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【祝1000PV 突発!】書館のウォーカー   作者: ジョニ男
第2章 盗掘者達

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第2章・第3話:タヌキの依頼と、仮面の少女

放課後。夕陽が差し込む重厚な扉の前に、俺は立っていた。

【学園長室】。この学園の絶対権力者が鎮座する、生徒にとっては審判の間のような場所だ。

「失礼します」

扉を開けると、部屋の奥の豪華な執務机に、あの白髭の老人――学園長が不気味な笑みを浮かべて座っていた。

そして、その傍らには、すでに制服姿のシエルが静かに控えている。

俺とシエルは一瞬だけ視線を交わしたが、すぐに互いに「無関心」な他人の仮面を被った。学園長の前だ、ここで夜の相棒だと悟られるわけにはいかない。

「フォフォフォ、よく来たなガレット君。それと、こちらを紹介しておこう。臨時の特別聴講生として我が校に招いた、シエル君じゃ」

「シエルです。よろしく、19点のガレット君」

シエルは完璧なお嬢様スマイルを浮かべながら、声のトーンだけを落として俺をチクリと刺してきた。20歳のくせに、変装コスプレとしての女子高生になりきりおって。

(……おいおい、白々しいお芝居を始めやがったぞ、このタヌキとコスプレ女)

俺は内心で苦笑した。

学園長が俺の図書室のログを掴んでいるなら、俺とシエルが夜の地下書館でバディを組み、1階の館長ボスをハメ殺して突破したことくらい、とっくに掴んでいるはずだ。

なのに、あえて「今日初めて会った他人」としてシエルを紹介し、公式の『外地実習』という大義名分を用意した。要するに、学園内の裏切り者や他国の監視の目を欺くための『アリバイ(茶番劇)』を、学園長自らお膳立てしてくれたわけだ。

「さて、単刀直入に本題に入ろう。ガレット君、あるいは……我が校の図書室の『禁書ログ』を、金策のために夜な夜な読み漁っていた、不届きな天才少年と言うべきかな?」

学園長が細い目をさらに細め、不敵に笑う。

俺には魔力がない。この階級社会の底辺で、餓死せずに生き残るための「金策」を探すのは必然だった。そこで学園の図書室に籠もり、誰も読まない古びた建築資材の搬入記録や、歴代のエネルギー流通の「矛盾バグ」を徹底的に数字で解析したのだ。

その結果、上層部が利権を独占するために世間から隠蔽している【地下書館】の存在と、そのシステムが持つ致命的な仕様の穴(ハメ技)を、俺は独学で導き出した。

だが――いざ金策のために潜った地下で、かつてこの書館を正当に管理していた家系でありながら、利権争いに敗れて没落したというシエルと出会ったのは、俺の計算にとっても純粋なイレギュラーだった。俺の「図書室で得た知識」と、彼女の持つ「銀鍵」が合わされば、この地下のクソゲーを全てハメ殺せると確信し、ビジネスパートナーを組んだのはつい先日の話だ。

学園長は机の上に一枚の古びた羊皮紙を広げた。そこには、地下書館の『3階』の間取り図が薄暗く浮かび上がっていた。

「今夜、お主たちには『外地実習』の名目で、この3階の最奥にある【真実の碑文】を調査、あるいは――防衛してきてもらいたい。……カイル・イグノタフ君をパシリに任命したお主の度胸に免じて、特命を与えよう」

カイル・イグノタフ。名門のプライドだけは一丁前な『高級なペン立て』の彼が、今頃どこぞの洗濯場で、半泣きになりながら俺の作業着をゴシゴシと手洗いしている姿が目に浮かぶ。

放課後、俺はカイルを引き連れて地下実験室へ赴き、彼に身の回りの世話をさせながら、押し付けられた廃棄魔導液の処理作業をすべて安全に終わらせてやった。そして校則の義務ペナルティ通り、「作業で真っ黒に汚れた服」をカイルに手渡し、「明日までに綺麗に洗っておいてね」と笑顔で言い残して今ここへ来たのだ。

あの傲慢なエリート貴族が、全校生徒の失笑を買いながら泥塗れの作業着を洗濯させられている。あいつに国家機密の防衛なんて、逆立ちしても無理だ。

「防衛、ですか」

「表向きは、失われた古代の魔導記述の回収じゃ。……が、本質は異なる。お主も知っての通り、この『地下書館』というシステムは、我が国だけでなく大陸の主要各国にそれぞれ存在する、いわば国家の心臓(エネルギー源)じゃ。そして各国の書館にある『真実の碑文』には、その国の魔導技術の最高機密が刻まれておる」

学園長は声音を潜めた。

「厄介なことに、現在、他国の工作員スパイどもが、我が国の機密を盗み出そうと3階のセキュリティを破って密かに侵入しているという情報が入ってな。……もし最高機密が敵国に漏れれば、国家間のパワーバランスは完全に崩壊、我が国は一転して危機に陥るじゃろう」

