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【祝600PV突発!】書館のウォーカー   作者: ジョニ男
第2章 盗掘者達

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第2章・第2話:高級なペン立ての逆襲

シエルのアパートを後にした翌朝。

魔導学園の登校路を歩きながら、俺は昨晩彼女から聞かされた「学園長からの依頼」について思考を巡らせていた。

いよいよ今夜、俺たちは同じ地下書館の「3階」へと潜る。だが、あのクソタヌキ(学園長)がわざわざ公式の『外地実習』という名目を用意してまで俺たちを動かす意図は何だ? 1階で俺たちをハメようとした「マダム」の不穏な影も消えていない。

(……まあ、どんなクソゲーが待ち受けていようが、現地でルールをハッキングしてハメ殺すだけだけどな)

思考を切り替え、手元のもやしパンを一口齧ったその時、周囲から相変わらずの階級主義の悪臭が漂ってきた。

「おい、見ろよ。19点の『居残りウォーカー』だぜ」

「魔力記述ペンすら満足に動かせないなんて、よく恥ずかしげもなく登校できるわね」

廊下を歩くだけで、名門貴族の生徒たちから容赦ない嘲笑が飛んでくる。

だが、俺にとっては心地いいBGMのようなものだ。他人の評価など、俺のハメ殺しの方程式には1ミリも影響しない。

「――待ちなさい、レイン・ガレット!」

背後から、鼓膜に突き刺さるような凛とした声が響いた。

振り返ると、そこにいたのは長い金髪をポニーテールに結い上げ、純白の学園騎士甲冑を身に纏った女子生徒だった。

彼女の名はエレナ・ヴァレンシュタイン。

学園の風紀委員長にして、名門ヴァレンシュタイン公爵家の令嬢。そして、学園屈指の「脳筋エリート優等生」である。

「エレナか。何用だ? 朝の挨拶なら、もやしパンを食べている最中だから後に――」

「不真面目極まるわ! あなた、また定期テストで19点などという不名誉な点数を取ったそうね!」

(……お前もかよ。19点19点って、みんなして連呼すんな。大問3は完璧だったんだから実質満点だろ)

俺が内心で毒づいていると、エレナは美しい顔をこれでもかと近づけ、青い瞳を怒らせて俺を睨みつけてきた。

その際、純白の甲冑で締め付けられているはずの彼女の豊満すぎる胸部が、文字通り「ボヨン」と視界を塞ぐように揺れた。

(……っていうか、何だその胸の質量は。学園特注の防御甲冑を内側から物理精神的に圧迫してどうする。お前の魔力のほとんどは、そこに栄養として吸い取られてるんじゃないか?)

学園の防具職人が泣きながらサイズ調整したであろう圧倒的な爆乳は、彼女が息を荒くするたびに、ブレザーの隙間から溢れ出そうになっている。視覚的な暴力が凄まじい。

「あなたは魔力が微弱なだけよ! 決して無能ではないわ! 私が毎朝、マンツーマンで魔力特訓の基礎ステップ(朝練スクワット100回と魔力発声練習)に付き合ってあげると言っているのに、なぜいつも図書室の掃除なんかで逃げ回るの!」

「あのなぁエレナ。お前みたいに魔力のプールがダダ漏れしてる脳筋と一緒にしないでくれよ。俺にスクワットさせたところで、出るのは魔力じゃなくて筋肉痛だけだ」

「な、の、脳筋……!? わ、私は純粋に、あなたを心配して……っ」

顔を真っ赤にして狼狽えるエレナ。からかうとすぐにムキになるこの単細胞な反応は、見ていて飽きない。そのたびに豊かな胸がこれでもかと激しく上下する。

(おい、揺れすぎだ。廊下の男子生徒たちの視線が完全に釘付けになってるぞ。本人はこれっぽっちも無自覚なのが一番タチが悪い)

彼女は俺を「可哀想な落ちこぼれ」と勝手に勘違いし、純粋な親切心とお節介で守ろうとしてくる。レインにとって、この『純粋な善意』ほど行動が予測しにくく、計算を狂わせる「歩くイレギュラー」はいない。

「私の後ろに隠れていれば、他の貴族たちも手出しはさせないわ。さあ、今すぐ教官室へ行って居残りの申請を――」

「おやおや、ヴァレンシュタイン委員長。随分と熱心に『ゴミの分別』をされているようだ」

エレナの言葉を遮るように、不快な高笑いが廊下に響いた。

現れたのは、イグノタフ家の嫡男――カイル・イグノタフだった。数日前の騒動で俺に『高級なペン立て』と言い放たれ、顔を真っ青にしていたあのライバル貴族だ。

カイルの後ろには、数人の取り巻きの制服貴族がニヤニヤと笑いながら控えている。

「カイル・イグノタフ君。何の用かしら。学園内での理由なき決闘や私闘は、風紀委員会が許さないわよ」

エレナがすかさず俺の前に立ち、腰の模擬剣に手をかける。その背中越しでも、彼女の引き締まったウェストと、そこから明らかに不自然な角度でせり出している胸のラインの対比が凄まじい。

