第25話 0.02%の奇跡/妹の生存
朝の光が、部屋に静かに差し込む。
昨日の戦いの余韻が、体の奥でまだうずいていた。
――代償は確かに大きかった。
手の震え、頭の重さ、胸の痛み。
だが、それでも、奇跡は起こった。
◆
キッチンから、いつもの声が聞こえる。
「お兄、朝ごはんできてるよ」
少し高くて、少し眠そうで、でも確かに元気な声。
生きている――本当に、生きている。
「……よかった」
言葉が自然と漏れた。
昨日の夜、世界がどれだけ俺たちを試したか。
そして、それを乗り越えた証拠がここにある。
◆
玄関先で靴を履く妹を見ながら、俺はそっと手を握る。
昨日の代償を思い出す。
すべては、この瞬間のためだった。
0.02%の確率。
ほぼゼロに近い、奇跡的な生存確率。
それを踏み抜いた――俺たちは、生きている。
「お兄……?」
妹の声に我に返る。
笑顔が眩しい。
世界の修正も、干渉も、昨日の夜で力尽きたのか。
少なくとも今、目の前には無事な妹がいる。
◆
しかし、頭の片隅で冷たい感覚が残っている。
0.02%の奇跡を手に入れるために、世界はまだ、俺を監視している。
代償は確実に積み重なっている。
だが、もう恐れはしない。
「――これからも、守る」
手を強く握り直す。
妹の笑顔を失わないために、俺は限界まで踏み込む覚悟がある。
窓の外には、新しい一日の光が差していた。
0.02%。
希望は薄くとも、確かに存在した。
――奇跡は、俺たちの手の中にある。




