上の卵料理を堪能し、お腹も完全に満たされた頃、エレナはふぅ、と満足そうな甘い吐息を漏らしてグラスを置いた。

そして、少しだけトーンを落とし、お酒の熱を帯びながらも、どこか芯のある真剣な輝きを宿したコバルトブルーの瞳をレインに向けた。

「……さて。お腹もいっぱいになりましたし、本題に入りましょうか。地下3階層で私たちが目撃した、あの恐ろしい真実について」

その言葉に、レインも一瞬でゲーマーの顔へと戻り、表情を引き締める。懐にある『昏き結晶』が、衣服越しに冷たく自己主張しているように感じられた。ここからが、地上に持ち帰ってしまった最悪のメインシナリオの考察の始まりだった。

好きな焼き鳥は、もと こころ せせり かわです。


この中で好きな焼き鳥があった人はレビューや評価お願いします笑

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