その言葉に、傍らのシエルの身体が微かに強張った。他国が絡むとなれば、ただの利権争いとはワケが違う。

「国が絡む大ごとじゃないですか。だったら、正規の軍隊でも送り込めばいいでしょう」

「フォフォフォ、滅多なことを言うな。他国の工作員が潜り込んでいるエリアに我が国の軍を動かしてみろ、それこそ宣戦布告と捉えられかねん。だからこそ――正規のルートではなく、公式には『落ちこぼれ生徒の外地実習』という体裁で動き、秘密裏に工作員どもを処理できる、お主たちのような存在が必要不可欠なんじゃよ」

学園長は再び醜悪なタヌキの笑みを浮かべ、俺とシエルを交互に見た。

「本来ならカイル君のような一般貴族にすら秘匿している最高機密階層じゃが、お主なら、他国のエリートスパイどもの鼻を明かせると思ってな」

「なるほど、国際的な泥棒猫の退治ですか。お安い御用です。……で、その3階の仕様ルールは?」

「3階は【反転の回廊】。そこに記されたすべての魔導文字、そこで発動する罠は――『右から読む(通常)』と『左から読む(反転)』で、その意味が完全に真逆になる。通常の方法で読めばただの通路じゃが、一歩間違えれば、文字通り世界が反転して圧死する無理難題じゃよ」

右から読むか、左から読むか。

他国のスパイたちがその難解な仕掛けに手こずっている間に、俺が図書室の言語記録から導き出した「バグ技」で碑文まで直行し、背後からまとめてハメ殺す。動機としては十分すぎる。

「……いいでしょう。やってやりますよ」

「期待しておるよ。ああ、それから……今回の調査には、学園側の『公式な監視役』として、もう一人優秀な生徒を同行させることになっておる。彼女はすでに、現地(地下の入口)で待機しておるよ」

(……あ?」

俺の脳裏に、今朝のあの「質量兵器」の顔がよぎり、嫌な予感が背筋を走った。

深夜、午前0時。

制服の上からマントを羽織った俺とシエルは、地下の隠し扉の前にいた。

「ちょっとレイン、学園長の言ってた『監視役』って誰なのよ。私たちの足手まといに――」

シエルが物騒なことを呟きながら銀鍵を弄んだ、その時。

暗い地下通路の奥から、規則正しい鉄の足音が響き、魔導ランタンの光の中に「それ」が現れた。

純白の甲冑を律儀に身に纏い、模擬剣を握りしめている金髪ポニーテールの少女。

ただでさえ目を引く美貌だが、何より異常なのは、金属製の胸当てすら押し潰さんばかりに主張している圧倒的な爆乳だった。歩くたびにその重厚な果実がブルンとダイナミックに揺れ、通路の空気を物理的に振動させている。

「遅いわ、レイン・ガレット! 風紀委員長エレナ・ヴァレンシュタイン、これよりあなたの『特別更生実習』の監視兼護衛を務めます! そこの不審な聴講生の少女シエルも、私の足を引っ張らないように!」

「……は?」

シエルが、エレナの顔――ではなく、その胸元の暴力的すぎるふくらみを凝視したまま、完全にフリーズした。

シエル自身、20歳の成人女性とはいえ、見た目はかなり華奢で凹凸の少ないスレンダー体型化だ。対するエレナは17歳にして、防具の安全基準を疑うレベルの規格外。

シエルは自分のささやかな胸元へスッと視線を落とし……それから、ギリ、と奥歯を鳴らしてエレナを睨みつけた。アメジスト色の瞳に、夜の地下でも見たことがないような暗黒の嫉妬の炎がメラメラと燃え盛っている。

「ちょっとレイン……何よあの品のない大質量は。あんなの狭い通路ですれ違うだけで、こっちが圧死するわよ。発育のルールどうなってんのよ、神様のバグじゃないの……っ?」

「声がデカいぞシエル。お前が精神的に大ダメージを受けてるのは分かったから、落ち着け」

「ダメージなんて受けてないわよ! 私の方が、精神的にも実年齢的にも、遥かに『大人』なんだからね……っ!?」

シエルは涙目でフンスと貧相な胸を張ってみせるが、虚しいだけだった。

(っていうか、ただでさえ面倒な脳筋なのに、あの質量が狭い地下通路で暴れたら色々と計算が狂うな……)

冷徹な20歳のプロウォーカー(内心嫉妬でピキピキのスレンダー美少女)と、純粋無垢な17歳の脳筋エリート(無自覚な爆乳聖女)。

相性最悪のダブルヒロインを抱え、右から読むか左から読むかで死ぬ『3階』のクソゲーエリアへの扉が、今、最悪 of 最悪の形で開かれようとしていた。

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