(背後から見てもシルエットがバグってんな……)

だが、カイルは嫌悪感を隠しようともせず、不敵に歪んだ笑みを浮かべた。

「決闘? まさか。私は学園の『ルール』に厳格に従っているだけですよ。……ガレット。お前、今期の『学園奉仕活動(強制労働)』の対象者に選ばれたぞ。これは学園総務が発行した公式の命令書だ」

カイルがこれみよがしに掲げた羊皮紙には、確かに俺の名前と、**【地下実験室の廃棄魔導液の処理】**という文字が並んでいた。周囲の生徒たちが「うわ、あの危険作業かよ」とヒソヒソと囁き始める。

「なっ……! 廃棄魔導液の処理!? あれは高濃度の残存魔力が滞留していて、魔力耐性の低い者が近づけば精神を汚染される危険な作業よ! 19点のレインにやらせるなんて、正気なの!?」

(だから19点って言うな)

エレナが激昂する。しかし、カイルは待ってましたとばかりに、さらに鼻で笑った。

「規則ですよ、ヴァレンシュタイン委員長。筆記試験で一定の基準を下回った『無能』は、学園の危険作業に従事せねばならない。校則第18条に明記されています。……嫌なら退学することだな、ガレット」

(なるほど。直球の嫌がらせじゃ風紀委員会に潰されるから、校則の義務化ルールを悪用して俺を合法的にハメに来たわけだ。……でもカイル、お前、この命令書を『全校生徒の前で掲げた』のが運の尽きだぞ)

カイルのセコい知恵に、俺は内心で呆れ果てていた。

『高級なペン立て』のくせに、少しは頭を使ったようだが、あまりにも詰めが甘い。

「レイン、乗ってはダメよ! 私が今すぐ学園長へ直訴して――」

「いや、いいよエレナ。カイル君がせっかくルール通りにやってくれたんだからさ」

俺はエレナの肩をそっと叩いて制し、一歩前へ出た。

そして、カイルがこれみよがしに掲げている命令書の「裏側」をパチンと指で弾いた。

「カイル君。お前、校則第18条を引用したよな? じゃあ、その第18条の付則・第4項は読んだか?」

「……は? 付則だと?」

「『危険物処理の辞令書は、対象者に手渡すまで秘匿せねばならない。万が一、手渡す前に第三者――お前が今呼んだヴァレンシュタイン委員長や、そこの野次馬の生徒たちに内容を開示・誇示した場合、それは【業務内容の事前流出】とみなす』」

俺はもやしパンを一口咀嚼し、ニヤリと笑った。

「解りやすく言うと、お前が全校生徒の前でドヤ顔でこれを見せびらかしたせいで、お前には**【作業終了まで、対象者のあらゆる身の回りの世話を、全校生徒の前で義務付けられる】**というペナルティが発生したんだよ」

「な、何だと……!? そんな幼稚なルール、あるわけが――」

「あるんだよ。大昔、実習内容を自慢して回ったアホな貴族を懲らしめるために作られた、死にかけの古臭い校則がな。……ってことで、まずは俺のこの、もやしパンの袋。カイル君、お前が持ってて」

「なっ……!?」

俺は食べかけのもやしパンの袋を、カイルの高級な刺繍入りの胸ポケットにぐいっと突っ込んだ。

「おい、何をする! 汚れるだろうが!」

「義務だぞ、カイル君。あ、ついでに今日の放課後、俺が使う地下の作業服、お前が小脇に抱えて後ろからついてきて。もちろん、全校生徒に見えるようにな。『イグノタフ家の嫡男が、19点の無能のパシリをしてる』って、めちゃくちゃいい見世物になるだろ?」

「う、嘘だ、そんなこと……!」

慌ててカイルが手元の端末で校則のデータベースを検索し――次の瞬間、顔を真っ青にしてガタガタと震え出した。本当にあるのだ、その間抜けな付則が。

「あ、カイル君。パンのカスが落ちるから、歩くときは俺の足元をちゃんと見ててね」

「お、おのれ……ガレット……っ!!」

手続きの盲点を突かれ、嫌がらせをするどころか、全校生徒の前で「無能のパシリ」という究極の羞恥プレイを強制されるハメになったカイルは、屈辱に顔を真っ赤にして絶叫した。

「レ、レイン……? あなた、一体何を……?」

背後で、エレナが完全に置いてけぼりにされた顔で、驚愕の表情を浮かべていた。驚きで胸が波打つせいで、本当に甲冑の継ぎ目が悲鳴を上げている。彼女には、俺がどんな『ハメ技』を使ったのか全く理解できていないようだったが、なぜかその青い瞳に、キラキラとした妙なリスペクトの光が灯り始めている。

(……いや、そんな目で見んなエレナ。勘違いが深まるだろ。あと無駄に揺らすな、質量兵器め)

俺は懐中時計を見た。そろそろ次の授業の予鈴が鳴る。

今夜の3階潜入に向けて、カイルという最高に優秀で間抜けな『盾(囮)』を合法的に手に入れたのは大きな収穫だ。

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